ローソンは2月25日、エーエム・ピーエム・ジャパン(以下、am/pm)を買収すると発表した。買収額は145億円。ローソンはam/pm親会社のレックス・ホールディングスから全株式を買い取り、3月〜4月をめどにam/pmを合併する見通し。
【画像:ローソン事業拡大の歴史や買収の概要】
債務超過に苦しむam/pmだが、2008年は6億円の営業黒字を出すなど経営再建は順調に進んでいた。しかし、縮小するコンビニ業界の将来を見据えて、ローソンの傘下に入る決断に至った。
ローソンの新浪剛史社長、矢作祥之常務、am/pmの相澤利彦社長、吉本清志常務が参加した会見の様子をお伝えしよう。
●低コストで東京進出できる
新浪 私どもは大阪出身の企業でして、1番人口流入がある東京23区では店舗が大変少なかった。そこでナチュラルローソンを出店したり、(SHOP99を展開する)九九プラス(参照リンク)さんを買収させていただいて東京の店舗数を増やす、また新鮮組(新鮮組)さんを私どもの営業の中に入っていただく、こういうことで私どもが弱い、そして最大マーケットである東京を何とかしたいと従来から考えてきました。
そんな中、本件のお話をいただきました。本件は私どものみならず、レックスさんはいろんなところにお声をかけられていたと考えていますが、優先交渉権が存在しない中、長い間、私どもは交渉をさせていただいておりました。本日基本合意に至ったわけですが、まず私どもは(am/pmの株式を)100%買わせていただくということで、近々最終合意を行う予定です。
am/pmさんは今日お見えになっている相澤さんを中心に、大きく不採算店のクロージング(閉鎖)をしておられます。200店(のクロージング)をやられて、そして人件費、販管費の削減などを行われて、(2008年)12月末の決算では6億円の営業利益が出ている会社です。
私どもは半年以上にわたって、デューデリジェンスをやらせていただきました。私どもはリターンのある案件をやるという考え方で、近々には九九(プラス)さんをやらせていただいたわけですが、十分リターンが上がる(案件だということで)、長きにわたり交渉を重ねてまいりました。
私どもは(リターンが上がることに)疑念なく、am/pmジャパンさんを傘下におさめるべく、今日この日に至ったわけですが、私どもは現在のお店、現在のオーナーさんたちにより(多くの)収益をもたらすことができると確信しております。現在の(am/pmの)オーナーさんは縮小均衡という状況にありますが、例えば粗利も私どもの方が効率よくやらせていただいているので、改善効果が見込めると考えています。
私どもにとって大変重要なのは、資金ニーズが大変少なく済んだことです。1店舗あたり(の出店費用が)現在大体6000万円ぐらいかかります。6000万円ぐらいかかるものを、大体2000万円くらいで入手できるということで、資金効率も大変いいという状況です。(東京進出は)自分でやっていたら、6〜7年は少なくともかかるマーケットです。一方でコンビニは、いわゆる飽和状態が続いております。まだマーケットの成長性があるという意味で、東京は大変有効なマーケットですが、6〜7年かけて私どもが(コンビニ網を)築き上げていくのは大変至難でして、またこれだけのことをやるには随分失敗もして店舗を開発していくことになるのではないかと(危惧していました)。店舗開発、そして資金の効率化というためにも本件は大変(好都合)、リターンも大変上がる、そういったことでやっていこうと決めました。
また、相澤さんを始めとした経営陣の方々とは都度コミュニケーションさせていただいて、知らぬ仲ではない中で、今回のディールに至っています。「突如のように現れて、買いますよ」というわけではまったくございません。
(東京進出の期間を)短縮できるとともに、東京のマーケットにおいて私どもは、都心23区で大変なシェアになる、そして7区であれば圧倒的に強いドミナンスを確立するできることになります。そして私どものオーナーさん、そしてam/pmのオーナーさんたちに、より良い商品(を提供できますし)、チルド(冷蔵食品)も今より圧倒的に効率よく(提供)できます。
また私どもの商品開発、am/pmさんがお持ちになっている商品開発、この相乗効果もあると思っています。一部分ではナチュラルローソンの商品を置くとか、ナチュラルローソンをやりたいというオーナーさんがおられたら、そういったこと(をすること)も視野に入るのではないかと考えています。
マーケットシェアとともに、私どもはいろんな業態を持っているということも今回の買収では大変重要な要素でした。ローソンのみならずナチュラルローソン、そしてローソンストア100(参照リンク)、そして今回am/pmさんがマルチブランドということになってまいります。マルチブランドの経営は私ども大変得意としております。そして九州や大阪、ここにはエリアフランチャイズ※の方々もおられます。
※エリアフランチャイズ……フランチャイズを展開する企業が、ほかの事業主にフランチャイズ権をライセンスしたもの。フランチャイズ権を受託した企業は、本部に代わって加盟店の開発や運営を行うが、商品、サービス、システム、ノウハウといった企画の開発は、基本的に本部で行う。
我々はもともとこういった(マルチブランドの)ノウハウを確立しています。エリアフランチャイズに関しては、例えば私どもは九州の南は大変弱い状況です。(am/pmの買収で)補完をすることもできる、また私どもが持っているベンダーをより活用いただける、こんなことで大阪、当然のことながら九州もより拡大できる、このように考えております。また、鉄道系にも大変お強いということで、これらの法人顧客の方々にもより積極的に攻めることができると考えている次第です。
私どもは過去に買収や、営業権を買うことを重ねています。近々では新鮮組さん、そして九九プラスさん。買収やアライアンス、こういったことで成長した企業です。(こうした買収を通じて)人材も育っており、今後同じ屋根の下にam/pmさんも入られるわけです。私ども例えば関東の支社長はサンチェーン出身です。九州の支社長はダイエー出身です。支社長というのはカンパニーでございまして、ローソン出身者もいます。過去このような買収や合併によって、良い人材はどんどん登用されています。私どもはこういったことがノウハウとしてあるとご理解いただきたいと思います。am/pmさんの人材も、今回の買収によって活躍の場をより得ていただけると、確信している次第です。
●コンビニ業界の3つの変化に対応して
相澤 am/pmジャパンは1990年から事業を開始したため、コンビニ業界後発組として事業を展開してまいりました。後発組であるからこそ差別化をしなければならないということで、もともとはジャパンエナジーのサービスステーションに併設する、あるいはその後都心に集中出店するということで、コンビニ業界において都心展開の先鞭をつけたと自負しております。
それから電子マネーのEdyを最初に採用する、あるいはコンビニでATMを一番最初に展開する、あるいは世界の小売業で最初にISO14001を取得というような差別化戦略で今までやってまいりました。
過去2年は実質的な株主が投資ファンドである中でリストラや、エーピー・エンタ(参照リンク)、デリスタウン(参照リンク)といった新業態を展開してまいりました。新浪社長の方からも説明いただきましたが、何とか単体の営業利益ベースで黒字化することができるようになりました。
「都心の賃料が高いから、家賃の負担が大きいのではないか」というような話はありますが、1店あたりの来客数ですと、我々はコンビニ業界で一番高い数字です。都心に集中出店しているからこそであると思っています。
ただここまで来まして、最近将来を見通した時にコンビニ業界は「大きく3つの変化が起きるのかな」と考えております。
1つは既存店の売り上げが低下していくこと。直近ですとtaspoの効果がありますので、(業績が)良いように見えますが、2007年まではコンビニエンス業界、8年連続で既存店の売り上げが前年割れしています。
こういう環境で本部に求められるのは、例えば競争激化しても勝てるような店舗にする指導力、あるいは商品開発力、あるいはサービス企画力、そういう総合的な力が求められる時代というのがあります。
2つめは、コンビニエンス産業が情報産業化していくということです。オペレーションの高度化に伴う出費のことで、サービスメニューの拡充に伴って情報端末が必要になる。(サービスの)高度化も必要だということです。ここで本部に求められるのは、サービス開発力、投資力です。
3つめは業態間の競争が激しくなっていることです。スーパー、百貨店、ほか小売業の業態間で分かれていた市場の垣根がどんどん低くなり、コンビニの特権領域だったデイリーの領域もほかの業態からまたがれている。そういう環境下では、今後さらにサービス開発、あるいは業態の枠を超えた他社とのネットワーク構築といったものが必要になってきます。
この3つの大きな環境変化を鑑みますと、当然ながら「我々の規模で本当に生きていけるのか」という経営上の課題が明確に浮かび上がってきているというのが事実でございます。
そんな折に、初めて知る関係ではない新浪社長といろいろ話をさせていただく機会をいただいて、新浪社長からも「ぜひ一緒に元気になろーソン」と言っていただき、我々としても株主とご相談のもと、こういうことになった次第です。
我々にとって今回の資本提携の意義を大きく4つに整理させていただいております。
1つは当然のことながら相乗効果ということで、ローソンさんのグループが保持する商流、物流などのネットワーク、あるいは規模の経済というさまざまな面での相乗効果。特に首都圏ですと我々もお店をたくさん抱えておりますので、ローソンさんのお店と一緒になることによって物流、商流上のさまざまな規模の利益が発生するのではないかと思っています。また、先ほど申し上げました情報産業化と(いう面で)言いますと、ITへの大きな投資が求められる時代の中で、そういう固定費の削減、あるいは平準化ということも大きな効果があると考えています。
2つめの意義はガバナンスです。ローソンさんは同業ということで、(コンビニ)事業を大変よく熟知されている会社が株主になるということで、当然経営のガバナンスのクオリティが上がると思っています。「相乗効果をどういう風に追求していくのか」といった面でのアドバイスをいただいたり、最終的な事業価値を向上させるための経営体制が、ガバナンス上も整うと考えております。
3つめは、長期の経営視点です。コンビニエンス事業ではQSC(Quality、Service、Cleanness)、店舗運営向上が最終的には業績を上げていく要素になります。そのためには店舗スタッフのオペレーション、あるいはスキルの向上、あるいはお客さまとのコミュニケーション、そういったさまざまな面での長期視点での経営(努力)が必須という事業特性があります。新浪社長からQSCの重要性に関しても、どういう取り組みをされているのかの説明を随分受けさせていただいて、その辺のビジョンが一致すると確信しました。
4つめは投資力です。我々は過去3年ぐらいの間、投資力が不足していました。その結果、店舗のハードウェアだけではなく、例えば人材の教育投資といったさまざまな領域での投資が不足していたことは否めない事実です。今回ローソンさんのグループと一緒になることで、新浪社長からも「必要な投資はするんだ」という言葉をいただき、今まで不足していた投資が復活できることで、業績向上につながるのではないかと考えています。
以上、4つの資本提携の意義ということに基づいて、今回このような決断をさせていただいたということで、これからはローソンさんのグループの一員としてさらなる事業価値向上に向けて頑張っていきたいと思います。
新浪 若干補足させてください。私どもは「今後、出店をどんどんしていくコンビニはもうまずいな」と思っています。市場は飽和し、かつ不況はより深刻になっている中、今あるお店、今回のような取り組みをより一層業界内で加速をさせていくべきです。また、お客さまから(店舗が)なくなることによって文句を言われ、また(店舗を)作ることによって無駄なお金を使っていく。繰り返し作ったり、壊したり、いわゆる資金のムダをしているわけです。今回の取り組みが業界の再編などにつながるようなことになれば、よりムダもなくなると考えております。
●2008年の8月くらいから話があった
――今回の話はかなり前からうわさになっていたのですが、いつごろから話し合われていたのでしょうか。
新浪 レックスさんから「マネジメントインタビューをさせてくれ」ということで何度となくお会いさせていただいて、人となりを見させていただきました。面白い方々がおられるんだなと(思いました)。(2008年の)8月くらいからです。
――買収価格をディスカウントされている理由を教えてください。
新浪 このまま(コンビニ業界が)縮小均衡する大変難しい環境になるだろうなということ、今からずっと先まで引き延ばして(考えて)みると、大変厳しいというのを前提に(価格を)考えました。
――買収はいつぐらいからどれくらいローソンの業績に寄与するのでしょうか。
新浪 のれん代は約90億円発生します。20年で償却しますから(毎年)4億強のお金がコストとなります。業績的には若干(店舗を)クローズするとか、商品を入れ替えるということでコストが先行しますが、粗利の改善だけでも十分できると思っていますから、少なくとも来年度には十分利益を上げられると考えております。
――「出店が6000万円かかるところが2000万円で済んだ」というお話でしたが、2000万円というのはどのようにして計算した数値ですか?
新浪 2000万円はフル改装をベースとしたコストと考えています。詳細は申し上げられないのですが、基本的にはそういう採算でできると思っています。今の店を2000万円で買ったというより、きれいになった後を2000万円で(買った)という見積もりを考えています。
――本社の統合はどのようになるのでしょうか?
新浪 本社は早く統合するということが、この合併の大きな狙いです。ですから早々、2009年度内に統合するということで、本社をどこにするかとか、どのようにするかは協議しないといけないと思います。
――am/pmさんは米ARCOさんと(店舗出店の)ライセンス契約を結んでいると思うのですが、その話はどうなっているのでしょうか。
新浪 (詳しくは)申し上げられないのですが、大変少ない金額でライセンスをもらいます。だから、我々が今後懸念するようなリスクではないと考えています。
相澤 ARCOとの契約の内容は、日本での(am/pmの)展開権を我々が保有するというものです。日本での展開権の分として、2017年までの分を払い込んでおります。資本の変更に関しましても、我々もともとのジャパンエナジーからレックスへ、さらにMBOということで、彼らも資本の変更に関して十分に経験済みですので、今回の件に関して何か特別に大きな問題になるということはないと考えています。
●am/pmが後れをとった理由
――これまでいろいろな株主のもとでam/pmという店をやってきましたが、これまでの取り組みは失敗だったのでしょうか?
相澤 失敗ではなかったと思います。なぜなら、先ほど新浪社長の方からもご説明いただきましたが、今の枠組みの中で何とか営業黒字体質、収益構造を変えられたからです。過去2年で、収益構造が40億くらい改善しました。ただ、ここから先を見据えたときに、「コンビニエンス業界の中で生き残るための最低ラインが上がらざるを得ないだろう」という読みを我々なりにしたということです。
どういうことかといいますと、私たちは1000店強の店しかない。それに対してローソンさんは8600店ということで、物流上、商流上、さまざまなメリットがあることは確かです。小売業界、ほかの業界もそうですが、確実に最低ラインが上がりつつあるという時代背景がある中で、我々もその対象に当然なってくるだろうということです。
今回の資本提携は相乗効果もあり、ガバナンスも品質が高まり、それから長期の経営視点をお持ちの同僚で、投資力もあるという意味では、我々にとっては簡単に言いますと「手放しで、いい経営環境を保持することができるのではないかな」ということで、「今までの枠組みからもう一段上の経営の枠組みにアップできるな」とは考えています。
――都心部の集客力が高いということですが、現在のam/pmの店舗の実力を教えてください。
相澤 既存店の売上前年対比ですと、今コンビニ業界の全体平均で107%程度と思います。それに対して我々は現状100をちょっと超えるくらいで、6.5ポイントぐらいビハインドしていることは事実です。
ローソンさんともずいぶん話をさせていただきましたが、この6.5ポイントの差は大きく分けて3つビハインドの原因があると思っています。
1つは都心での競争激化ということです。我々の従来の牙城だった都心で、一昨年の後半くらいから、ローソンさんを含むいろんな会社さんが出店ラッシュをかけたことで、もろに被害をこうむっているところがあります。その効果が約3ポイント、6.5ポイントのうちの3ポイントですから一番大きな影響かなと思います。
2つめは投資不足です。(フランチャイズの)更新時に、常識的に言えば大なり小なり改装投資をしますが、過去3年で改装投資をした更新物件は基本的にゼロです。更新時に改装投資をしますと、大体既存店の前年比で6ポイント強ぐらいの売り上げ向上効果があります。これが200数十のお店でできなかったことで大体2ポイントぐらいダウンの効果がありました。
3つめはtaspoがらみなのですが、我々後発組でタバコ屋さんからの転業が比較的少ないので、タバコ免許店の比率が67%です。業界で一番高いのがおそらくセブン-イレブンさんで、83〜84%くらいだと思います。15%以上の差があるということで、タバコ店の数が少ないということはtaspo効果が低いということで1〜1.5ポイントくらいの違いがある。合計で大体6.5ポイントくらいになるかなと思っています。
今、現実には競合他社さんと比べて、既存店の前年比で実力値で6.5ポイントくらいのビハインドはありますが、これはどれも投資余力が足りないこと、あるいは歴史的にタバコの免許が少なかったということにあります。ローソンさんのグループになることで、改装(投資)もできるようになると思っていますし、競合に対応して出店することも可能になってくるかなと思っていますので、基本的には実力値は競合他社さんと比べて大きくビハインドしていないと考えています。
吉本 1点補足させていただきます。現状の日販は今48万6000円程度でして、客数は1日あたり1050人程度です。お調べいただければお分かりになると思うのですが、1000人を超えているチェーンさんは今ほかにないのではないかと思っています。首都圏ということで数字を申しましたが、九州などは前年比も同業他社さんより伸びておりますので、立地競合の影響が都心部においては(強く)出ているのではないかと思っております。
――都心部は飽和状態ということですが、現状で血を流さずに出店できるようなところはゼロに近い状況なのでしょうか?
新浪 一定の条件のもとで飽和状態だと(思います)。タイムコンビニエンスという、忙しい方を対象とした時間を買うことを前提にしたコンビニエンスはますます飽和状態が厳しくなります。お客さまたちは忙しくなくなっていくので。
我々の実態を見ていきますと、生鮮ものとか料理をするようなものは大変売れるようになっているので、むしろそういう転換をすれば(新店を)出せる余地はまだあると思っています。九九(プラス)さんを中心に我々(ローソン)ストア100を約900店展開しているのですが、まだまだ(それらを転換して)出せると思っています。むしろそうやって転換した方が客単価が通常コンビニより高いので、コンビニとしてのマーケットシェアは上がっていく。ただし、今と同じような店を出している限りは飽和状態の条件はもっと悪くなると思っています。今のようなお店を出せる余地はもうありません。
――主要な取引先を教えてください。
相澤 卸の大きいところですと、国分さんと菱食さん。菱食さんは当然、あるいは国分さんもですが、ローソンさんの二大ベンダーだと理解しております。重なりが大変に大きいので向上効果があるかなと思っています。
――セブン-イレブンさんが加盟店の値引き販売を制限しているということで公正取引委員会から調査を受けていますが、御社の場合はそういう懸念はあるのでしょうか?
新浪 値引き問題というよりは根っこの問題だと私は思っています、要は信頼関係ですよね。私が今回(の合併で)気にしたのは自社競合です。そういったこと(自社競合)をやっていれば、本部との信頼関係が薄くなっていくわけです。
私どもがそういった問題が大きくなっていないというのは、やはり信頼関係だと思うのです。今のように飽和(状態)が悪くなるような状況で同じ店を出していたら、(既存店から)「隣に何でたくさんローソンあるの」と怒られるわけです。「何だ、本部はおれたちの足引っ張りやがって」となるんです。そこに根っこがあるんです。「一緒にやろう」ということが欠けてきているのです。だから出店競争ではなく、オーナーさんを考えてやっていくことが大切です、ビジネスモデルがこのままだと壊れちゃいますよ。
――ローソンでは値引き制限問題は起きていないということですか?
新浪 (苦情は)基本的には直接私の方に上がってきますが、大きな問題にはなっていません。例えば野菜は早く売り切った方がいいので、逆に(売れ残る可能性があると)値引きして売るような指導もしています。
●am/pmの店名は残していきたい
――マルチブランドという話がありましたが、am/pmという店名は今後どうなるのでしょうか?
新浪 am/pmさんの店名は残していきたいと考えています。エリアフランチャイズの方々もおられますし、加盟店の皆さまもそれがゆえにモチベーションが上がるという方もおられます。残していくのが前提ですが、これはオーナーさん次第で、ローソンをやられたいという方であれば看板を替えることもありだと思っています。
――東京都内でセブン-イレブンの店舗数を追い抜くことになることで、競争上のどんなメリットが出てくるのでしょうか?
新浪 今まではどちらかというと(店舗数が)少なかったので、囲まれてしまうんですね。囲まれて閉店になるということがあったわけですが、連携することによって持久力が上がるわけですね。粗利も相当上がってきますから、オーナーさんも私どもも収入が上がり、現在大体40〜50億円くらいの営業利益を(am/pmの店舗で)あげられると思っています。
――200店ほど不採算店を閉めたという話がありましたが、今後の店舗のリストラ、人員の削減などは検討されているでしょうか。
新浪 人員のリストラに関しては、ローソンを途中でやめられる方や、今後定年を迎えられる方もいるので、うまく調整できるというめどを立てています。店舗に関しては赤字店舗は相当閉められており、例えば直営店ももう70店ちょっとしかございません。赤字店舗など厳しいものに関しては十分オーナーさんと打ち合わせしながら、よりレベルの高いお店を(作っていこう)と思います。加盟店の皆さまと(まず)仲間になっていただく、それが最初かなと思っています。
――現状で赤字の店舗は何店ぐらいで、どの程度閉めると考えておられますか?
新浪 今の状況だと100〜200店くらいは可能性はあるかなと思っていますが、これを最小限にする方法を私どもは持っています、例えばローソンストア100にするとか。
――先ほどマルチブランドということをおっしゃいましたが、am/pmさんの店でナチュラルローソン、あるいはストア100にした方がいいと思われている店があるのでしょうか? また「どんどん出店する時代ではない」というお話がありましたが、こういった買収をまた考えているのでしょうか?
新浪 マルチブランドに関しては、具体的に言うと九段(地域)、あの辺はほとんど私ども(の店)はないのです。立地上、ある程度の客単価がとれるようなところは、ナチュラルローソンの商品を供給するコラボレーションは大いにできるのではないかなと(思っています)。
私どもは今のままであっても、粗利が上がることによって、am/pmさんの収益が十分上げられると(思っています)。規模の経済、グループで9500店弱ございますから、それを活用すれば十分粗利益が取れる。しかし、先ほど相澤社長がおっしゃられたように「積極的にもっとやった方が、この厳しい不況の中でもより収益が上げられるお店はできる」と思います。改装や、品揃えも変えていくことによって、十分リターンがとれる。M&Aをやる上で懸念材料がない中で、これだけ時間をかけてやってきました。「確実にこのくらいやれるんだ」という確信を持って、今回やっているわけです。
そして首都圏に関してはできることはやっていきたい。私どもは新鮮組で経験させてもらいました、taspo効果を除いて25%売り上げが伸びています。いい立地、これに関しては我々が1から作るよりも今回のような取り組みをより一層やっていきたいと考えています。
――新鮮組の売り上げ増加は看板替えの効果が大きいと思います。am/pmブランドを残しながら、どのように売り上げを伸ばされるのでしょうか?
新浪 あくまでもオーナーさんとの話し合いなのですが、我々としては「看板替えをした方が売り上げは上がるだろうな」とは思います。それはこの3年間(am/pmが)ブランドに関する投資ができなかった、状況が許さなかったからと考えています。しかし一方で、それでも(am/pmの看板で)続けるというオーナーさんは看板に対する愛着がある、(その気持ちは)きちんと斟酌(しんしゃく)しないといけないと思っています。
また、商品に関しての投資も相当違うと思います。価格や商品の質という意味では、より向上できるのではないかと(思います)。一方、企画は大変いいものをお持ちですので、そういった企画を私どもと一緒にやれれば面白い商品がもっとできるのではないかと思います。からあげクン(参照リンク)が入るかどうかも要検討かなと思いますが、全体的には売れ筋商品をしっかり並べられるように店の品揃えを変えないといけない。こういったことを支援することで随分変わると思います。
――バリューライン(ローソンの低価格プライベートブランド)も入る予定はありますか?
新浪 店舗の立地次第で、あると考えています。いわゆる住宅立地などでは入れることができると思います。すべてのお店に現在の生活防衛型のプライベートブランドを入れるのは、大変危険です。オフィス立地に入れても、あまり意味がないですから。
――am/pmさんはエーピー・エンタのような試みもされていますが、それについてはどう思われますか?
新浪 R&D(研究開発的)な部分が多いですから、「すごくいいな」と思うものもあれば、「これはどうかな」というものもあります。しかし、(新しいことに挑戦するのは)多分(am/pm)のDNAなんだろうなと(思います)。このDNAがちょっとこの3年間厳しい状況にあったのかなと思います。
一方私どももこういうDNAを持っていまして、新しいことは大好きです。実はダイエーさんは新しいことが大好きです※。私どもはその底流はしっかり守っていこうということで、文化的には大変合うのではないかと思っています。
※ローソンはもともとダイエーの子会社として出発した。
――エリアフランチャイズとの関係をどうされるのかということを教えてください。
新浪 特に九州を始めとしたエリアフランチャイズは基本的に大変強い。また私が店舗をずっと回りましたが、「大変良いオペレーションをされている」と思います。am/pmさんのブランドをしっかり活用されて、正直言って投資余力もあったんだろうと考えております。
先ほど吉本さんからお話があったように実はすごくいいお店ですから、今後、より密にやらしていただきたいと(思います)。また私どもは、どちらかというと九州の南は非常に弱い。出店という意味でも、地元の方々が一番良く場所を分かっております。そういった意味で加速度的に(出店も)できるのではないかと思っています。
地方、特に九州、関西の方面に関してはエリアフランチャイズの方々とお話をしていきたいと思っていますが、「ブランドが相当確立しているのかなあ」と思っております。
――エリアフランチャイズとの関係は維持されるということでよろしいでしょうか?
新浪 はい、まったくその通りです。
●確信のM&A
2008年の8月から徹底的に話し合いと、デューデリジェンスを重ねてきた新浪社長。記者会見での言葉には「間違いなく成功する」という確信が込められていたように感じた。
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