社説

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

社説:日米首脳会談 外交は国民の支持あってこそ

 麻生太郎首相とオバマ大統領の初の日米首脳会談は、同盟国として責任を共有していくことを確認する場となった。

 大統領は日米同盟を東アジアの安全保障の「礎石」と位置づけ、「私の政権が強化したいものだ」と述べた。「強化」とは、日米関係を2国間の問題だけでなく国際社会共通の課題に協調して取り組めるような関係に発展させたいという期待を込めたものだろう。

 世界的な経済・金融危機、テロとの戦い、深刻化する地球温暖化など各国が国境を超えて対処しなければならない課題が山積している。首相が口癖のように言う世界第1位、2位の経済大国の日米が手を携えなければならない時であるのは論をまたない。

 首脳会談で多くの時間を費やしたのは経済・金融問題だった。基軸通貨ドルの信認維持が重要との認識で一致し、保護主義に対抗することが日米の重大な責務であることを確認した。4月のロンドンでの第2回金融サミットへ協力を加速することでも一致した。

 日本は昨年10~12月期の実質成長率がマイナス12・7%(年率換算)を記録するなど不況の長期化が懸念されている。昨秋以降、事業規模75兆円、財政支出12兆円という3次にわたる景気対策を決定しているが効果は薄い。

 会談では大統領に内需拡大を求められた。首相は追加景気対策の早期実施という課題を背負わされたが、与野党対立の国会情勢では先行きは不透明だ。

 責任の共有という意味ではアフガニスタン安定化支援も重要な分野だ。首相はアフガンの隣国のパキスタン支援のための国際会議開催と、米国が進めているアフガン戦略見直し作業への日本参加の考えを伝えた。

 軍事的貢献ができない日本に対し大統領は開発や治安、インフラ整備などの分野での協力を求めた。日本は国際社会の一員としてアフガンの復興・安定に最大限の協力を行う必要がある。戦略見直し作業の中で、可能な有効策に知恵をしぼるべきだ。

 麻生首相はオバマ大統領がホワイトハウスに招いた最初の外国首脳となった。クリントン国務長官が初の外遊先に日本を選んだのと合わせ、日本重視姿勢のあらわれといえよう。

 しかし、共同記者会見や昼食会が行われなかったのは異例である。「首脳間の信頼関係をいかに築くかが一番大事」(河村建夫官房長官)としていた日本側の期待ははずれたようだ。

 米側のそっけない対応ぶりは、支持率低下に歯止めがかからず失速寸前の麻生政権の今後をにらんでのことかもしれない。「招待するのは個人ではなく日本の首相」(米国務省)と割り切っているのだろう。外交は国民の支持があってこそ推進できるものである。

毎日新聞 2009年2月26日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報