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多賀城の高校生死傷事故:同乗者に高裁有罪判決 実刑かなわず遺族落胆 /宮城

 ◇厳罰化の流れ加速 裁判の意義認めるも

 異例の「懲役刑」判決。だが、これで、飲酒運転が無くなるのか--。多賀城市で05年5月、仙台育英高生の列に飲酒運転車両が突っ込み、18人が死傷した事故。仙台高裁は24日、同乗者の佐々木大輔被告(31)に対し、罰金刑を言い渡した1審判決を破棄し、懲役1年、執行猶予5年を言い渡した。裁判所は、飲酒運転の「そそのかし行為」に従来以上の厳しい判断を示した。だが、求めていた「実刑判決」はかなわず、遺族は「我々の気持ちの行き場がない」と無念さをにじませた。【須藤唯哉、鈴木一也、伊藤絵理子】

 仙台地検は起訴にあたり、「酒酔い運転ほう助」の立証には直接つながらない、「18人もの死傷者が出た」という結果の重大性を起訴状にも記載。公判で佐々木被告の弁護側は、刑事訴訟法で禁じられた「余事記載」にあたると主張した。

 志田洋裁判長はこの日の判決で、記載を妥当と認め、「生じた結果を被告に不利益な事情として、ほう助行為の量刑上考慮することは是認されるべきだ」と指摘。「被告が別の方法で帰っていれば、受刑者は車内で仮眠してから家に帰ったかもしれない。助手席に乗り込むなどして、飲酒運転する意思を強固にした」と行為の重大性を指弾した。

 仙台地検によると、酒酔い運転ほう助罪は略式起訴されるのが一般的で、公判請求されて懲役刑が言い渡されたのは全国的にも例がないという。飲酒運転の同乗者にも厳罰を科す流れを加速させ、今後の他訴訟に影響を与える可能性がある踏み込んだ判決となった。

 だが、事件のあまりにも悲惨な結果との落差はこの日の判決でも埋めきれなかった。遺族は「危険運転致死傷ほう助」の適用が認められなかった後、せめてもの願いとして「実刑判決」を求めた。

 事故で犠牲となった細井恵さん(当時15歳、仙台育英高1年)の父実さん(59)は判決後、コメントを発表するとともに「社会から隔離され、自らの罪を省みる時間を持ってほしかった」と心中を吐露。「このままでは、本人からの謝罪は受け入れられないし、娘も浮かばれない」と無念の表情を浮かべた。

 一方で、「事故当時は僕らも検察官も気づかなかった同乗者の罪が、この4年間で常識的に受け入れられるようになってきた」と裁判の意義を認め、「飲酒運転をなくすためには、同乗者も含め社会全体の意識を変えるしかない。検察官にはなんとか工夫して上告し、全国に発信してほしい」と訴えた。

 仙台高検の寺脇一峰次席検事は「罰金刑の原判決が破棄された点は評価するが、実刑ではなかったので、判決内容を検討し適切に対応したい」とのコメントを発表した。

 一方、佐々木被告は開廷直前と閉廷直後、傍聴席に向け深々と頭を下げた。代理人の日下俊一弁護士は「被告と協議して上告するか決めたい」と話した。

毎日新聞 2009年2月25日 地方版

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