プロ野球の早春風景が一変している。例年なら二月下旬でも、まだのんびりムードが漂っているが、今年は殺気だった感がある。
三月上旬から野球の国・地域別対抗戦、第二回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が始まるからだ。日本代表のメンバーも決まり、既に実戦モードである。
三年前に初の大会が開催された際、WBCと言われてもピンとこなかった人が多いだろう。ボクシングのWBC(世界ボクシング評議会)の試合と勘違いする声さえ聞かれた。
それを日本でここまで盛り上げ、野球のWBCファンを開拓したのは、米大リーグで活躍するイチロー選手の功績が大きい。普段は冷静なプレーで知られるが、前回の大会では闘志をむき出しにして日本チームを引っ張り、王者に導いた。
イチロー選手を動かす思いは明快だ。世界的なサッカー人気に押され気味の野球界発展のために、WBCは貴重な大会として育てていく必要があるとする。
プロの選手として、本番のペナントレース前の大会には誰でも腰が引けて当然だという。けがや調整の失敗は命取りになる。そんな不安を払拭(ふっしょく)するには、WBCに懸ける「覚悟」が求められると断言する。イチロー選手に触発された日本代表の覚悟を感じながら、連覇に向けて応援するとしよう。