Autodesk Softimage ユーザ事例カプコン
「バイオハザード 4」
ラクーンシティでアンブレラ事件に巻き込まれた時(バイオハザード2)には新人警官であった主人公のレオン・S・ケネディも、事件から6年経過した現在はアメリカ合衆国の優秀なエージェントへと成長を遂げていた。今回(バイオハザード4)のストーリーは、大統領の娘が誘拐されたという極秘事件の捜査のために、目撃証言をもとにレオンが単身ヨーロッパの寂れた街に派遣されたところから始まる。しかし、そこで出会う住民たちは明らかに様子がおかしく何故かまともに話しも通じない。異様な雰囲気に戸惑いを感じ始めるレオン、状況を把握出来ないままに気がついた時には武器を手にした群衆に取り囲まれていた。とその時、斧やチェーンソーを手に次々と襲い掛かってくる正気の沙汰とは思えない形相の群衆。
「まさか、悪夢はもう終わったはずだ…」
心地よい緊張感と手に汗を握るアクションで数多くのプレーヤーを虜にしてきたバイオハザードシリーズ待望の最新作であるバイオハザード4が2005年1月27日にリリースされた。前作をやり込んできたプレーヤーをも唸らせるであろうこのバイオハザード4での革新的なグラフィックスやリアルなキャラクタアニメーション、映画にも勝るとも劣らない臨場感のあるカメラワークといったクオリティの高いコンテンツは一体どのようにして生み出されたのだろうか。その疑問を確認するためリアルタイム3Dムービー統括を担当された株式会社カプコンのデザイナー平林良章氏にインタビューを試みた。これまでのシリーズ中で最も難易度の高い課題を抱えていたこのプロジェクトに対してAutodesk Softimageがどのように貢献したかを丁寧に解説してくれた。
限られたデータ容量の中で最高のクオリティを引き出す
「今回のプロジェクトで前作との大きな変更点であり、かつ最も挑戦的でもあったことは演出ムービー部分は全てリアルタイムで描画させていることです。」と平林氏は開口一番に説明してくれた。全てのコンテンツをリアルタイム描画するという決断はゲーム部分と演出イベント映像のクオリティを違和感の無いシームレスなつなぎに改善することで、プレーヤーにより集中して純粋にゲームを楽しんでもらうことを実現するためだ。リアルタイム描画とはいってもそのクオリティはプリレンダーのムービーに劣らぬものに仕上げる必要があり、例えば20体のキャラクタが同時に動いても決して処理落ちは起きてはならないという大きな課題に直面した。この難題をクリアするために次のような手法がとられた。まず最高クオリティのシーンを制作し、そこからクオリティをなるべく保ちつつ処理落ちが起こらないようにモデルに対して修正を加えていったのである。データ容量に直結しやすいテクスチャデータを工夫することやポリゴン数を減らすなどといった様々な試行錯誤が行われた。ただしポリゴン数は単純に減らしすぎてしまうと、頂点数の関係上リアルタイムで描画されるライトの照射結果が綺麗に出ないなどクオリティとデータ容量のバランスに苦労したそうである。「こういったデータ容量の調整作業ではAutodesk Softimageの強力なポリゴンモデリング機能のおかげで素早いモデルデータの編集が可能でした。それからUVの展開、編集などテクスチャ周りの作業で細かい制御が行えたので理想のクオリティを保ちながらデータ容量のコントロールがスムーズに行えました。今回のプロジェクトの成功はXSIなくしては考えられないですね。」と平林氏は語ってくれた。
開発パイプラインの核を担うAutodesk Softimage
バイオハザード4ではクオリティもさることながら前作の10倍を超える膨大な物量のコンテンツを仕上げる必要があった。しかし、その開発期間は通常のゲーム制作に比べかなりの短期スケジュールで完了したという。その秘密は何であろうか?実は効率的な制作ワークフローに答えがあるのだが、これを実現したのがAutodesk Softimageを開発パイプラインの核とした実機(ゲームキューブ)へのアウトプット環境である。株式会社カプコンのゲーム開発環境ではXSIのAnimation Mixerインターフェースをうまく利用してモーションデータやカメラのアニメーションなどをゲームに必要なあらゆるデータを管理している。例えばあるシーンのモーションをゲームにエクスポートするには、Animation Mixer上でアウトプットしたいデータを選択し、ボタンを押した後にキャラクタのノードを選択するというステップだけでそのデータがそのまま実機上で再生される。つまり0から100フレームのカメラの動き、指や目といったボディパーツのアニメーション、フェイシャルのアニメーションデータといったデザイナーが制作しているデータを意図どおりにボタンひとつで瞬時に実機上で確認できる環境がXSIを通じて整備されているのだ。通常は5〜6工程はあるステップがVBSと自社ツールの連携によるカスタマイズで1工程に集約されており、デザイナーはXSIの裏で走っているプログラムを意識することなくシーンの再生を瞬時に行える。「Animation Mixerはデザイナーにとってはインターフェースが直観的で分かりやすく、プログラマーにとってはオープンで柔軟なカスタマイズ環境が準備されています。このため今回のような短期の開発期間でもディレクターが要求したスピードやクオリティをさらに超える形で作業を進めることが実現出来たのだと思います。」と平林氏は語る。
株式会社カプコンではGC版バイオハザードまで大部分がAutodesk Softimageとその前身であるSOFTIMAGE|3Dの併用により開発されていたが、このバイオハザード4からはキャラクタモデリングからアニメーション、そしてシーンの実機へのアウトプットまで完全にAutodesk Softimageへの開発環境の移行が行われた。Autodesk Softimageを制作のメインツールとして選択している理由を尋ねてみたところ「まず、やはりSOFTIMAGE|3Dの時代からのノウハウが社内に蓄積されていることがあります。それに加えてもし何か課題に直面した際のSoftimageスタッフによるサポートに関しても長年の信頼と実績が積み重なっていることが大きいですね。ソフトの機能面に関して確実に日本のユーザーの意見を反映して進化してきているところも信頼につながっているんだと思います。クオリティの高いゲームを制作するにはクオリティの高いツールを選択するのはもちろん必然的なことですしね。」と平林氏は笑顔で答えてくれた。
XSIスクリーンショット、画像の一覧はこちらをクリックしてください。
『バイオハザード 4』公式サイトはこちらへ
株式会社カプコン 第一開発部 デザイナー
平林良章(ひらばやしよしあき)氏
2001年株式会社カプコン入社。
現在までに『GC版バイオハザード』『バイオハザード0』『バイオハザード4』制作に携わる。