98年7月に和歌山市園部で起きた毒物カレー事件で24日、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)で開かれた殺人罪などに問われている林真須美被告(47)の上告審弁論。事件から10年、1審・和歌山地裁の死刑判決を支持した大阪高裁判決から3年以上が経過。遺族や被害者らは上京して傍聴席から静かに見守った。
弁論は午後3時に始まり、約50の傍聴席はすべて埋まった。犠牲になった谷中孝寿さん(当時64歳)の妻千鶴子さん(71)ら、遺族や被害者は最前列に着席。弁護側の主張に、顔を震わせてうつむく場面もあった。
林被告の弁護側は、「林被告には無差別殺人を犯す動機がない。他の人間が毒物を混入させる機会が全くなかったとは言えない」と主張。検察側は「犯人が別にいるとの(弁護側の)主張は、証拠調べを経ていない事実を前提とした違法なもので、根拠のない憶測に過ぎない」と述べた。
閉廷後、被害者支援弁護団長の大谷美都夫弁護士は、弁護側の主張について「ヒ素を混ぜるチャンスが他にもあったというが現実的ではない」と指摘。また、同弁護団事務局長の山西陽裕弁護士も「個人的には、証拠に基づかないと(弁護側の)主張に迫力が出ないと思う」と話した。【安藤龍朗】
毎日新聞 2009年2月25日 地方版