98年7月に和歌山市で起きた毒物カレー事件で、殺人罪などに問われ1、2審で死刑判決を受けた林真須美被告(47)の上告審弁論が24日、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)で開かれ、結審した。弁護側は「被告に動機はなく、有罪の証拠は信用できない」と改めて無罪を主張し、検察側は上告棄却を求めた。判決期日は後日指定されるが、早ければ今春にも判決が言い渡される見通し。
被告の関与を直接示す証拠はなかったが、1審・和歌山地裁は02年12月、カレー鍋に混入された亜ヒ酸と真須美被告宅などにあった亜ヒ酸の同一性を認め、住民の目撃証言などから「混入できる機会があったのは被告のみ」と指摘。大阪高裁も05年6月、1審の認定を支持した。一方で1、2審とも「動機は不明」とした。
弁護側は弁論で「亜ヒ酸を同一とした鑑定には疑問がある。(1人で)混入したとされる時間帯に被告は次女と一緒におり、目撃証言は見間違い」と主張。検察側は「鑑定は合理的で、目撃証言は信用性が高い」と反論した。
夫を亡くした谷中千鶴子さん(71)と長女を亡くした鳥居百合江さん(58)が傍聴。閉廷後に代理人を通じ「怒りや悲しみを心に持ち続けた10年余りは長い日々でした。1、2審と同じ判決の出ることを心から願う」とのコメントを出した。【北村和巳、安藤龍朗】
毎日新聞 2009年2月24日 20時33分(最終更新 2月24日 21時02分)