被害者支援のため弁論を傍聴した後、報道陣の取材に応じる大谷美都夫弁護士(中央)=24日午後、東京都千代田区、宮崎亮撮影
98年7月に和歌山市で起きたカレー毒物混入事件で殺人罪などに問われ、一、二審で死刑判決を受けた元保険会社営業職員林真須美被告(47)の上告審で、最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)は24日、検察側、弁護側双方から意見を聴く弁論を開いた。弁護側はカレー事件について無罪を主張。検察側は上告棄却を求めた。判決は夏前にも言い渡される見通し。
林被告は自治会の夏祭りのカレーにヒ素(亜ヒ酸)を混入して4人を殺害したとされるほか、夫らに対する殺人未遂や保険金詐欺にも問われた。保険金詐欺以外は一貫して無罪を主張している。
検察側は(1)林被告がヒ素などを使って夫や知人らの殺害をはかった「類似事実」が存在する(2)カレーに混入されたヒ素は林被告の自宅にあったものと同一(3)カレーへのヒ素混入の機会は林被告にしかなかった――などの状況証拠により、カレー事件は被告による犯行と主張。「弁護側の主張は理由がない」と述べた。
一方、弁護側は「カレー事件は金銭目的の保険金詐欺と異なり、動機がない」と指摘。類似事実による立証に反論したうえで、(2)について「鑑定は信用できない」と主張し、(3)についても「カレー鍋付近で林被告を見たという住民の目撃証言は(林被告の)次女と見誤った可能性がある」「他の人にも混入の機会はあった」と反論した。夫らの殺人未遂事件も「保険金目的でヒ素を飲んでおり、殺意はなかった」と述べた。(中井大助)