がん対策のさらなる推進に向け、県は2009年度から、患者の情報を整理する「地域がん登録」の精度を高める取り組みに本格的に着手する。本県はがん死亡者のうち4割以上が登録しておらず、り患状況などの把握が不十分な状況。予防・治療対策向上のためにも登録精度の向上が強く求められており、県内医療機関への協力依頼活動や登録マニュアルづくりに努める。
県は、がんに関する県民の教育・啓発を狙い「がん情報・相談センター(仮称)」整備を検討している。その議論の中で、正確で有効な情報を発信するには、基礎データとなる地域がん登録の精度を高めるべきとの意見が目立っている。
地域がん登録は都道府県が、がんの種類や進行度、り患率、生存率などのデータを蓄積し、予防・治療対策に活用する事業。全国では35道府県が行っており、本県はDCO率(がん死亡者のうち登録していなかった人の割合)が約45%(03年)で、登録精度は高くない。
県はこれらの状況を踏まえ、09年度予算案の「がん相談・情報対策事業」に関連事業を盛り込んだ。登録マニュアルを県内100カ所程度の医療機関に配り、県内4カ所(青森、弘前、八戸、むつ)で説明会を開催。さらに、登録にかかわる人材育成のため関係者を県外研修に派遣するほか、先進地の長崎県で登録方法などを視察する。
県によると、県立中央病院など県内5カ所のがん診療連携拠点病院は、指定要件に地域がん登録への協力と院内がん登録が含まれているため行っているが、その他の公立・民間病院では必ずしも登録を行っていないのが現状という。
県は「がん登録の精度が高まれば、がんをめぐる本県の姿が明らかになり、各対策の戦略を立てることができる」(医療薬務課)と意義を強調している。