シンポジウム第2部では、「子育てに積極的に関わる男性社員や管理職に聞く“両立の秘訣”」と題して、これまで実際に子育て支援制度を利用した社員やその管理職の経験をもとに、制度利用体験がもたらした成果や感想、そして管理職側の取り組みなどが語り合われた。

◇コーディネーター
  • 安藤哲也氏 (NPO法人ファザーリング・ジャパン 代表理事)
  • 小室淑恵氏 (株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長)
◇パネリスト
  • 武田圭三氏 (富士ゼロックス株式会社)
  • 石井 一氏 (共同印刷株式会社)
  • 高橋秀和氏 (花王株式会社)
  • 岩渕知浩氏 (株式会社NTTドコモ)

育児休暇の普及には、日ごろのコミュニケーションも重要

――最初に、日本の場合、男性が育児休暇を取ろうとしても、どうしてもハードルが高い印象があります。ご自分が休暇を取られたときの上司への対応や業務の引き継ぎなどは、どのようになさっていましたか?

岩渕:育児休暇などというのは当時ほとんど根付いていない状況で、「休暇を取ります」と言ったら、チームのみんなに「何それ?」という顔をされました。そんな状態なので、まず制度のことを理解してもらうのがたいへんでした。とにかく「8週間のあいだだからガマンして」と頼んで、その期間中の連絡はメールなどでとっていました。

高橋:当社は会社の制度がすでにちゃんと整備されていましたし、私は研究職なので引き継ぎ等の問題はたいして感じませんでした。それよりむしろ、自分の気持ちのハードルの方が高かったですね。それまで周囲に子育て休暇をとった人がいなくて、「何を言われるか、やめろと言われるのでは?」と半年ぐらい悩みました。しかし、いよいよ2週間前になって言ったら、上司はあっさり「いいよ」と言ってくれました。

――男性は女性以上に前例を気にする傾向がありますね。ロールモデルを見ながら動いていく文化があるので、前例のない育児休暇などはとりにくいのでしょう。では、そうした社員の育児休暇を受け止め、支える側の管理職の経験としてはいかがでしょう。

武田:私は支店の営業マネージャーを務めていますが、部下の男性が育児休暇を取得しました。最初本人からは2ヵ月欲しいと言われたのですが、せっかくなのだから、そんなつまみ食いみたいにせずに、制度期間満了の4ヵ月とればと勧めました。彼は14人の部下の中でも成績トップで大型案件も抱えていたので、会社内だけでなく得意先への説明も入念に行いましたが、むしろお客様の方が「いいことじゃないか」と前向きに受け止めてくださいました。

 特に配慮した点としては、戻ってきたときに人事や評価面でのマイナスポイントにならないように気をつけていました。エースが抜けた穴をどうするかというのは重要な問題ですが、当社の場合はすでに介護休暇などの実績が多くあり、部下を休ませるのはマネージャーの義務という意識が根付いているので、そんなに悩むことはありませんでした。

――会社や管理職側としては、社員が育児休暇をとりやすい空気づくりとして、どういった取り組みをなさっていますか?

石井:私は印刷会社の営業部長を務めていますが、部下にも「このお客はオレじゃなきゃ」の時代ではないと、つねづね言ってきています。誰かが休暇で抜けたら周りがカバーできる体制作りの方が大事ですし、そのためのコミュニケーションの重要性を説いています。

 中でも「相手の事情に想像力を働かせ、時間を守る」を徹底させています。子育てをしながら仕事をする場合、託児所に子どもを迎えに行ったりするには、時間のマネジメントができていないと不可能です。そういう意味でも、他人の時間がタダだと思ってはいけません。

 お互いに相手の都合をよく聞き、そのスケジュールを尊重しながら効率よく仕事を勧めることが、育児参加を進める上ではとても大切なポイントの1つです。子育てだけではありません。中には家族の介護や、引きこもりやうつ病の家族を抱えている人もおり、ふだんからお互いの事情をよく知っておくことは、今後ますます必要になるでしょう。


 
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INDEX
育児休暇を取得した男性社員に聞く!リアルな苦労と意外な効果 「子育てに積極的に関わる男性社員や管理職に聞く“両立の秘訣”」をレポート
育児休暇の普及には、日ごろのコミュニケーションも重要

子育てのスキルが仕事の効率もアップさせた

「デキる男」の未来像は、自分にあった働き方や時間配分のうまい人





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CAREERzine編集部(キャリアジンヘンシュウブ)

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