◎整備新幹線前倒し 間違いなく有効な景気対策
金子一義国土交通相が、新年度予算成立後の追加経済対策で整備新幹線工事の前倒しを
検討する意向を示した。このところ、中川昭一前財務相の辞任などの影響で、麻生太郎首相の求心力は急速に低下していると言われるだけに、果たして現内閣に追加経済対策をまとめる余力が残っているかという点にはいささか懸念を抱かざるを得ないとはいえ、金子国交相の考えそのものは妥当であり、沿線としては実現を期待したいところだ。
公共事業は、着工した以上は可能な限り早く完成させ、効果を早く発揮させた方が得で
あることは論を待たない。特に、新幹線は着工前の試算で採算面のめどが立っており、先に開業した鹿児島などの例を見ても分かる通り、沿線への経済波及効果も大きい。さらに沿線の企業などに対する心理的効果も期待できる。新幹線工事の前倒しは、景気刺激策として間違いなく有効と言えよう。
現にフランスも、景気対策の一環として高速鉄道の延伸に取り組む方針を打ち出してい
る。中国もそうだ。新幹線と言うだけで無理解な一部の識者らは「税金の無駄遣い」「ばらまき」などと騒ぐかもしれないが、国交省は、「戦後最大の経済危機」と言われるこの時期に新幹線工事を前倒しすることの意義を、胸を張って説明してほしい。
追加経済対策では、おそらく環境関連の公共事業が柱の一つになるだろう。新幹線は、
飛行機や自動車と比べて単位輸送量当たりのエネルギー消費量も二酸化炭素排出量も少ない。新幹線への投資は環境対策の意味合いを持つこともあらためて指摘しておきたい。
政府・与党は追加経済対策をまとめるにあたり、財政難の自治体に「受益者負担」を求
めず、国の全額負担で実施する新たな直轄事業制度を創設することを検討している。事業を円滑に進めるのが狙いである。新幹線については、全国新幹線鉄道整備法の政令で沿線自治体の「三分の一負担」が定められており、道路やダムなどとは位置付けが違うものの、この際だから新幹線の地元負担の在り方も見直してもらいたい。
◎国際会議欠席 何のための副大臣制度か
与謝野馨財務・金融・経済財政相が、東南アジア諸国連合と日中韓三国(ASEAN+
3)財務相会議を欠席した。三つの閣僚ポストを兼務し、国会審議が重なって多忙という理由だが、金融危機が続くなかで、重要な会議に財務相が出席しないと国益を損なう恐れがある。
与謝野財務・金融・経済財政相が閣僚ポストの兼務を続ける、続けないにかかわらず、
大臣は外交を優先させ、国会審議は副大臣や政務官に任せるという副大臣・政務官制度の趣旨を尊重すべきだ。
民主党は、「国会開会中の大臣の海外出張は必要やむを得ない場合に限る」「大臣に代
わって副大臣・政務官が本会議委員会で答弁することは原則として認めない」方針という。国会会期中、大臣が国際会議に出席できず、省庁で職務をこなす時間的余裕もないのでは、何のための副大臣・政務官制度なのか分からなくなる。与野党は国会運営の在り方を根本から見直してほしい。
副大臣・政務官制度は、官僚主導との批判があった政策立案について、政治家が指導的
役割を果たせるようにする目的で導入された。官僚が大臣に代わって答弁する政府委員制度の廃止に伴い、副大臣も答弁できるようになった。しかし、野党は「大臣が出席しないなら委員会開会に応じない」と主張し、大臣、副大臣、政務官を国会に縛り付けている。
東南アジア諸国連合と日中韓三国財務相会議は、通貨危機が起きた場合、各国が緊急に
外貨を融通しあう通貨交換協定「チェンマイ・イニシアチブ」を話し合う重要な国際会議だった。今後も二十の国と地域(G20)による第二回首脳会合(金融サミット)や七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議、アジア開発銀行総会などが控えている。
副大臣・政務官制度を機能させ、閣僚が後顧の憂いなしに出席できるようにしておかな
いと、国際舞台で日本の存在感は薄まるばかりだ。民主党が政権を取る日が来れば、今度は民主党が困ることになる。国益を考えて速やかに方針転換してもらいたい。