厚生労働省発表 平成14年4月5日 |
|
近年、マイクロエレクトロニクスや情報処理を中心とした技術革新により、IT(情報技術)化が急速に進められており、VDT(Visual Display Terminals)が広く職 場に導入されてきたことに伴い、誰もが職場においてVDT作業を行うようになり、VDT機器を使用する者が急速に増大している。
また、最近においては、ノート型パソコンや携帯情報端末の普及、マウス等入力機器の多様化、様々なソフトウェアの普及等に見られるよう、VDT機器等は多様化する状況にある。 このような状況の中、現状のVDT作業における問題点も指摘されており、労働省において平成10年に実施した「技術革新と労働に関する実態調査」によれば、VDT作業を行っている作業者のうち、精神的疲労を感じているものが36.3%、身体的疲労を感じているものが77.6%にも上っている。 このため、厚生労働省においては、VDT作業に関する専門家により構成された「VDT作業に係る労働衛生管理に関する検討会」(座長 独立行政法人産業医学総合研究所理事長 荒記俊一)を設置し、VDT作業における安全衛生管理のあり方について検討を行ってきたところである。 今般、この検討結果を受け、VDT作業者の心身の負担をより軽減し、作業者がVDT作業を支障なく行ことができるようにするため、新しい「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定した。 |
1 対象となる作業
対象となる作業は、事務所において行われるVDT作業(ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT(Visual Display Terminals)機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業)とし、労働衛生管理を以下のように行うこととした。
2 作業環境管理
作業者の疲労等を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、照明、採光、グレアの防止、騒音の低減措置等について基準を定め、VDT作業に適した作業環境管理を行うこととした。
3 作業管理
(1)作業時間管理等
イ | 作業時間管理 作業者が心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、次により作業時間、作業休止時間等について基準を定め、作業時間の管理を行うこととした。
| ||||||||
ロ | 業務量への配慮 作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう配慮すること。 |
(2)VDT機器等の選定
次のVDT機器、関連什器等についての基準を定め、これらの基準に適合したものを選定し、適切なVDT機器等を用いることとした。
(3)VDT機器等の調整
作業者にディスプレイの位置、キーボード、マウス、椅子の座面の高さ等を総合的に調整させることとした。
4 VDT機器等及び作業環境の維持管理
VDT機器等及び作業環境について、点検及び清掃を行い、必要に応じ、改善措置を講じることとした。
5 健康管理
作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業者に対して、次により健康管理を行うこととした。
(1) 健康診断等
イ | 健康診断 VDT作業に新たに従事する作業者に対して、作業の種類及び作業時間に応じ、配置前健康診断を実施し、その後1年以内ごと1回定期に、定期健康診断を行うこととした。 |
ロ | 健康診断結果に基づく事後措置 健康診断の結果に基づき、産業医の意見を踏まえ、必要に応じ有所見者に対して保健指導等の適切な措置を講じるとともに、作業方法、作業環境等の改善を進め、予防対策の確立を図ることとした。 |
(2)健康相談
メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の方法等についての健康相談の機会を設けるよう努めることとした。
(3)職場体操等 就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行うことが望ましいこととした。
6 労働衛生教育
VDT作業に従事する作業者及び当該作業者を直接管理する者に対して労働衛生教育を実施することとした。
また、新たにVDT作業に従事する作業者に対しては、VDT作業の習得に必要な訓練を行うこととした。
7 配慮事項
高齢者、障害等を有する作業者及び在宅ワーカーの作業者に対して必要な配慮を行うこととした。
VDT(Visual Display Terminals)作業における労働衛生管理については、昭和60年12月20日付け基発第705号「VDT作業のための労働衛生上の指針について」(以下「705号通達」という。)により、関係事業場に対して指導を行ってきたところであるが、近年、職場における情報技術化が急速に進められており、VDT作業が広く職場で行われ、職場環境、作業形態等についても大きく変化するとともに、心身の疲労を訴える作業者が非常に高い割合を占める状況にある。
このため、VDT作業に関する各方面の専門家により構成された「VDT作業に係る労働衛生管理に関する検討会」を設置し、VDT作業における労働衛生管理のあり方について検討を行ったところである。
今般、この検討結果を踏まえ、上記指針を見直し、作業者がVDT作業を支障なく行うことができるよう支援するために事業者が講ずべき措置等について示した「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を別添のとおり策定したので、今後は、これにより関係事業場を指導されたい。
なお、本ガイドラインは、事務所において行われるVDT作業を対象としたものであるが、ディスプレイを備えた各種機器を使用して、事務所以外の場所で行われるVDT作業等についても、できる限り本ガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導されたい。
おって、705号通達は廃止する。
1 はじめに
近年、マイクロエレクトロニクスや情報処理を中心とした技術革新により、IT(情報技術)化が急速に進められており、VDT(Visual Display Terminals)が広く職場に導入されてきたことに伴い、職場環境、労働形態等についても大きく変化する状況にある。
昭和60年12月に「VDT作業のための労働衛生上の指針」が策定された後、最近におけるVDT作業の状況として、
(1) VDT作業従事者の増大
(2) ノート型パソコンの普及
(3) マウス等入力機器の多様化
(4) 多様なソフトウェアの普及
(5) 大型ディスプレイ等の増加
(6) インターネットの普及
(7) 携帯情報端末等の普及
等があげられ、職場におけるVDT作業は大きく変化するとともに、現状のVDT作業における問題点も指摘されているところである。
労働省において平成10年に実施した「技術革新と労働に関する実態調査」によれば、VDT作業を行っている作業者のうち、精神的疲労を感じているものが36.3%、身体的疲労を感じているものが77.6%にも上っている。
VDT作業に従事する者(以下「作業者」という。)の心身の負担を軽減するためには、事業者が作業環境をできる限りVDT作業に適した状況に整備するとともに、VDT作業が過度に長時間にわたり行われることのないように適正な作業管理を行うことが重要である。
また、作業者が心身の負担を強く感じている場合や身体に異常がある場合には、早期に作業環境、作業方法等の改善を図り、VDT作業を支障なく行うことができるようにする必要があり、そのためには、事業者が作業者の健康状態を正しく把握し、できるだけ早い段階で作業者の健康状態に応じた適正な措置を講ずることができるよう、作業者の健康管理を適正に行うことが重要である。
本ガイドラインは、このような考え方により、VDT作業における作業環境管理、作業管理、健康管理等の労働衛生管理について、その後、得られた産業医学、人間工学等の分野における知見に基づいて見直し、作業者の心身の負担を軽減し、作業者がVDT作業を支障なく行うことができるよう支援するために事業者が講ずべき措置等について示したものである。
このような労働衛生管理が適正に行われるためには、事業者は、安全衛生に関する基本方針を明確にし、安全衛生管理体制を確立するとともに、各級管理者、作業者等の協力の下、具体的な安全衛生計画を作成し、作業環境の改善、適正な作業管理の徹底、作業者の健康管理の充実等の労働衛生管理活動を計画的かつ組織的に進めていく必要がある。
また、作業者がその趣旨を理解し、積極的に措置の徹底に協力することが極めて重要であるので、適切な労働衛生教育を実施することが不可欠である。
なお、本ガイドラインは、標準的なVDT作業を対象としたものであるので、各事業場においては、これをもとに、衛生委員会等で十分に調査審議の上、VDTを使用する作業の実態に応じて、VDT作業に関する労働衛生管理基準を定めるとともに、当該基準を職場の作業実態によりよく適合させるため、衛生委員会等において、一定期間ごとに評価を実施し、必要に応じ、見直しを行うことが重要である。
さらに、この基準をより適正に運用するためには、労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針(平成11年労働省告示第53号)に基づき、事業者が労働者の協力の下に一連の過程を定めて継続的に行う自主的な安全衛生活動の一環として取り組むことが効果的である。
2 対象となる作業
対象となる作業は、事務所(事務所衛生基準規則第1条第1項に規定する事務所をいう。以下同じ。)において行われるVDT作業(ディスプレイ、キーボード等により構成されるVDT機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業をいう。以下同じ。)とし、別紙「VDT作業の作業区分」(以下「別紙」という。)によりVDT作業を区分し、作業の種類及び作業時間に応じた労働衛生管理を行うこととする。
ただし、別紙における「作業区分C」に該当する作業に従事する者(以下「作業区分Cの作業者」という。)については、必要に応じ、以下の3、4及び5に準じて労働衛生管理を行うこととする。
なお、事務所以外の場所において行われるVDT作業、在宅ワーカーが自宅等において行うVDT作業及びVDT作業に類似する作業についても、できる限り本ガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導することが望ましい。
3 作業環境管理
作業者の心身の負担を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、次によりVDT作業に適した作業環境管理を行うこと。
(1)照明及び採光
イ | 室内は、できるだけ明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせないようにすること。 |
ロ | ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上とすること。 また、ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさの差はなるべく小さくすること。 |
ハ | ディスプレイ画面に直接又は間接的に太陽光等が入射する場合は、必要に応じて窓にブラインド又はカーテン等を設け、適切な明るさとなるようにすること。 |
(2)グレアの防止
ディスプレイについては、必要に応じ、次に掲げる措置を講ずること等により、グレアの防止を図ること。
イ | ディスプレイ画面の位置、前後の傾き、左右の向き等を調整させること。 |
ロ | 反射防止型ディスプレイを用いること。 |
ハ | 間接照明等のグレア防止用照明器具を用いること。 |
ニ | その他グレアを防止するための有効な措置を講じること。 |
(3)騒音の低減措置
VDT機器及び周辺機器から不快な騒音が発生する場合には、騒音の低減措置を講じること。
(4)その他
換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去、休憩等のための設備等について事務所衛生基準規則に定める措置等を講じること。
4 作業管理
作業者が、心身の負担が少なく作業を行うことができるよう、次により作業時間の管理を行うとともに、作業の特性や個々の作業者の特性に応じたVDT機器、関連什器等を整備し、適切な作業管理を行うこと。
(1)作業時間等
イ | 一日の作業時間
| ||||
ロ | 一連続作業時間及び作業休止時間
| ||||
ハ | 業務量への配慮 作業者の疲労の蓄積を防止するため、個々の作業者の特性を十分に配慮した無理のない適度な業務量となるよう配慮すること。 |
(2)VDT機器等
イ | VDT機器の選択 VDT機器を事業場に導入する際には、作業者への健康影響を考慮し、作業者が行う作業に最も適した機器を選択し導入すること。 | ||||||||||||||||||||||||
ロ | デスクトップ型機器
| ||||||||||||||||||||||||
ハ | ノート型機器
| ||||||||||||||||||||||||
ニ | 携帯情報端末 携帯情報端末については、長時間のVDT作業に使用することはできる限り避けることが望ましい。 | ||||||||||||||||||||||||
ホ | ソフトウェア ソフトウェアは、次の要件を満たすものを用いることが望ましい。
| ||||||||||||||||||||||||
ヘ | 椅子 椅子は、次の要件を満たすものを用いること。
| ||||||||||||||||||||||||
ト | 机又は作業台 机又は作業台は、次の要件を満たすものを用いること。
|
(3)調整
作業者に自然で無理のない姿勢でVDT作業を行わせるため、次の事項を作業者に留意させ、椅子の座面の高さ、キーボード、マウス、ディスプレイの位置等を総合的に調整させること。
イ | 作業姿勢
| ||||||||||
ロ | ディスプレイ
| ||||||||||
ハ | 入力機器 マウス等のポインティングデバイスにおけるポインタの速度、カーソルの移動速度等は、作業者の技能、好み等に応じて適切な速度に調整すること。 | ||||||||||
ニ | ソフトウェア 表示容量、表示色数、文字等の大きさ及び形状、背景、文字間隔、行間隔等は、作業の内容、作業者の技能等に応じて、個別に適切なレベルに調整すること。 |
5 VDT機器等及び作業環境の維持管理
作業環境を常に良好な状態に維持し、VDT作業に適したVDT機器等の状況を確保するため、次により点検及び清掃を行い、必要に応じ、改善措置を講じること。
(1)日常の点検
作業者には、日常の業務の一環として、作業開始前又は一日の適当な時間帯に、採光、グレアの防止、換気、静電気除去等について点検させるほか、ディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の点検を行わせること。
(2)定期点検
照明及び採光、グレアの防止、騒音の低減、換気、温度及び湿度の調整、空気調和、静電気除去等の措置状況及びディスプレイ、キーボード、マウス、椅子、机又は作業台等の調整状況について定期に点検すること。
(3)清掃
日常及び定期に作業場所、VDT機器等の清掃を行わせ、常に適正な状態に保持すること。
6 健康管理
作業者の健康状態を正しく把握し、健康障害の防止を図るため、作業者に対して、次により健康管理を行うこと。
(1)健康診断
イ | 配置前健康診断
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ロ | 定期健康診断
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ハ | 健康診断結果に基づく事後措置 配置前又は定期の健康診断によって早期に発見した健康阻害要因を詳細に分析し、有所見者に対して次に掲げる保健指導等の適切な措置を講じるとともに、予防対策の確立を図ること。
|
(2)健康相談
作業者が気軽に健康について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、プライバシー保護への配慮を行いつつ、メンタルヘルス、健康上の不安、慢性疲労、ストレス等による症状、自己管理の方法等についての健康相談の機会を設けるよう努めること。
また、パートタイマー等を含むすべての作業者が相談しやすい環境を整備するなど特別の配慮を行うことが望ましい。
(3)職場体操等
就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行うことが望ましい。
7 労働衛生教育
労働衛生管理のための諸対策の目的と方法を作業者に周知することにより、職場における作業環境・作業方法の改善、適正な健康管理を円滑に行うため及びVDT作業による心身への負担の軽減を図ることができるよう、次の労働衛生教育を実施すること。
また、新たにVDT作業に従事する作業者に対しては、VDT作業の習得に必要な訓練を行うこと。
なお、教育及び訓練を実施する場合は、計画的に実施するとともに、実施結果について記録することが望ましい。
(1)作業者に対して、次の事項について教育を行うこと。また、当該作業者が自主的に健康を維持管理し、かつ、増進していくために必要な知識についても教育を行うことが望ましい。
イ | VDT作業の健康への影響 |
ロ | 照明、採光及びグレアの防止 |
ハ | 作業時間等 |
ニ | 作業姿勢 |
ホ | VDT機器等の調整・使用法 |
ヘ | 作業環境の維持管理 |
ト | 健康診断とその結果に基づく事後措置 |
チ | 健康相談の体制 |
リ | 職場体操等の実施 |
ヌ | その他VDT作業に係る労働衛生上留意すべき事項 |
(2)VDT作業に従事する者を直接管理する者に対して、次の事項について教育を行うこと。
イ | 管理者の役割と心構え |
ロ | 労働衛生管理の概論 |
ハ | VDT作業の健康への影響 |
ニ | 照明、採光及びグレアの防止 |
ホ | 作業時間等 |
ヘ | 作業姿勢 |
ト | VDT機器等の調整・使用法 |
チ | 作業環境の維持管理 |
リ | 健康診断とその結果に基づく事後措置 |
ヌ | 健康相談の方法 |
ル | 職場体操等の必要性と方法 |
ヲ | VDT作業従事者に対する教育の方法 |
ワ | 配慮事項等 |
カ | その他VDT作業に係る労働衛生上留意すべき事項 |
8 配慮事項等
(1)高齢者に対する配慮事項等
高年齢の作業者については、照明条件やディスプレイに表示する文字の大きさ等を作業者ごとに見やすいように設定するとともに、過度の負担にならないように作業時間や作業密度に対する配慮を行うことが望ましい。
また、作業の習熟の速度が遅い作業者については、それに合わせて追加の教育、訓練を実施する等により、配慮を行うことが望ましい。
(2)障害等を有する作業者に対する配慮事項
VDT作業の入力装置であるキーボードとマウスなどが使用しにくい障害等を有する者には、必要な音声入力装置等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。
また、適切な視力矯正によってもディスプレイを読み取ることが困難な者には、拡大ディスプレイ、弱視者用ディスプレイ等を使用できるようにするなどの必要な対策を講じること。
(3)在宅ワーカーに対する配慮事項
注文者は、VDT作業を行う在宅ワーカーの健康確保のため、在宅ワーカーに対して本ガイドラインの内容を提供することが望ましい。
作業区分 | 作業の種類 | 作業時間 | 作業の例 | 作業の概要 |
A | 単純 入力型 |
1日 4時間以上 |
データ、文章等の入力 | 資料、伝票、原稿等からデータ、文章等を入力する。(CADへの単純入力を含む。) |
拘束型 | 受注、予約、照会等の業務 | コールセンター等において受注、予約、照会等の業務を行う。 | ||
B | 単純 入力型 |
1日 2時間以上 4時間未満 |
単純入力型の業務 | 単純入力型の業務を行う。 |
拘束型 | 拘束型の業務 | 拘束型の業務を行う。 | ||
対話型 | 1日 4時間以上 |
文章、表等の作成、編集、修正等 | 作業者自身の考えにより、文章の作成、編集、修正等を行う。 | |
データの検索、照合、追加、修正 | データの検索、照合、追加、修正をする。 | |||
電子メールの受信、送信 | 電子メールの受信、送信等を行う。 | |||
金銭出納業務 | 窓口等で金銭の出納を行う。 | |||
技術型 | プログラミング業務 | コンピューターのプログラムの作成、修正等を行う。 | ||
CAD業務 | コンピューターの支援により設計、製図を行う。(CADへの単純入力を除く。) | |||
監視型 | 監視業務 | 交通等の監視を行う。 | ||
その他の型 | 携帯情報端末の操作、画像診断検査等 | 携帯情報端末の操作、画像診断検査等を行う。 | ||
C | 単純 入力型 |
1日 2時間未満 |
単純入力型の業務 | 単純入力型の業務を行う。 |
拘束型 | 拘束型の業務 | 拘束型の業務を行う。 | ||
対話型 | 1日 4時間未満 |
対話型の業務 | 対話型の業務を行う。 | |
技術型 | 技術型の業務 | 技術型の業務を行う。 | ||
監視型 | 監視型の業務 | 監視型の業務を行う。 | ||
その他の型 | その他の型の業務 | その他の型の業務を行う。 |
注:1 | 各「作業の例」及び「作業の概要」は、作業を分類する場合の目安となるよう、現在、行われている典型的な作業について示したものであり、これ以外の作業の場合は、職場の作業実態に応じ、最も類似の作業の種類に分類し、労働衛生管理を進めること。 |
2 | 単純入力型とは、すでに作成されている資料、伝票、原稿等を機械的に入力していく作業をいう。 |
3 | 拘束型とは、コールセンター等における受注、予約、照会等の業務のように、一定時間、作業場所に在席するよう拘束され、自由に席を立つことが難しい作業をいう。 |
4 | 対話型とは、作業者自身の考えにより、文章、表等を作り上げていく作業等をいい、単に入力作業のみを行う者は含まない。 |
5 | 技術型とは、作業者の技術等により、コンピューターを用い、プログラムの作成、設計、製図等を行う作業をいい、CAD業務等において、主に機械的に入力する作業を行う場合は、単純入力作業型に分類すること。 |
6 | 監視型とは、交通等の監視の業務のように、常にディスプレイに表示された事項、画像等を監視する必要のある作業をいう。 |
7 | その他の型とは、携帯情報端末の操作、画像診断検査等の業務のように、ディスプレイを備えた機器を操作する必要のある各種の作業をいう。 |
8 | 監視業務、携帯情報端末の操作、画像診断検査及びディスプレイを備えた機器を使用するその他の業務については、事務所以外の場所で行われる場合が多いが、その場合であっても、できる限りガイドラインに準じて労働衛生管理を行うことが望ましいこと。 |
9 | 作業区分に際して、一人の作業者が複数の種類の作業を行う場合は、それぞれの作業時間を合計した時間がどの作業区分に該当するかにより判断すること。 なお、一人の作業者が、「単純入力型」と「対話型」のように、作業区分の分類を決定する作業時間が異なる複数の作業を行う場合は、行う作業時間が多い方の作業の種類で判断すること。 |
10 | 1日のVDT作業時間が時期により変動する場合は、平均値をとり平均時間がどの作業区分に該当するかにより判断すること。 |
(解説)
「1 はじめに」について
「1 はじめに」においては、近年、職場におけるVDT作業が大きく変化するとともに、VDT作業における問題点として、精神的疲労、身体的疲労等を感じている作業者が多数に上るなどの問題点が指摘される状況にあり、このような作業者の心身の負担を軽減し、VDT作業を支障なく行うことができるようにするためには、事業者が作業環境管理、作業管理、作業者の健康管理等を適正に行い、作業者を支援していくことが重要であるという本ガイドラインの基本的な考え方について示した。
また、このようなVDT作業に関する労働衛生管理が適正に行われるためには、事業者は安全衛生に関する基本方針を明確にするとともに、安全衛生管理体制を確立し、事業者、各級管理者、作業者等の関係者の協力の下、具体的な安全衛生計画を作成し、労働衛生管理活動を計画的かつ組織的に進めていく必要があることを示した。
このような労働衛生管理活動は、衛生委員会等の組織を有する事業場においては、衛生委員会等における調査審議の結果に基づき、総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、各部門の管理者等を中心に、その他の事業場においては、事業者、衛生推進者、職場の責任者等が主体となって進められることとなる。
なお、事業場におけるこれらの活動をより効果的に進めるためには、必要に応じ、都道府県産業保健推進センター、地域産業保健センター、労働衛生コンサルタント等の活用を図ることが望まれる。
また、作業者には身体、心理、技能、経験等の違いにより、個人差があるので、一定の基準を全てのVDT作業従事者に画一的に適用するのは適当でなく、ある程度の弾力性が必要である。
従って、VDT作業に関する労働衛生管理基準を新たに設け、又はこれを変更する場合には、当該基準が個々の作業者に適合しているかどうかについて、衛生委員会等において一定期間ごとに評価を実施し、このような評価結果に基づいて、より適切なものとしていくことが大切である。
さらに、VDT作業に関する労働衛生管理がより適正に行われるためには、各事業場において労働安全衛生マネジメントシステムを導入し、安全衛生計画の作成、実施、評価、改善等を順次進めていくことにより、本ガイドラインに基づいて定めたVDT作業に係る労働衛生管理基準に盛り込まれた措置が確実に実施されるようにすることが望ましい。
「2 対象となる作業」について
本ガイドラインは、事務所においてディスプレイ(画面表示装置)を備えたVDT機器を使用して作業を行う場合の労働衛生管理を対象とするものである。
事務所とは、建築物又はその一部で事務作業に従事する作業者が主として使用するものをいう。
ディスプレイを備えたVDT機器を対象としており、キーボードについては必ずしも備えていなくとも対象としている。
なお、VDT作業の作業の種類に応じた労働衛生管理について、整理したものを別紙「VDT作業の作業の種類に応じた労働衛生管理の進め方」として示すので参考とされたい。
ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機エレクトロ・ルミネッセンス・ディスプレイ(有機EL)、プラズマ・ディスプレイ、蛍光表示管ディスプレイ、発光ダイオード・ディスプレイなどがある。
VDT機器を使用する者については、一般正社員、パートタイマー、派遣労働者、臨時職員等の就業形態の区別なく、作業者がVDT機器を使用する場合はすべて本ガイドラインの対象とする。
近年、在宅ワーカーが自宅等において行うVDT作業等が増加しつつあるが、これらの場合についても、できる限り本ガイドラインに準じて労働衛生管理を行うよう指導することが望ましい。
なお、在宅ワーカーとは、情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等を行う在宅形態での就労のうち、主として他の者が代わって行うことが容易なものを行うものをいう。
「3 作業環境管理」について
作業環境管理においては、本ガイドラインに掲げる事項のほか、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」(平成4年7月1日付け労働省告示第59号)を参照し、作業者が快適に作業を行うことのできる職場環境の整備を図ることが望ましい。
(1)照明及び採光
イ | 室内の照明及び採光については、明暗の対照が著しくなく、かつ、まぶしさを生じさせない方法によらなければならない。(事務所衛生基準規則第10条第2項参照) |
ロ | 「ディスプレイ画面上における照度」とは、ディスプレイ画面から発する光の明るさのことではなく、ディスプレイ画面に入射する光の明るさをいう。
反射型液晶ディスプレイについては、画面が暗いと見にくいので、一般に、より高い照度が必要となる。 「書類上及びキーボード上における照度」とは、書類やキーボードなどに入射する光の明るさをいう。 「ディスプレイ画面の明るさ、書類及びキーボード面における明るさと周辺の明るさとの差はなるべく小さくすること。」とは、瞳孔は明るさに応じてその大きさを調節しており、一般的に、ディスプレイ画面や書類・キーボード面と周辺の明るさの差が大きいと眼の負担が大きくなるので、なるべく明るさの差を小さくすべきであるという趣旨である。 |
(2)グレアの防止
イ | グレアとは、視野内で過度に輝度が高い点や面が見えることによっておきる不快感や見にくさのことで、光源から直接又は間接に受けるギラギラしたまぶしさなどをいう。 VDT作業従事者がディスプレイを注視している時に、視野内に高輝度の照明器具・窓・壁面や点滅する光源があると、まぶしさを感じたり、ディスプレイに表示される文字や図形が見にくくなり、眼疲労の原因となる。 また、これらがディスプレイ画面上に映り込む場合も同様である。従って、ディスプレイを置く位置を工夫して、グレアが生じないようにする必要がある。 映り込みがある場合には、ディスプレイ画面の傾きを調整することなどにより、映り込みを少なくすることが必要である。 |
ロ | 反射防止型ディスプレイは、表面につや消し処理を行って散乱性をもたせたものと、多層薄膜コーティングにより反射そのものを減らすものとに大別されるが、前者は外光が明るすぎると、画面全体が光るようになり、後者は、汚れやすいという欠点があるので、注意を要する。 |
ハ | 照明器具のグレア分類としては、(社)照明学会学会技術規格JIES-008(1999)「屋内照明基準」において、分類が示されている。同基準においては、G分類(視特性からみたグレア規制のための照明器具の輝度の制限)とV分類(VDT画面の反射グレア防止のための照明器具の輝度の制限)の2種類の分類があり、VDT作業が行われる室の場合には、V分類の使用が優先される。 V分類においては、照明器具の輝度の制限がV1、V2、V3に分類して行われている。 V1の照明器具は、グレア対策が最も十分施されており、VDT画面の反射防止処理の有無にかかわらず、映りこみはほとんど生じない。 VDT専用室においては、VDT画面に反射防止処理がされていない場合はV1、反射防止処理がされている場合はV2を選択するよう、基準が示されている。 また、一般の事務室においては、VDT画面に反射防止処理がされていない場合はV2、反射防止処理がされている場合はV3を選択するよう、基準が示されている。 ただし、これらは画面が概ね鉛直の場合に有効であり,画面を鉛直よりも大きく傾ける場合には、間接型照明の使用が望ましい。 |
ニ | その他の映り込みを少なくする方法としては、フィルターを取り付ける等の方法があるが、フィルターの性能によっては、表示文字の鮮明度が低下したり、フィルター自身の表面が反射したりすることがあるため、反射率の低いものを選ぶ等の注意が必要である。 |
(3)騒音の低減措置
イ | このような騒音の低減を図るためには、しゃ音及び吸音の機能をもつつい立てで取り囲む、機器そのものを消音ボックスに収納する、床にカーペットを敷く、低騒音型機器を使用するなどの方法もある。 |
ロ | VDT作業を行う場所付近で、騒音を発する事務用機器を使用する場合には、必要に応じ、騒音伝ぱの防止措置を講じること。(事務所衛生基準規則第11条及び第12条参照) |
(4)その他
事務所の換気、温度、湿度及び空気調和(空調)については、事務所衛生基準規則第3条から第5条までを参照されたい。
また、休憩等のための設備については、事務所衛生基準規則第19条から第21条までを参照されたい。
「4 作業管理」について
VDT作業には多くの種類があり、それぞれ作業形態や作業内容は大きく異なっている。また、VDT作業が健康に及ぼす影響は非常に個人差が大きいので、画一的な作業管理を行うことは好ましくない。
従って、各事業場においては、個々の作業者の特性に応じたVDT機器、関連什器等を整備するほか、VDT作業の実態に基づいて作業負担の少ない業務計画を策定すること等、こまかく配慮することが望ましい。
(1)作業時間等
イ | 一日の作業時間 一日の作業時間については、これまでの経験から、職場においてVDT作業に関して適切な労働衛生管理を行うとともに、各人が自らの健康の維持管理に努めれば、大多数の労働者の健康を保持できることが明らかになっており、他方、各事業場におけるVDT作業の態様が様々で作業者への負荷が一様でなく、また、VDT作業が健康に及ぼす影響は非常に個人差が大きいこともあり、ガイドラインでは上限を設けていない。 しかしながら、管理者は、適切な作業時間管理を行い、VDT作業が過度に長時間にわたり行われることのないようにする必要がある。 特に、単純入力型及び拘束型の連続VDT作業については、一般に自由裁量度が少なく、疲労も大きいため、それ以外の作業を組み込むなどにより、一日の連続VDT作業時間が短くなるように配慮する必要がある。 また、CAD、プログラミング等の技術型作業をはじめ、対話型作業等においては、作業者の自主的時間管理が重要であるが、極めて長時間の作業となる場合があるので、管理監督者がその点を留意し指導すること。 | ||||
ロ | 一連続作業時間及び作業休止時間
| ||||
ハ | 業務量への配慮 個々の作業者の能力を超えた業務量の作業を指示した場合、作業者は作業を休止したくても休止することができず、無理な連続作業を行わざるを得ないこととなるため、業務計画を策定するに当たっては、無理のない適度な業務量となるよう配慮する必要がある。 |
(2)VDT機器等
イ | 機器の選択 VDT機器には、用途に応じ、デスクトップ型、ノート型、携帯情報端末等の様々な種類があり、その特性等も異なることから、労働者への健康影響を考慮し、作業者が行う作業に最も適した機器を選択し導入する必要がある。 一般に、デスクトップ型は、一定の作業面の広さが必要であるが、キーボードが大きく、自由に移動させることができるため、作業姿勢も拘束されにくく、長時間にわたり作業を行う場合等に適している。 また、ノート型は、キーボードが小さく、自由に移動させることができないため、作業姿勢も拘束され易いが、作業面の広さは少なくてすむため、作業面の広さが限られている場合等に適している。 ただし、作業の内容、作業量等のその他の考慮すべき事項も考えられるため、VDT機器の導入に当たっては、必要に応じ関係作業者等に意見を聞くことが望ましい。 | ||||||||||||
ロ | デスクトップ型機器
| ||||||||||||
ハ | ノート型機器 ノート型機器には、携帯性を重視した設計(画面が小さい、キーストロークが短い、キーピッチが小さいなど)のものがあり、それらを長時間のVDT作業に使用する場合には、人間工学上の配慮が必要となる。 小さいキーボードを、手が大きい作業者が使用する場合には、連続キー入力作業で負担が大きくなることがあり、小型の画面は文字が小さく視距離が短くなりすぎる傾向がある。また、キーボードとディスプレイが一体となった構成は、作業者に特定の拘束姿勢を強いることや過度の緊張を招くことなどがあるため、使用する作業者や目的とするVDT作業に適した機器を使用させる必要がある。 多くのノート型機器は外付けのディスプレイ、キーボード、マウス、テンキー入力機器などを接続し、利用することが可能であり、小型のノート型機器で長時間のVDT作業を行う場合には、これらの外付け機器を利用することが望ましい。 ノート型機器の使用時の留意点については、日本人間工学会の「ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン」が参考になる。 | ||||||||||||
ニ | 携帯情報端末 労働形態の多様化とIT(情報技術)化の進展にともない、移動中でも使用できる携帯情報端末を用いる機会が増している。モバイルコンピューティングやインターネット等に携帯情報端末を活用している場合も多い。 携帯情報端末は、小型化と携帯性を重視して設計されているため、キーボード等入力機器の操作性やディスプレイの表示性能などは、職場や在宅ワーク等において長時間に渡り使用するには必ずしも十分とはいえない。 これら携帯情報端末の人間工学上の特徴を踏まえ、ガイドラインでは長時間のVDT作業に使用することはできる限り避けることが望ましいこととした。 | ||||||||||||
ホ | ソフトウェア
| ||||||||||||
ヘ | 椅子 個人専用の椅子については、作業者の体形、好み等に合わせて適切に調整できるものがよい。 複数の作業者が交替で同一の椅子を使用する場合は、作業者一人一人が自分の体形に合った高さに容易に調整できるよう、ワンタッチ式など調整が容易なものがよい。 床からの座面の高さの調整範囲は、大部分の作業者の体形に合わせることができるよう、37cm〜43cm程度の範囲で調整できることが望ましい。 ここでいう床から座面の高さとは、実際に座って、クッション材が2cm〜3cm圧縮された状態の座面の高さのことである。市販されている椅子の座面高の表示は、クッション材が圧縮されていない外形表面の高さが一般的であるので注意を要する。 床から座面の高さの調整範囲は、広い程、多くの作業者に適応できるが、あまりに広い調整範囲を有する椅子は大型になりがちで適当でないので、ここでは実用的な調整範囲を示した。 椅子の調整範囲で調整できない場合については、フットレストの利用等必要に応じて対応することが望ましい。 | ||||||||||||
ト | 机又は作業台 (ハ)のaで、高さ調整ができない机又は作業台を使用する場合は、床からの高さは概ね65cm〜70cm程度のものを用いることが望ましい。65cm及び70cmがそれぞれ女性及び男性が使用する場合に必要な高さのほぼ平均値となるためである。 (ハ)のbで示した、高さ調整が可能な机又は作業台を使用する場合の調整範囲は、大部分の作業者の体形に合わせることができるよう、床からの高さは60cm〜72cm程度の範囲で調整できることが望ましい。 床からの高さの調整範囲は、椅子と同様に実用的な調整範囲を示した。調整範囲で調整できない場合については、椅子の場合と同様、必要に応じて対応することが望ましい。 高さ調整が可能な机又は作業台を使用する場合には、椅子の高さを最適に調整した後、机の高さを調整するとよい。 大型ディスプレイを使用する場合は、十分な奥行きの机を使用し、作業者の体にねじれを生じさせないよう、またディスプレイを見上げないように、ディスプレイを配置すること。また、脚の周囲の空間に荷物等があり、脚が窮屈な場合は、取り除くこと。 椅子、机又は作業台に関する人間工学上の要求事項の詳細は,JIS Z8515を参照されたい。 |
(3)調整
VDT作業は、自然で無理のない姿勢で行うことが重要であるため、極端な前傾姿勢やねじれ姿勢を長時間継続させないよう、機器の位置を調整させる必要がある。
イ | 作業姿勢 (イ)において、必要に応じ、足台を備えることとしたのは、足台は、足を疲れさせないだけでなく、背中や腰の疲れを防ぐ効果ももつためである。 |
ロ | ディスプレイ (イ)において、ディスプレイ画面と眼の視距離をおおむね40cm以上としたのは、眼に負担をかけないで画面を明視することができ、かつ、眼とキーボードや書類との距離の間に極端な差が生じないようにするためである。
(ロ)については、ディスプレイが大画面の場合は、画面の上端が眼の位置よりも上になる場合があるが、ディスプレイをパソコン本体の上に置かないようにすること等により、できる限り眼の高さよりも高くならないようにすることが望ましいことを示したものである。
(ハ)において、ディスプレイ画面とキーボード又は書類を眼からほぼ等しい距離にすることとしたのは、VDT作業における眼球運動から生じる眼疲労(視線を移動させるたびにいちいち焦点調節を行っていると眼疲労を招く。)を軽減するためである。
(ニ)の調整では、個々の作業者ごとに好ましい位置、角度、明るさ等が異なることから各自が調整する必要があることを徹底すべきである。
(ホ)の文字の大きさは、視距離によって最適な大きさが変動するため、視角(単位は分:1度の60分の1)でその要求値が決められている。 |
ハ | 入力機器 多くのVDT機器において、マウス等のポインティングデバイスのポインタの速度、ダブルクリックのタイミング等を変更することができるので、これを活用し、作業者の技能、好み等に応じた適切な速度に調整する必要がある。 |
ニ | ソフトウェア 最近のVDT機器はソフトウェアによって、種々の条件の設定・調整が可能であるが、それらの方法が知られていないために、適切でない条件で使用している例が少なくない。 ここに掲げているようなソフトウェアによる設定を徹底することによって、VDT作業の改善を図ることが可能であるため、作業者への教育などで周知する必要がある。 画面の見やすさと関連する代表的な例として、表示容量(1024×768画素等)の設定がある。多くのディスプレイは、画面サイズ等で最適な表示容量が存在するため、変更できるからといって、むやみに設定を変更すると(例えば大表示容量1600×1200画素等)文字等が読みにくくなる場合があるので注意を要する。 |
「5 VDT機器等及び作業環境の維持管理」について
(1)VDT機器等及び作業環境を良好に維持管理するには、点検項目を定め、定期的に点検、清掃等を実施する必要があるので、本ガイドラインでこの趣旨を明確にしたものである。
(2)点検及び清掃を実施する上での留意事項を次に掲げるので、参考にされたい。
イ | 照明、採光、グレア防止措置などが適切に設定されていたとしても、作業場所の変更などにより、当初の条件が満たされなくなることがあるので、基準に適合しているか否かの点検を行う際、留意すること。 |
ロ | ディスプレイ画面やフィルタには、ほこりや手あかが付着して、画面が見えにくくなったり、室内の湿度が低下すると静電気発生の原因となることもあるので、VDT作業従事者の日常業務の一環として、湿った布等で画面をきれいにすること。 また、マウスはゴミ等の付着によるカーソル移動の困難をなくすように適切に清掃を行うこと。 |
ハ | 日常の清掃を行う際に、常にVDT機器や机又は作業台、さらには作業場所の整理整頓に努めるとともに、これらを適正な状態に保持すること。 |
「6 健康管理」について
従来の指針においては、健康管理の対象をVDT作業に常時従事する労働者としていたが、本ガイドラインでは、VDT作業に従事する作業者を対象とし、健康管理の対象となる作業者の範囲をより広くした。
(1)健康診断
イ | 配置前健康診断 健康診断の対象者として、VDT作業に常時従事する作業者のみでなく、一般のVDT作業に従事する作業者も含めることとした。 ただし、新たに作業区分Bに該当することとなった作業者については、筋骨格系に関する検査は、作業の内容、問診の結果等を踏まえ、医師の判断により、必要と認められた場合に行うこととした。 なお、a、b及びcの調査並びにd及びeの検査の各検査項目については、それぞれの実施日が異なっても差し支えない。
| ||||||||||||||||||||||||||||
ロ | 定期健康診断 作業区分Bの作業者についての眼科学的検査及び筋骨格系に関する検査は、作業の内容、問診の結果等を踏まえ、医師の判断により、必要と認められた場合に行うこととした。 なお、a、b及びcの調査並びにd及びeの検査の各検査項目については、それぞれの実施日が異なっても差し支えない。
| ||||||||||||||||||||||||||||
ハ | 健康診断結果に基づく事後措置
|
(2)健康相談
VDT作業における健康上の問題は、健康康診断時以外の日常で発生することも多いので、作業者が気軽に健康等について相談し、適切なアドバイスを受けられるように、健康相談の機会を設けることが望ましい。
(3)職場体操等
静的筋緊張や長時間の拘束姿勢、上肢の反復作業などに伴う疲労やストレスの解消には、アクティブ・レストとしての体操やストレッチを適切に行うことが重要である。また、就業中にも背伸び、姿勢の変化、軽い運動等を行うように指導すること。
「7 労働衛生教育」について
VDT作業に係る労働衛生教育の実効性をもたせるためには、各事業場において定めたVDT作業に関する労働衛生管理基準が職場に適用できるような条件整備に努めるとともに、次に掲げる事項を参考にして、作業者の教育訓練を実施することが重要である。また、手法及び実施時期を考慮のうえ、効果的な実施方法を考える必要がある。
(1)教育及び訓練の時期
VDT機器及び情報処理技術が日進月歩であることに鑑み、VDT機器の導入時、機器又は作業環境の変更時のほか、定期的に教育を実施することが望ましい。また、新たにVDT作業に従事する作業者に対しては、配置前に、作業の不慣れによる心身への負担の軽減を図るため、その難易度に応じ、作業の習得及び習熟に必要な訓練を行う。
(2)留意事項
教育及び訓練を効率よく実施するため、衛生管理者及び作業者を直接管理する者をはじめ、VDT作業に係る労働衛生教育を行う講師等には、安全衛生団体等が行うインストラクター講習を修了した者による講習を受けさせることが望ましい。
「8 配慮事項等について」
(1)高齢者に対する配慮事項等
見やすい文字の大きさや作業に必要な照度等は、作業者の年齢により大きく異なる。 多くのVDT作業の場合、文字サイズ、輝度コントラスト等の表示条件は使用する機器の設定により調整することが可能であり、作業者にとって見やすいように適合させることが望ましい。 照明機器等も、天井に配置した全体照明とは別に必要となる場合は、局所に作業用照明機器を配置することにより個人の特性に配慮した照度条件を実現することが可能となる。 作業時間、作業密度、教育、訓練等についても、高齢者の特性に適合させる配慮が望まれる。
(2)障害等を有する作業者に対する配慮事項
VDT作業は、筋力や視力等に障害があっても、作業できるように、種々の支援対策が準備されている。このような支援機器や適切な作業環境、作業管理によって、障害を有する場合でも、VDT作業を快適に行うような措置を講じることが望ましい。
(3)在宅ワーカーに対する配慮事項
VDT機器等の情報通信機器を活用している在宅ワーカーの場合、作業机、照明環境、作業時間等について、労働衛生管理面からは必ずしも適切でないことがある。眼疲労、肩こり、腰痛など在宅ワーカーの身体的自覚症状の訴えが多いことも調査で示されている。
仕事を在宅ワーカーに注文する注文者は、VDT作業を行う在宅ワーカーの健康を確保するため、在宅ワーカーに対して本ガイドラインの内容を提供することが望ましい。このことにより、在宅ワーカーは、VDT作業に係る作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育等に関する情報を得ることができる。
なお、注文者には、自らの仕事を注文する者だけでなく、他者から仕事を請け負い、これを個々の在宅ワーカーに注文する者も含まれる。
作業区分 | 作業の種類 | 作業時間 | 作業の例 | 作業の概要 | 労働衛生管理の進め方 | |||
作業環境管理 | 作業管理 | 健康管理 | 労働衛生教育 | |||||
A | 単純入力型 | 1日4時間以上 | データ、文章等の入力 | 資料、伝票、原稿等からデータ、文章等を入力する。(CADへの単純入力を含む。) | 「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の本文(以下「本文」という。)の3及び5により環境整備を行うこと。 | 「本文」の4により作業管理を行うこと。 なお、1日の作業時間については、(1)のイの(イ)によること。 また、一連続作業時間及び作業休止時間については、(1)のロの(イ)によること。 |
「本文」の6により健康管理を行うこと。 なお、配置前健康診断については、(1)のイの(イ)によること。 また、定期健康診断については(1)のロの(イ)によること。 |
「本文」の7により労働衛生教育を行うこと。 |
拘束型 | 受注、予約、照会等の業務 | コールセンター等において受注、予約、照会等の業務を行う。 | ||||||
B | 単純入力型 | 1日2時間以上4時間未満 | 単純入力型の業務 | 単純入力型の業務を行う。 | 「本文」の3及び5により環境整備を行うこと。 | 「本文」の4により作業管理を行うこと。 なお、1日の作業時間については、(1)のイの(ロ)によること。 また、一連続作業時間及び作業休止時間については、(1)のロの(イ)によること。 |
「本文」の6により健康管理を行うこと。 なお、配置前健康診断については、(1)のイの(ロ)によること。 また、定期健康診断については、(1)のロの(ロ)によること。 |
「本文」の7により労働衛生教育を行うこと。 |
拘束型 | 拘束型の業務 | 拘束型の業務を行う。 | ||||||
対話型 | 1日4時間以上 | 文章、表等の作成、編集、修正等 | 作業者自身の考えにより、文章の作成、編集、修正等を行う。 | 「本文」の4により作業管理を行うこと。 なお、1日の作業時間については、(1)のイの(ロ)によること。 また、一連続作業時間及び作業休止時間については、(1)のロの(ロ)によること。 |
||||
データの検索、照合、追加、修正 | データの検索、照合、追加、修正をする。 | |||||||
電子メールの受信、送信 | 電子メールの受信、送信等を行う。 | |||||||
金銭出納業務 | 窓口等で金銭の出納を行う。 | |||||||
技術型 | プログラミング業務 | コンピューターのプログラムの作成、修正等を行う。 | ||||||
CAD業務 | コンピューターの支援により設計、製図を行う。(CADへの単純入力を除く。) | |||||||
監視型 | 監視業務 | 交通等の監視を行う。 | ||||||
その他の型 | 携帯情報端末の操作、画像診断検査等 | 携帯情報端末の操作、画像診断検査等を行う。 | ||||||
C | 単純入力型 | 1日2時間未満 | 単純入力型の業務 | 単純入力型の業務を行う。 | 必要に応じ、「本文」の3及び5に準じて環境整備を行うこと。 | 必要に応じ、「本文」の4に準じて作業管理を行うこと。 | 「本文」の6により健康管理を行うこと。 なお、配置前健康診断については(1)のイの(ハ)によること。 また、定期健康診断については(1)のロの(ハ)によること。 事後措置、健康相談、職場体操等については、必要に応じ行うこと。 |
「本文」の7により労働衛生教育を行うこと。 |
拘束型 | 拘束型の業務 | 拘束型の業務を行う。 | ||||||
対話型 | 1日4時間未満 | 対話型の業務 | 対話型の業務を行う。 | |||||
技術型 | 技術型の業務 | 技術型の業務を行う。 | ||||||
監視型 | 監視型の業務 | 監視型の業務を行う。 | ||||||
その他の型 | その他の型の業務 | その他の型の業務を行う。 |
注:1 | 各「作業の例」及び「作業の概要」は、作業を分類する場合の目安となるよう、現在、行われている典型的な作業について示したものであり、これ以外の作業の場合は、職場の作業実態に応じ、最も類似の作業の種類に分類し、労働衛生管理を進めること。 |
2 | 単純入力型とは、すでに作成されている資料、伝票、原稿等を機械的に入力していく作業をいう。 |
3 | 拘束型とは、コールセンター等における受注、予約、照会等の業務のように、一定時間、作業場所に在席するよう拘束され、自由に席を立つことが難しい作業をいう。 |
4 | 対話型とは、作業者自身の考えにより、文章、表等を作り上げていく作業等をいい、単に入力作業のみを行う者は含まない。 |
5 | 技術型とは、作業者の技術等により、コンピューターを用い、プログラムの作成、設計、製図等を行う作業をいい、CAD業務等において、主に機械的に入力する作業を行う場合は、単純入力作業型に分類すること。 |
6 | 監視型とは、交通等の監視の業務のように、常にディスプレイに表示された事項、画像等を監視する必要のある作業をいう。 |
7 | その他の型とは、携帯情報端末の操作、画像診断検査等の業務のように、ディスプレイを備えた機器を操作する必要のある各種の作業をいう。 |
8 | 監視業務、携帯情報端末の操作、画像診断検査及びディスプレイを備えた機器を使用するその他の業務については、事務所以外の場所で行われる場合が多いが、その場合であっても、できる限りガイドラインに準じて労働衛生管理を行うことが望ましいこと。 |
9 | 作業区分に際して、一人の作業者が複数の種類の作業を行う場合は、それぞれの作業時間を合計した時間がどの作業区分に該当するかにより判断すること。 なお、一人の作業者が、「単純入力型」と「対話型」のように、作業区分の分類を決定する作業時間が異なる複数の作業を行う場合は、行う作業時間が多い方の作業の種類で判断すること。 |
10 | 1日のVDT作業時間が時期により変動する場合は、平均値をとり平均時間がどの作業区分に該当するかにより判断すること。 |