DEATH NOTE×地獄少女
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―――キラの賛同が多くなってきた世界。
そのキラの正体である夜神月は、ある日DEATH NOTEと呼ばれる不気味なノートを拾ってしまう。
これはノートに名前を書いた人間は死ぬというノートであった。月はTV中継されている、
殺人犯の名前を書いてたみた。約40秒後、その男は死んでしまった。
その後ノートを落とした死神界から来たという死神のリュークが現れ、ノートを使用するか、
破棄するかの選択に迫られる。そこで月はノートを使い、悪人共を駆逐していき、
正しいものだけが世界で生きていけるような社会を形成する新世界の神となることを決意した。
月が殺人犯を殺し続け、やがてその状態が『キラ』という形でネットなどで崇められていった。
一方、この現状に苦悩していたICPOは探偵『L』にキラ事件を依頼する。
こうしてキラとLの権謀術数渦巻く戦いが始まった。
だが日本では問題となっている事件がもう一つあった。
『地獄通信』と呼ばれる存在である。これは午前0時にネット上の地獄通信のサイトに
アクセスし憎んでいる相手の名前を書き込み、送信すると『地獄少女』が現れ、
相手を地獄に落とし恨みを晴らしてくれるという内容だった―――。
「リューク。」
「なんだ?」
「これしってるか?」
月はPCに写し出されたサイトを見せた。
「知らないな…なんだこれは?」
「今キラと同様、社会問題になっている事件さ。ここに恨んでいる相手の名前を書き込むと
地獄少女という者が相手を地獄に落としてくれるらしい。」
「どうせ流行っているガセネタだろ?」
「いや、実際に失踪者がいる。ここで興味深いのが失踪した人間が
いじめ、ストーカー、家庭内暴力などを行っていた者たちなんだ。
警察は以前の被害者に事情聴取をしてみたが、
皆『何も知らない』『会いたくない』または『ネットに名前を書き込んだだけ』の一言だ。
そして警察も失踪者に関しての証拠は一切見つかっていない。今までで一度も。
サイト元も特定できていないし、なんたってこの僕も分からないんだ。」
「おもしろいな…。」
「問題はどうやってこんな大多数の人間を失踪させているのかだ。
もしかして僕の他にノートを拾ったやつがいるのか…しかし。」
「なんだ?」
「名前だけでは相手は殺せない…ならば顔写真が必要なはずだ。
問題は被害者が、このサイトに顔写真を載せる事に気付くかだ。」
「どういう意味だ?」
「このサイト、『あなたの恨み晴らします』しか文字が書かれていない。
そして噂になっている『憎んでいる相手の名前を書き込み』という煽りだけでは
普通は名前しか書かないだろう。何故、このような効率の悪い方法で裁いているんだ?
しかもこの事件は、徐々にだが肥大化している。」
「住所とか特定して色々調べてんじゃねーの?」
「だからそれが矛盾なんだよ。何故そこまでリスクを背負う必要があるんだ?
顔写真を見て名前をノートに書き込む、それだけじゃないか。
『サイトに顔写真を載せて送ってください』とでも掲載すれば
分かりやすいし、殺害の効率も高い。」
「クック…その謎を解く方法は簡単だぞ、月。」
月はすかさず解答した。
「やって欲しいのか?リューク。」
「ああ。面白そうだ。」
「………。」
月は地獄通信に「咎死四誌比呂」と書き込んだ。殺人犯の名前である。
一方、リンド・L・テイラーの死によってキラ事件が明らかになり、
これにより日本に来訪したLも地獄通信事件に移行を示していた。
―――ある女子中学生たちが談話し下校していた。
「じゃねっ。真由美。」
「うん、バイバイ。」
真由美と呼ばれた少女は、ごく普通の生徒である。
唯一あの事件を除いては…。
真由美が家に入ろうとしたとき、後ろから声が聞こえた。
「…橋本真由美さんですね?私、連続失踪者特別捜査本部のシロタ=D=コンソメと申します。
率直に申し上げます。あなたから地獄通信についてお話頂きたい。」
「…!」
少女は硬直した。何故なら、彼女は以前自分をいじめた人物の名前を、
地獄通信に書き込んだからである。彼女は焦燥した。
「し、知りません…っ。」
「知られたくないのも無理はありません。しかし、同時刻あなたの通う中学校で、
あなたと黒田亜矢さんを見たという情報は決定的なんです。
そして黒田さんはそこから忽然と失踪した。
しかし私共はあなたが犯人だとは指名していません。
まだ犯人は別にいます。」
「本当に私から情報を聞くだけですか…?」
「はい。それにこれはLの指示でもあります。」
「えっ…!も、もしかしてあのキラ事件をTV中継した、あの名探偵の人…!?」
「はい。」
「…わかりました。とりあえずここで話すより…家に上がってください。」
「ありがとうございます。」
真由美の家には誰もいなく、重大な会話をするにはちょうどよかった。
「待っていてください。今紅茶淹れますから。」
「お気を使って頂きありがとうございます。しかし、早々に聴取したいので…。」
「あ、はい…分かりました。」
「まずは先に謝っておきます。」
シロタという警察官は手帳を取り出した。
「FBI捜査官…ですか?」
「はい、すいません。キラ事件と地獄通信事件、両方の事件に関わらなければいけないので
偽名を使わせていただきました。私はFBIのレイ=ペンバーと申します。
早速ですが、地獄通信の経緯についてお話頂きたい。」
「…発端はお気付きのとおり、黒田さんからのいじめでした。最初は我慢していたのですが、
徐々にエスカレートしていき、もう耐えられないという状況でした。その時地獄通信の噂を聞き
半分冗談で、そして恨みを込めて黒田さんの名前を書き込みました。
でも…状況が変わらず、耐えられなくなった私は自暴自棄に飛び降り自殺を覚悟しました。
そしてそのとき…地獄少女が現れたんです。」
「…地獄少女の正体は?」
「…黒いセーラー服を着た、普通の少女です。長くて綺麗な黒髪が印象的でした。
彼女は『閻魔あい』…そう名乗りました。そして彼女に渡された紐の付いた黒いわら人形…
それを引けば相手を地獄に流してくれると言ってました…。」
「引いてしまったんだね。」
少女は頷いた。そして震え、泣いていた。
この年頃の子は焦燥すると物事を深く考えず、
衝動的な行為を行ってしまう。そして罪の意識を感じてしまったからである。
「…だが、君のせいではない。
悪は地獄少女で、君はその簡易的な誘惑に、
誘われてしまっただけだ。」
レイはハンカチーフを差し出し、同時にこの出来事について考えた。
地獄少女とは何者か、と。
「…真由美さんは、地獄少女の正体はキラだと思いますか?」
「……違うと思います。あくまで地獄少女は受動的です。
こちらから申し出ないと動きません。対するキラは…
自分自身の意思で行動しているようにみえます。
ただ…なぜキラはあんな簡単に人を殺せるのか…何故…。」
「そうです。キラと地獄少女の共通点はアリバイを残していないこと。
相違点はキラは積極的であり地獄少女は消極的。それにおかしいことがある。
地獄少女側にはこんなにも証拠があるのに未だ正体を掴めていない。
彼女は…閻魔あいと名乗る少女はデコイでしょう。」
「デコイ…?」
「おとりってことです…少女1人では犯行は難しい。」
真由美は具体的な出来事を言おうと思ったが、思いとどまった。
何故ならそのことは余りにも非現実的であったからである。
「あの、私の言ったこと…信じてます?」
「信じてますよ。他の被害者の人たちも全く同じことを述べていました。
全員『地獄少女は閻魔あい』と。真由美さん…他に知っていることは?」
「特に…ないです。」
「わかりました。ご協力頂き、ありがとうございました。」
レイが立ち去ろうとしたそのとき、真由美は問いかけた。
「あ、あの…刑事さんはキラはなんであんな事やってると思いますか…?」
「私は好き勝手に殺人を犯してると思いますね…。」
「…私は…ちょっとそうは思えません。キラは殺人犯だけを対象にしているから、
別の意味で救世主なのではないかと…思います。」
「…いや、キラは悪だ。幾ら殺人犯でも、人道というものがある。
キラにはそれが欠如している。これは極端な無差別的殺人だ。」
「でも!殺された人の遺族の人達、友達、恋人はどうなるんですか?
大切な人は一生帰ってこないのに、殺した人間は生きている…。
そんな不平等があるから、キラは現れたんだと思います。」
「………。真由美さん、何時かあなたにも分かる時が来る。
キラはエゴだと。衝動的な犯行ではなく計画的な犯行だ。
そしてあなたはまだ若い。将来様々な思想が交錯する…その中で決定すればいい。
だが我々、そしてLが行っている行動は正義だと信じている。」
「…そうですよね。私みたいな中学生の考えは何もかも中途半端…
ただ、観ているだけですから…軽はずみで口走りましたね。」
「いや、それが普通ですよ。何が正義で何が悪かは将来世間や思想家が決めればいい。」
「はい…勉強になりました。刑事さん。」
レイは橋本真由美の家を去り、聴取した事件の内容を警視庁に報告した。
そしてこの事件内容はワタリを通してLに伝わった。
「L。」
「どうした、ワタリ。」
帝東ホテルにてLはキラ事件と地獄通信について攻略していた。
世界的に広がっているキラ事件を優先としているが、
日本に来てからはついにL自身が地獄通信の件に触れてきた。
Lは既に地獄通信に関しての実験をしている。
死刑囚を使い、そこからカメラで監視していたのである。
しかし地獄少女は現れなかった…それはそうだ。
牢屋に閉じ込められては来るどころか、殺害も不可能だ…。誰もがそう思うであろう。
だが、地獄少女の根本的な考えはまた違う……
そうLは考えていた。
「地獄通信の件に関して、新たな情報が入りました。
しかし、やはりこの情報も従来と全く同じものでした。」
「調査内容を送ってくれ。」
Lはレイと橋本真由美の会話内容を見て考察した。
「…やはりこの事件に関するのは中高生に多いようだ。
問題なのは、地獄通信が何故一部の者にはアクセスできないか…
アクセスできる対象者は恨みを持った人間だけだ…。
そしてアクセスし名前を書き込んでも、地獄少女は現れない…
複数の人間による犯行だろう…。
何者かが状況を把握し、情報を流している。ならば…」
Lはワタリに通信した。
「ワタリ。今から3ヶ月以内に起こった犯罪の軽重問わず、東京都に住む被害者、
そして被害者の家にパソコンがある者を限定に調べて、部屋に監視カメラを付けてくれ。
後は閻魔あいという人物についての詳細を調査してくれ。」
「わかりました。」
以前従来の情報を元に、L自身もアクセスを試みたが繋がらなかった。
これはL自身が恨みの対象とする人物が、いないからだと思われる。
しかし地獄少女を呼び寄せる方法は他にもあると言われている…
月が地獄通信にアクセスしてから三日が経過していた。
しかし月が地獄通信に名前を送信した犯人には未だ変化は無い。
「あれから無いも起こらないな、月。」
「…もう一回、アクセスしてみるか。」
「クク、やけに積極的だな。」
「何故だか分かるか、リューク?キラと地獄少女、根本的には似ている。
それは法的処置がなく人を裁けること…最もキラとはベクトルが違うが。
地獄少女は依頼者の私情、そして完全に受身で活動している。
…だが中高生が頻繁にアクセスしている分、殺人にあう報酬など殆んど受け取っていないか、
タダで行っているであろう…これには尊敬に値する。キラと同じ、アンダーグラウンドの神に近い。
それに殺人方法としてDEATH NOTEを使っている可能性が高い…気になりもするさ。」
「ククク…なるほどね。だが、地獄なんてねーんだがな…。」
「そう言ってたな、リューク。天国や地獄は存在しない…。
まあこれは人々を恐怖心に陥れる、都市伝説の常套句だけどね。
…さて、そろそろ午前0時だ。地獄通信に書き込んでみるか。」
「今度は誰の名前を書き込むんだ?」
「ふふ、まあ観てな。」
月は地獄通信に何かの文字を打ち込み、送信した。
リュークが覗き込むと、こう書かれていた。
『L』と。