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社説:日米株安 不安の連鎖阻止に対策急げ

 世界の株式市場が再び緊迫してきた。23日のニューヨーク市場では、ダウ工業株30種平均が約12年ぶりの水準に落ち込み、07年10月につけた史上最高値からわずか16カ月で半減してしまった。

 それと連動し、24日の東京市場も日経平均株価がバブル経済崩壊後につけた終値ベースでの最安値を一時割り込んだ。同日の安値となった7155円は約26年ぶりの低水準である。韓国など他のアジア市場も、軒並み全面安となった。

 最大の要因は、世界不況の根底にある米国の金融不安に対し、具体的な解決策が示されないことだ。ニューヨーク市場の株安は金融銘柄が主導した。シティグループやバンク・オブ・アメリカといった影響力が大きい金融機関に、政府がどんな支援を行うのかはっきりしないため、市場はいらだちを募らせている。

 米財務省は23日、連邦準備制度理事会(FRB)や他の金融監督当局と異例の共同声明を発表し、市場の不安沈静化を試みた。しかし、金融機関の足元にたまった膨大な不良資産を具体的にどう処理していくのか、どの程度の公的資金が金融機関の資本に注入されるのかが不確かなままでは、市場心理の好転など望みようもない。

 米国内には銀行国有化への根強い抵抗があり、政府は一気に銀行の大株主となるような資本注入に踏み切りづらい。しかし、中途半端な支援では、本当に大手銀行を破綻(はたん)させない覚悟が政府にあるのかといった市場の疑心暗鬼を払しょくできない。米政府は迅速に果敢な行動を取るべきだ。

 一方、いくら米国発の問題とはいえ、自国の株式市場が底なしの下落に見舞われるのを日本政府が傍観していてよいわけがない。相場の急落は特に大量の株式を保有している銀行の経営を直撃し、年度末の企業の資金繰りに支障を与えかねないため、注意が必要だ。

 もちろん、銀行が大量の株式を保有し、相場次第で経営体力や貸し出し余力が左右される構造を変えてこなかった責任は問われる。また、政府や日銀が銀行から株式を買い取る策も、どこまで株価の下支え効果をあげられるのか、不確かだ。

 それでも、株価下落が主導する形で不安の連鎖が深刻化し、景況感が一層悪化したり、あおりを受けて倒産に追い込まれる企業が続出するような事態は避けなければならない。

 民間資金による市場の自律的な反転が望ましいことは言うまでもない。だが投資家がリスクを取ろうとしない総すくみ状態となっている以上、政府や日銀といった公的機関が安全弁の役を担うのは当然だろう。

 長期的な成長戦略が必要なのは間違いないが、同時に、目の前の市場の動揺を沈静化させることにも全力を挙げてもらいたい。

毎日新聞 2009年2月25日 東京朝刊

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