◆竹島の教科書の解説が、なぜ問題なんですか。--神奈川県、E・Oさん(小6)
学習指導要領は、学校で先生が児童・生徒に何を教えたらいいのかを示したものです。それをもとに、どのように教えたらいいのかをもっと具体的に書いたのが解説書です。
なぜ解説書の問題が起きたのかというと、竹島(韓国名・独島)という小さな島が、日本と韓(かん)国(こく)のどちらのものかという問題が解決していないからなのです。
竹島は、島根県隠岐島(おきのしま)の北西の日本海に浮(う)かぶ群島です。江(え)戸(ど)時代の初め、山(さん)陰(いん)地方の漁民は「松島」と呼んでいました。日本は1905年に閣議の決定と島根県の告示により、正式に竹島を日本に組み入れました。「竹島は日本固有の領土」というのが日本の主張です。
しかし、韓国の立場は違(ちが)います。この島を認知したのは韓国の方が先で、日本に組み入れたのは日本が韓国の外交権を奪(うば)ったあとのこと。だから、閣議の決定や島根県の告示は無効--と主張しています。
日本の学習指導要領の解説書には、これまで竹島のことは書かれていませんでした。このため自民党のなかで、「日本固有の領土」ということを、きちんと教えさせるべきだという声が強くなっていました。
今(こ)年(とし)7月に文部科学省が公表した中学校社会科の解説書で、竹島の問題が初めて取り上げられました。「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相(そう)違(い)があることなどにも触(ふ)れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせることも必要」という内容です。
「日本固有の領土」と教えるよう間接的に求めたものですが、怒(おこ)った韓国政府は日本に駐(ちゅう)在(ざい)する大使を一時帰国させたりしました。
それでも9月下(げ)旬(じゅん)には、韓国の首都・ソウルで、日本と韓国の市民がお互(たが)いの国の伝統芸能を披(ひ)露(ろう)する「日(にっ)韓(かん)交流おまつり」というイベントが開かれました。国と国のいがみ合いを超(こ)えて、こうした市民レベルの交流の輪が、もっと広がるといいですね。【論説委員・森嶋幹夫(もりしま・みきお)】
毎日新聞 2008年10月19日 東京朝刊