約4カ月ぶりに阪神取材を体験した。ファンと報道陣の数など、周囲の熱狂ぶりは圧巻…。こんなに大勢の人間に囲まれる選手はさぞ大変だろう、と改めて感じた。
それでも多くの選手が誠意を持ってファンや報道陣に接している。「これも野球選手の大事な仕事だよ」と話す選手もいる。人気球団の選手である宿命を受け入れる姿勢は立派のひと言だ。もちろん真逆のタイプの選手もいる。残念ながら。
沖縄・宜野座キャンプ最終日。キャンプ17日間での収穫&調整具合などを聞いた際に「普通」としか答えない選手がいた。別の聞き方をしても口にするのは「普通」のみ。虫の居所が悪かったのか? 話したくなかったのか? 真相は不明だが、とりあえず人と人との会話はできなかった。
最近オリックスのテクニカル・アドバイザーに就任した野茂英雄氏を取材する機会が多い。マスコミにコメントしないことで有名な野茂氏。だが、話を聞くと「すいません。何もないです」「いや、コメントはできないです」と返答がくる。ノーコメントは貫くが、誠実な“取材拒否”をしてくるわけ。短いが、確かに会話だった。何も話さないなら、こちらの方がよっぽど気持ちがいい。
いろんな記者から何度も同じような質問をされ、ファンには常に笑顔を見せてサインを書き続ける。疲れ果てて、うんざりするのも無理はない。ただ、会話を求めた相手にぶっきらぼうに「普通」と連呼する社会人はいないと思う。話さないならば、話さないなりの対応がある。この取材で、この人も阪神の選手なのになあ…と、無性に寂しい気持ちになった。
もちろん、僕の聞き方が悪かった可能性も高い。同じ質問、当たり前の質問の連続で、選手に不満を抱かせているのかもしれない。反省すべき点は反省したい。礼を尽くした会話、取材の必要性を強く感じる。
森井 智史(もりい・さとし)
1983年(昭和58年)2月24日、埼玉県生まれ。上智大卒。06年4月に入社。現在は運動部阪神担当2年目。大学時代にフライングディスクを使用する『アルティメット』という競技の魅力に取りつかれ、そこからスポーツ関連業界への就職を目指した。22年間にわたって甘い汁を吸い続けた親元を離れ、慣れない関西で一人暮らし中