米国においては、生活習慣や法律制度の違いから、時として、日本人の方々が 刑事事件などに巻き込まれることがあります。日本人の皆様が アメリカ国内において不慮に刑事事件などに巻き込まれないよう注意していただくため、具体的な事例を解説付きで以下に紹介します。
2008年10月27日付けで注意事項を2件追加しました。追加箇所には*印をつけてあります。
Ⅰ 子供をめぐるトラブル
1 . 児童虐待
某日、小学生の子供を連れた邦人女性が近くのスーパーに買い物に入った。
子供が、商品を買ってほしいと言ってねだるので、母親が子供の頭を小突いて叱った。
→他の買い物客が目撃して警察に通報したため、児童虐待容疑で母親が州政府の児童保護局(テネシー州では DCS : Department of Children’s Service と 呼ばれる)の取調べを受けた。
2.児童虐待
某日、幼稚園に通う少女が、父親と一緒にお風呂に入るのがいやだと幼稚園の作文に書いた。
→幼稚園の先生が、児童虐待(性的暴力)容疑者として父親を州政府の児童保護局に通報し、調査活動が行われた。
3.児童虐待
某日、小学生の男子が悪ふざけをしたので父親が注意したら、少年は近くの木に登ったので、父親が少年に対して下りてくるように怒鳴った。
→近所の住民が警察に通報し、父親が児童虐待(心理的威圧)容疑で勾留された。
4. 児童虐待
某日、乳児をお風呂に入れている写真を近所のドラッグストアで現像に出した。
→ドラッグストアが児童に対する虐待容疑で児童保護局に通報し、児童虐待(性的虐待)容疑で調査活動が行われた。
5. 児童放置
某日、日本人の女性が2歳の子供を連れて車でスーパーに買い物に行った際、食料品2品のみを買うだけなので車の中に子供を残して、約10分、車から離れた。
→通行人女性が警察に通報し、児童放置容疑で邦人女性が警察の取調べを受けた。
6. 児童放置
某日、母親が7歳の子供を連れて大型スーパーに買い物に行き、車に戻った際にその店に忘れ物をしたことに気づき、子供を車内に残したまま車から離れた。
→通行人女性が警察に通報し、児童放置容疑で母親が警察の取調べを受けたほか、子供が1ヶ月間、指定の里親に預けられ、親との面会も制限された。
7. 誤解によるトラブル
某日、幼児がいる邦人夫婦がアメリカ人ベビーシッターを雇って、夜、会食に出かけた。
→ベビーシッターが、乳児のおむつを替える際にお尻の蒙古班を見つけて、児童虐待と勘違いし、州の児童保護局に通報したため、子供が収容されそうになった。
解 説
1.アメリカでは日本とは異なり、親が子供を保護する義務が法律によって定められています。
詳しい規定は各州によって異なりますが、一般的に13歳未満の子供を一人だけで家で留守番をさせたり、車の中に放置したり、町を出歩かせたりすることは法律で禁止されています。
テネシー州で児童保護を担当している公的機関は、DCS: Department of Children’s Service です。こうした機関は各州に設置されており、名称がそれぞれ異なりますが、これらの機関は児童虐待・保護懈怠を受けている恐れのある児童についての通報を受け付けています。
各州の児童保護機関は、児童虐待・保護懈怠の可能性のある児童の調査活動を行うほか、強制的に児童を親から隔離して保護を行う権限や児童裁判所に対して、保護者の親権剥奪の訴えを起こす権限も有しています。
2.児童保護局が、児童虐待、保護懈怠の可能性があるために調査に入りますと、被疑者が嫌疑を晴らすためには司法手続きを経る必要があります。従って、嫌疑をかけられた際は直ちに専門の弁護士に相談することが勧められます。
3.児童虐待、保護懈怠の嫌疑をかけられますと、精神的な苦痛に加えて、時間及び金銭などの面においても大きな負担となります。日頃から、日本と米国では制度が異なることを認識し、嫌疑をかけられないよう十分注意する必要があります。
Ⅱ 車の交通違反
1. 飲酒運転
某日夜、邦人男性が飲酒した後、翌日早朝まで知人とマージャンをし、酔いが覚めたと思い、車を運転した。
→蛇行運転を行ったとしてパトカーに止められ、酒酔い運転で逮捕された。
解 説
飲酒運転は日本だけでなく、アメリカでも犯罪と見なされます。
テネシー州では、血液中のアルコール濃度が0.08%以上の場合、酒酔い運転( DUI )として逮捕・勾留されます。そして高額の罰金が課されるほか、免許取消し処分を受けます。また、車両が一時的に没収される可能性もあります。
少し位なら飲んでも大丈夫という安易な考えはやめましょう。
テネシー州での道路交通法上の規定
(1) 雨の日は 日中でもヘッドライトを点灯させなければならない。
(2) 日の出後30分までと、日の入りの30分前 からはヘッドライトを点灯しなければならない。
(3) 一般車両は 踏み切りで一時停止してはならない。
(4) 非常点滅灯をつけた葬儀車列の中に割り込んだり、車列の間を横切ってはならない。
(5) 年1回の車両登録の期限が来たら、郡の登録事務所において登録更新を行い、 ステッカーを張り替えておかなければならない。
(6) 1歳未満の乳児又は体重20パウンド(約9キログラム)以下の乳児は 後部座席に進行方向とは反対向きに設置したチャイルドシートに座らせなければならない。
(7) 1歳以上3歳以下の幼児で、体重20パウンド(約9キログラム)以上の幼児は 後部座席に進行方向向きに設置したチャイルドシートに座らせなければならない。
(8) 4歳以上8歳以下の児童で、身長が4フィート9インチ(約144センチメートル)以下の児童は座席に設置した 児童用簡易シートに座らせたうえ、シートベルトをさせなければならない。
パトカーに停車を命じられた場合の注意事項
- アメリカで、パトカーがランプを点滅させて、あなたの後方についたら、「道路脇に停車しなさい」という意味です。
速やかに道路右端に寄って止まりましょう。
- パトカーに停車を命じられたら、警察官があなたのところに来るまで、じっと待っていなければなりません。
警察官がなかなかパトカーから降りて来ないからといって、車から降りて自分からパトカーに近づいて行ったり、その場から走り去ってはいけません。
停車したら、自分が武器等を持っていないことが示せるように、両手をハンドルの上に置いて待ちましょう。
Ⅲ 家庭内でのトラブル
1.家庭内暴力
某日、日本人の夫婦が自宅で夫婦喧嘩をして、夫が妻に暴力を振るった。妻が憤慨して警察に通報した。
→妻は被害届は出さないと言ったが、家庭内暴力容疑で夫が逮捕された。
解 説
アメリカでは、家庭内暴力は日本と比べ大変深刻な問題となっています。警察に通報された場合は夫婦喧嘩であっても暴力を振るった事実や心理的威圧を与えるような言動があったと認められれば、逮捕される場合があります。また場合によっては、多額の弁護士費用を支払う必要が生じます。そのようなことにならないようにするため、日頃から家庭内においても言動には十分に注意を払う必要があります。
Ⅳ 学校関係のトラブル
1.スクールバスをめぐるトラブル
某日朝、邦人男性が高校生の娘のスクールバスの女性ドライバーに対し、前日の午後、定刻よりも早くスクールバスが学校を出発したことについて、スクールバスの乗降口に2、3歩踏み込んで注意したら、女性ドライバーが怒り出した。
→邦人男性がスクールバスの乗降口に立ちはだかり、女性ドライバーに対して暴力を振るったと当該女性ドライバーが警察に通報し、小暴力容疑で邦人男性が警察の取調べを受けそうになった。
解 説
スクールバスのドライバーに対して何らかの意見、要望があるような場合は、トラブルを防止するため学校のスクールバス運行責任者に連絡するようにしましょう。
Ⅴ 学校内でのトラブル
1.校内での所持品をめぐるトラブル
某日、現地校(ミドルスクール)に通う邦人生徒(14歳)が、インターネットで見つけた爆弾製造法を興味本位で紙片にメモ書きし、学校で持ち歩いていた。
→退学処分になった。
2.教師に対する暴力をめぐるトラブル
某日、現地校(ハイスクール)に通い始めたばかりの邦人生徒(15歳)が、教師の言っていることがわからず、互いに感情的になり、生徒が教師の肩を押した。
→退学処分になった。
解 説
米国の学校では、不法行為に対する処分は厳しく、武器、薬物の所持、教職員に対する暴力行為、施設の損壊行為はもちろんのこと、上記事例のような行為も、学校の安全を脅かす行為とみなされ、退学処分となります。学校においても言動には十分注意する必要があります。
Ⅵ 動物をめぐるトラブル
1. 飼い犬をめぐるトラブル
某日、邦人が飼っている犬を車に乗せて買い物に行き、買い物をしている間、犬を車内に放置した。
→通行人が動物虐待事案として、州の保健所に通報し、事情聴取を受けた。
解 説
飼い犬を車内に放置することにより、車内の温度が上昇し、犬が衰弱死する場合があるため、州によっては動物の車内放置が犯罪となることがあります。このようなトラブルを防止するため、動物の車内放置は行わないようにしましょう。
Ⅶ 公共の場所でのトラブル
1.男女間の口論をめぐるトラブル
某日未明、邦人男性と友人の邦人女性が飲酒した後、繁華街の路上で、些細なことから口論となり、女性が怒り出して、宿泊先ホテルに一人で帰ろうとしたので、男性があわてて、後を追いかけた。
→口論の様子を目撃した通行人が警察に通報し、男性は公共の秩序妨害違反と公務執行妨害で逮捕された(逮捕時に警察官に背後からいきなり取り押さえられたが、警察官と気づかずに抵抗したため、公務執行妨害と捉えられた)。
2.夫婦間の口論をめぐるトラブル
某日、日本の旅行会社の1週間のパック・ツアーで米国内の著名なテーマパークを訪れていた邦人夫妻が、テーマパーク内において些細なことから口論となった。一旦は近くにいた警備員の仲裁で仲直りしたが、同夫婦は再び口論をはじめた。そのうち、妻が怒り出してホテルに戻ろうとしたため、夫が妻の腕をつかんで止めようとした。
→口論の様子を見ていた警備員は、夫が妻の腕をつかんだ行為を見て、夫婦間暴力として警察に通報し、邦人男性は駆けつけた警察官に逮捕された(邦人男性は逮捕翌日に保釈されたが、裁判官から1ヶ月後に米国内で行われる裁判に出頭するよう命じられた)。
解 説
アメリカでは、公共の場所で口論を行ったり、正当な理由もなく大声で騒いだりすると、公共の秩序妨害違反として逮捕される場合があります。暴力行為を行っていない場合でも、粗野な言動によって公共の秩序を乱したとの容疑で逮捕される場合があるので、道路上や飲食店内その他の公衆の面前での言動には十分注意するようにしましょう。
Ⅷ *ハロウィーン時の注意事項
ハロウィーンは子供達が楽しみにしている行事であると同時に危険と隣合わせの部分があります。子供達がハロウィーンを安全に楽しむために下記の注意事項をご参考にしてください。
なお、ハロウィーンは毎年10月31日です。
*1.子供達は夢中になる傾向があるので、転倒や交通事故に注意するよう注意を促す。また、凶器となり得る物や尖った物は持ち歩かせない。
*2.大人と一緒でなければ、勝手に他人の家の敷地内に入らせない。また、家主が敷地内への立入りを拒む気配がある場合は、大人が同伴していても絶対立ち入らない。
*3.家の玄関灯が消えている場合は、家主が在宅であっても敷地内に入らせない(家主がハロウィーンに参加をしないという意思表示や子供達に渡すキャンディー等が全て無くなった場合に玄関灯を消すことが多い)。
Ⅸ *個人売買を仲介するウェブ・サイトをめぐるトラブル
某日、アメリカ国内において売買を仲介するウェブ・サイトを利用して、邦人が不要になった日用品を150ドルで売りたいという広告をメールで出した。後日、買い手が現われ、買い手から予想外に額面が1,000ドルのマネー・オーダーが送られてきた。そのため、メールで買い手に確認したところ、「誤って額面が1,000ドルのマネー・オーダーを送ってしまったので、差額分をパーソナル・チェックで送り返してほしい」との依頼があったので、額面850ドルのパーソナル・チェックを送った。
→その後、邦人の取引銀行から、1,000ドルのマネー・オーダーが現金化できなかったとの連絡があったため、詐欺に遭ったことがわかった。
*解 説
最近、アメリカに住む邦人の方でもウェブ・サイトを利用して、不用品を売買する方が増えているようです。取引き相手とメールのみでのやりとりが行われる場合、取引き相手には匿名性が伴うことになり、場合によっては詐欺の被害に遭うことになります。特に品物代が無料であり、買い手に対して送料の負担のみを求めるケースは、詐欺( Scam )の手口の可能性があります。
また、見知らぬ相手に安易に自分の住所や電話番号を教えることは安全面でのリスクを負うことになります。売買を仲介するウェブ・サイトを利用する際はこれらの点に十分ご配慮されるようお勧めします。