2月24日付 総指摘件数1826件 倫理面から見た2008年の新聞報道 記事・ネット盗用相次ぐ
〈指摘件数〉新聞協会審査室は、一九五一年以来、新聞倫理綱領、新聞広告倫理綱領の精神に照らし、協会会員の紙面に掲載するのは不適当と判断した記事・写真などの件数を「指摘件数」としてまとめている。審査室が指摘を行う際の基準は「性表現の行き過ぎ」が中心。
高水準の前年さらに超え
二〇〇八年中の総指摘件数は、千八百二十六件で、一九八六年以来の高水準だった前年(千六百十四件)をさらに上回った。一件でも指摘を受けた新聞は、夕刊紙二紙とスポーツ紙五紙(即売版)の計七紙で、一般日刊紙は含まれていない。内容的には、性風俗産業で働く女性やアダルトビデオを紹介する写真、イラスト、漫画がほとんどで、とりわけ、性行為や女性の局部・アンダーヘアなど、露骨な性描写が目に付く。
総指摘件数は、五一年に同調査を開始してから、約三十年間は千件を超えることはなかったが、八〇年代に入って二千件台に急増、その後、八七年から二〇〇六年までは、約六百〜千百件で推移したが、〇七年に千六百件台に急増した。過去最高は、一九八二年の二千四百七十六件。
〈記事盗用〉前年に続き、二〇〇八年も記事の盗用が相次いだ。
一月には、読売新聞金沢支局の記者が、インターネット上の情報だけを基に、確認取材をしないまま記事にしたことが発覚。同社は記者を休職一か月の懲戒処分とした。問題となったのは、金沢大学の男性教授らの学歴に関する記事。掲載後、同大から「取材を受けていない」と抗議があった。
十一月、陸奥新報社は、青森県深浦町長選に関する記事で、出馬予定者の抱負などを東奥日報から盗用していたとして同社に謝罪した。記者と社長らを懲戒処分とした。東奥から指摘があった。
十二月、熊本日日新聞社は、〇六年十一月から〇八年十月にかけて夕刊に掲載した医療記事十九本で、NHK出版の雑誌「きょうの健康」からの不適切な転用があったと発表した。執筆した編集委員を降格させたほか、社長ら役員三人の報酬の一部返上、編集局長の解職などの処分を行った。読者から指摘があった。
十二月、ジャパンタイムズのコラムで〇一年四月から〇八年八月にかけ、「読売ウイークリー」や「週刊朝日」「AERA」からの無断転載があったことが、社内からの指摘で判明、同社はコラムを中止し、朝日、読売に謝罪した。
〈ねつ造〉読売新聞東京本社は、青森支局の記者が記事中の談話をねつ造したとして、八月、青森県版におわび記事を掲載。記者を休職三か月、支局長をけん責処分とした。七月に掲載された全日本吹奏楽コンクール青森県大会の開催を報じる記事中、団長のコメントを、インターネット上の情報を基に執筆した。
社内チェック・警告を放置
〈英文サイト〉毎日新聞社は、五月、英文サイト「毎日デイリーニューズ」上のコラム「WaiWai」を、一部不適切な内容が掲載されていたとして削除、六月、経過説明とおわびを紙面に掲載した。また英文毎日編集部長を役職停止二か月とするなど関係者、役員の処分も行った。日本の社会や風俗の一端を紹介してきたが、「低俗すぎる」などの批判や抗議が寄せられていた。掲載時ほとんどチェックされず、社内でも問題の大きさに気付かず、外部からの警告も放置していた。九月、過去三千本近くの記事を無断利用した新聞・出版三十二社に対しても謝罪した。
〈取材申し合わせ〉五月、京都府舞鶴市で府立高校一年の女子生徒が殺害された事件と、七月、東京都八王子市の書店で中央大四年の女子学生が殺害された事件で、それぞれ当該地域の報道関係代表者会は、「節度をもって取材・報道にあたる」ことなどを申し合わせた。
〈第三者機関〉報道で名誉毀損やプライバシー侵害など人権侵害問題が起きた場合に、社の対応や解決手続きが適切だったかなどを検証する第三者委員会は、〇八年六月現在、新聞協会会員社中、三十九社四十一組織ある。(審査室)
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