やはり、日本の国民スポーツは野球だった、と改めて感じた。宮崎で行われていたWBCの日本代表合宿は22日に終わったが、連日4万人を超えるファンが詰めかける大盛況だった。南国とはいえまだ2月。徹夜や早朝からの行列は体にこたえたと思うが、老いも若きも心から楽しんでいる様子がテレビのニュースでも伝わってきた。
同じ日本代表合宿でもサッカーではこうはいかない。ファンどころか、マスコミにも練習を非公開にすることも多い。FIFA世界ランキング37位でW杯はアジア予選を突破できるかどうかだが、こちら野球は連続世界一をかけてのスタート。ファンサービスもしっかりしていて、足が向くのも当然だろう。
先日、与謝野財務・経済財政担当相はGDPの大幅落ち込みについて「戦後最悪。戦後最大の危機」と表現した。3月決算期を迎え経済危機はより深刻化し、リストラも拡大して明日はどうやって生きようか、迷える人々がますます増えることが懸念される。まるで終戦直後のような時代背景。当時も国民を熱狂させたのは野球だった。
赤バットの川上、青バットの大下…。希望を失った時代に人々は野球に復興への光明を見いだした。いまはイチローや松坂をはじめとするスター軍団に、閉塞感打破の期待を託したのだろう。さらに長嶋茂雄氏というかつてのシンボルまでが激励にきたグラウンドで輝きを見せ、輪をかけた。
男性なら、誰もが一度はボールやバットを手にしたことがあるはずだ。そんな野球の国ニッポンの“先祖返り”のような現象。一歩下がってみれば空しさもあるが、たとえ、いっときでも心の中を温めてくれたことは間違いないようだ。(今村忠)