海外で新型インフルエンザに感染した人が帰国して東京都内でウイルスを広げた場合、何の対策もとらなければ首都圏に住む人の半分以上が感染するという分析を、国立感染症研究所の大日(おおくさ)康史主任研究官らがまとめた。国が新型インフル対策の前提として想定する感染率25%以下に抑えるには、全学校を休校にし、出勤する人を4割減らす必要があるという。
国土交通省や東京都でつくる東京都市圏交通計画協議会が、都と神奈川、埼玉、千葉各県、茨城県南部の住民(計3400万人)の移動方法や昼間の所在などを追跡したデータを参考に試算。感染の広がり方を解析した。
海外で新型インフルに感染した会社員1人が帰国して感染を拡大させる想定。感染3日目に東京・八王子の自宅に戻り、4日目に東京・丸の内の勤務先に出社してから発症。病院で新型インフルと診断され、7日目から自治体などの対策が始まるというシナリオ。感染拡大は25日目ごろにピークを迎える。
外出自粛要請などの対策を何もとらなかった場合、通勤や通学などを通じてウイルスが広がり、最終的には首都圏住民の51.6%が感染するとみられる。
保育園から大学まで休校にした場合はわずかに減り、47.4%。休校措置に加えて、全面的に外出自粛を求め通勤人数が4割減った場合、感染率は19.1%に下がる。通勤人数が6割減れば、通常の季節性インフルエンザの感染率並みの9.5%まで下がるという。
国の対策にも休校や通勤自粛の推進などが盛り込まれている。大日さんは「こうした外出規制策がどれだけ浸透するかが感染拡大防止のカギ」と話している。(服部尚)