アカデミー賞の外国語映画賞に輝いた「おくりびと」の印象的なシーンに主役の本木雅弘さんが畳に正座して布団に寝かされた遺体のまぶたを閉じさせる場面がある 小津安二郎監督で有名になった日本映画のローアングルを感じたファンも少なくなかったろう。畳すれすれの低いカメラ位置は、欧米にはない畳や床が身体の一部のようになった日本独特の暮らしがあってのことと、あらためて思うのである 「おくりびと」のもととなった「納棺夫日記」の作者青木新門さんが、先週開かれた本社主催の「とやま子守唄フェスタ」でこんな話をしていた。「生死がひとつという境地になって、あらゆるものが光ってみえる」と 発表当初から衝撃的だった北陸発の一冊が、時をへてロサンゼルスで輝くとは、だれが予想しただろう。命をはぐくむ子守唄を聞く集いの中での「おくりびと」の話は胸にしみ、子どもたちにも貴重な体験になったに違いない 生も死も日常にある。いくら身近にあっても、見ようとしなければ見えないものがある。日常に流されず、ひと味違った視点を持つことの大切さを教えられる。
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