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ギタリスト・村治佳織のお父さん 昇さん:2 楽しくレッスン

2009年2月10日

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写真3歳、自宅で。木琴やタンバリンと同じように、ギターも遊び道具の楽器だった

 「スポーツって、頂点を迎える年齢が若いですよね。だから、スパルタ教育でもなんでも、幼いころからビシバシやって、早く力をつけなきゃならない。でも、音楽は一生ものでしょ。つらい練習をさせたら、つらい音が出ちゃう」

 昇(65)は、佳織(30)に楽しくレッスンさせるため、数々の作戦を駆使した。

    *

 まず、ごほうび作戦。

 反復練習を楽しめるように、音階を1回ひいたら、おもしろい顔をしてみせる。佳織が1回ひく間に次のおもしろい顔を考え、また笑わせる。シールを1枚ずつ渡し花畑の形にはったり、高い高いをしたり……。○×の星取表も使った。

 記号や音符を一つ覚えたら、小さなおもちゃを一つプレゼント。おもちゃ問屋を回って、ごほうび探しをするのも、昇の楽しみになった。

 ギターに合わせて好きに踊ったり、伴奏をひいて自由なメロディーをつけたりする、のびのび作戦もある。

 最も大事にしたのが、発表作戦だ。

 毎日、夕食前の食卓で、家族にその日弾けたフレーズを発表する。「上手ねえ」とほめるのは、家族の暗黙の了解。

 知人の演奏会でも、小さなコンクールでも、機会があれば舞台に立った。終了後は、もちろん「ごほうび」にレストランに寄って食事をする。

 「幼いころから人前で弾く喜び、聞いてもらう人がいる素晴らしさを感じてもらいたかった」

 3歳からソルフェージュに通い始めると、昇はテープレコーダーを抱えて、ついていった。レッスン内容を録音し、毎回、家で復習。次のレッスンの時にできると、自信につながるからだ。

 四つ年下の奏一も、佳織と2人で、遊ぶようにギターを吸収していった。

    *

 「ギター仲間の中には、練習中は子どもを部屋に入れず、楽器に絶対触らせないという人もいます。それではギターが子どもの敵になってしまう。父親という、子どもにとって一番の遊び相手をギターに取られちゃうわけだから。私は、ギターより子ども、にしてきました」

 だが、昇が与えたのは「アメ」ばかりではなかった。(敬称略、聞き手・宮坂麻子)

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