香川県立中央病院(高松市)で不妊治療を受けた20代の女性患者に他人の受精卵を移植した可能性があるため人工中絶した問題で、担当の川田清弥医師(61)が3日間に、本人のものを含む3個の受精卵を移植していたことがわかった。日本産科婦人科学会の会告(指針)は、多胎妊娠を防ぐため複数の移植を原則禁じている。川田医師は同病院の調査に対して、「指針への抵触を認識しながら、過去にも同じような移植をしていた」と認めたという。
同病院によると、川田医師は昨年9月中旬、2度に分けて受精卵を女性患者に移植。初回は2個、その2日後に行われた2回目は1個だった。このうち2回目が別の患者の受精卵の可能性が高く、初回の2個は本人のものという。病院側はどの受精卵が育ったかを確認しないまま、「中絶するなら早期に」と結論づけ、女性は同11月中旬に中絶した。
学会の指針は昨年4月に出され、35歳以上の女性や2回以上続けて妊娠不成立の女性を除き、妊娠可能な同じ期間に移植する受精卵は「原則として単一」と定めている。35歳以上などであっても、移植数は「2胚(はい)(受精卵)」としている。
川田医師は過去にも指針に抵触する移植を実施していたことを認めた上で、「最初に移植した胚による妊娠の可能性は低いと考え、次の移植をすることで妊娠の可能性を高めようと考えた。反省している」との談話を出した。日本産科婦人科学会は「事実関係を調査し、28日に開く理事会で対応を協議する」としている。