外食していて隣からのたばこの煙でせっかくの味が台無し、といった経験は非喫煙者には多いだろう。そんな受動喫煙の防止を狙いに神奈川県が先日県議会に提案したのが、全国初となる屋内での禁煙条例案だ。
松沢成文知事が制定を打ち出し、約二年間議論してきた。当初案では、多数が出入りする施設内を全面禁煙としていたが、飲食店などの反発から一部分煙を認めた。
病院、学校、官公庁などに禁煙を義務付け、飲食店や宿泊施設などは禁煙か分煙を施設側が選択する。このうちパチンコ店や床面積百平方メートル以下の小規模飲食店は努力義務にとどめた。違反には罰則規定も盛り込んだ。
先日、この条例を話し合う県民集会に参加した。県内外から千余人が集まり、関心の高さをうかがわせた。たばこの害を危惧(きぐ)した条例への賛成意見の一方、旅館や喫茶店の経営者からは喫煙者の客離れを懸念して「断固反対」といった意見が出された。
知事は「神奈川から日本を引っ張る」と息巻いた。ただ、議会内には「知事のパフォーマンスだ」などの批判もあり、条例成立は微妙な情勢という。
賛否いずれにせよ、各種調査やアンケート、現場訪問、意見交換会などを積み重ねてきた意味は重い。自治の息吹が感じられ、そんな自治体をうらやましくも思う。