高校卒業後の89年、俳優を目指して東京に向かった。「必ずビッグになって顔を出しにいきますんで、TELは不要!」。数年後、実家に送られてきた手紙に書いていた。
マージャンゲーム店「一休」に勤めていて火災に遭った。母もと子さん(60)は、東京のアパートで警備員の制服を見つけた。「苦労しながらやってたんやな」。涙が出た。
当時4歳だった長女(11)と2人暮らしだった。火災後、長女は佐渡の母小杉三船さん(58)が引き取った。「ママがいる東京にいたい」。そう言われ、小杉さんの胸は張り裂けそうだった。
結婚後、「動物にかかわる仕事がしたい」と、中学からの夢を追って東京に来た。お金をためて動物病院の専門学校に行くつもりだった。スーパールーズに行くときは長女を東京で別に住んでいた夫や長兄に預けた。
長女は2年前、東京に戻った。長兄のもとに身を寄せ、昨年9月には、ビルの防火管理の重要性を訴える遺族のビラ配りに参加した。小杉さんの手元に、千帆さんと長女の写真がある。「私の希望、宝物。千帆の分も一生懸命生きて」
2009年2月21日
〒100-8051(住所不要)毎日新聞社会部「忘れない」担当
ファクス(03・3212・0635)
Eメール t.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp