忘れない 「未解決」を歩く

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忘れない:遺品に手紙「ママ感謝」 女優目指した23歳 歌舞伎町44人死亡ビル火災(1/4ページ)

中村沙由理さん
中村沙由理さん
植田愛子さん(左)と彩子さん
植田愛子さん(左)と彩子さん
井上正仁さん
井上正仁さん
多田千帆さん(左)
多田千帆さん(左)

 ネオン街を黒煙で埋め尽くした東京・新宿の歌舞伎町ビル火災から7年半。夢を追って上京した被害者も多かった。放火の疑いが強いが、犯人は捕まっていない。「どうしてわが子が」。見えぬ犯人への怒りを抑えながら、遺族は今も冥福を祈り、防火管理の重要性を訴える。【宮川裕章、石丸整】

 ◇中村沙由理さん(当時23歳)=栃木県足利市出身

 女優を目指し、高校卒業後に上京。アルバイトをしながら俳優養成所に通った。ティッシュ配り、携帯電話の販売……。現場の「スーパールーズ」には友人の紹介で勤めた。

 火事の夜は、実家に帰省予定だった。午後8時。母スイ子さん(60)に電話があった。「ごめんね。お店にどうしても手伝ってと言われて。もう1日だけ働くから」。それが最後の会話となった。

 遺品の中から、家族への思いが書かれた手紙が見つかった。<小さなころの私と変わってないと見えるかもしれないけど もう大丈夫-->

 「照れ屋だから、恥ずかしくて渡すつもりはなかったのでしょう」。スイ子さんは手紙に目を落とす。

 ◇植田愛子さん(当時26歳)、彩子さん(同22歳)姉妹=東京都豊島区

 彩子さんは幼いころから、愛子さんの後ろをついて回った。「いつも一緒。双子のようだった」と母(57)は振り返る。スーパールーズにも愛子さんを追いかけて彩子さんも勤め始めた。焼け跡から、身を寄せ合うようにした2人が見つかった。

 打ちひしがれた母を救ったのは、遺族同士のふれあいだった。

 2人の遺影の前に並ぶぬいぐるみは、足利市の中村スイ子さんからの贈り物。「孫のようにかわいい」女の子もいる。同じ店で亡くなった男性会社員(当時35歳)の長女(8)だ。男性の妻とは文通が続き、女の子の成長する姿が写真で送られてくる。

 昨年末、かばんを縫い上げて贈った。すぐに女の子からお礼の手紙が届いた。<かわいいかばんをありがとう。もようのうさぎは、絵本にでてくるうさぎでした。たいせつにつかいます>

 「遺族同士のつながりは、娘たちが残してくれた宝物です」

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2009年2月21日

【情報をお寄せください】

〒100-8051(住所不要)毎日新聞社会部「忘れない」担当
ファクス(03・3212・0635)
Eメール t.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp

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「未解決」を歩く(14)新宿・歌舞伎町雑居ビル火災 拡大動画はこちら

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