新聞業界のビジネスモデルは崩壊寸前だ。パソコンや携帯電話などからインターネットによって情報を取得し始めた若者を中心に新聞離れが進んでおり、購読者の減少とともに広告費も縮小傾向、さらに用紙代の上昇や金融危機も業界による不況も深刻な影響をおよぼしている。
昨年末には産経新聞社と毎日新聞社が2008年9月の中間連結決算で、営業赤字に転落したことが明らかとなったが、全国紙・地方紙を問わず、売上は右肩下がりだ。近年では夕刊の廃止や休刊も相次いでおり、すでに毎日新聞社が北海道内での夕刊を昨年8月末に、東北地方で最も長い歴史を持つ秋田魁新報や、創刊62年の夕刊紙 「名古屋タイムズ」も昨年休刊に踏み切ったほか、鹿児島県の地方新聞である南日本新聞(鹿児島市)も1934年から続いていた夕刊を今月末をもって休刊すると発表している。
相次ぐ夕刊廃止の要因は、収益の2本柱である購読者数と広告費が減少だ。広告出稿は10年前の水準より2割ほど減少しており、電通の調査によると07年の新聞広告費は、9462億円(前年比94.8%)と推定されており、2年連続で1兆円を下回り、広告費の減少傾向は歯止めがきかなくなっている。
これまで大手新聞社は「高給軍団」として大手総合商社や金融機関と同等か、もしくはそれを上回る年収を得ていた。減収が続く現在でも朝日新聞社の社員の平均年収は1329万円、日本経済新聞社1304万円と国内の全業界でもトップレベルを保っている。読売新聞社については平均年収は非公表だが、部数では1000万部を突破し全国紙トップで、年収も同等水準であると推測される。
だがその高給も売上や広告費が減っているなかでは保つのが難しくなってきている。毎日新聞社や産経新聞社は社員の平均年収が1000万円を下回っており、今後も大幅に上昇していくことは考えにくい状況だ。また朝日新聞社他、大手3社も書籍の出版部門などを本体から次々と切り離し、子会化することで人件費の削減に取り組み、生き残りを図っている。子会社となった部門は新しい給与体系となり、ボーナスは軒並み減額され、また子会社に入社する新入社員にはそれまで新聞社本体が提供してきた高給や昇給システムは採用されにくいのが現実だ。
とくに全国紙は国内に販売店を多数配置しているため販売コストが非常に高いのにもかかわらず、売上減少に対応できずにいる。以前から業界内でも「新聞社のビジネスモデルはいずれ崩壊する」と将来を危惧する声も出ているが、これといって事業を回復させる明るい材料もなく苦しんでいる。新たな戦略が打ち出せないまま各社が取り組み始めたのが「コスト削減」だ。大手マスコミといえば経費を贅沢に使えるイメージもあるが、10年前に約2000億円あった広告収入がほぼ半減してしまった朝日新聞社ではタクシーチケットの撤廃や出張費、記者クラブ費などの取材費の一部カット、夜食の運用の見直しや社内行事の中止などで200億円のコスト削減を目標にしているといわれる。売上が減る中で、事業を維持するため経営陣も必死だが、コスト削減とともに既存のビジネスモデルを脱却しないことには、状況を打破するのは困難な状況だ。
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