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らっぷびと ネットにアップ!4畳半ラップ!

投稿サイトから発掘され、2月4日にメジャーデビューしたネットラッパー代表格「らっぷびと」。公団アパートの自室がスタジオだ
投稿サイトから発掘され、2月4日にメジャーデビューしたネットラッパー代表格「らっぷびと」。公団アパートの自室がスタジオだ
Photo By 提供写真

 ちょっと前まで“ひきこもり”だったフリーターが、音楽界に旋風を巻き起こしている。その名は、らっぷびと(21)。インターネットをステージ代わりに、パソコンとマイクだけで録音したラップを公開。大反響となり、今月にはEMIからメジャーデビューを果たした。「ネットラップ」と呼ばれる新ジャンルのヒーロー。そのスタジオは母親と一緒に住む2DKの公団アパートだった。

 4畳半の自室がレコーディングスタジオであり、作品の発信場所。パソコンとマイクが置いてあり、壁越しに母親がいるこの場所で歌っているのである。

 「正直、最初は勇気が入りました。母親に聴かれるというのは、他人に聴かれるより照れくさいというか恥ずかしいというか…。しかもラップですからね。いまでは録音中はヘッドホンをしてもらっています」

 居間で見ているテレビの音はレコーディングの妨げにもなるため“耳栓代わり”のヘッドホンはいまや母親の必需品。録音している最中のこの親子の姿はちょっぴりこっけいにも映るが、ポップミュージックに必ずつきまとうファッションやスタイルから解き放たれたものを感じる。

 そもそも彼自身が“おしゃれな不良っぽさ”が定番のはずのラッパーとは全く正反対。色白で黒縁メガネをかけ、体形もぽっちゃり。アクセサリーも付けず、漫画とアニメが大好きないわゆる“オタク系”。ちょっと前まではほとんど“ひきこもり”だった。

 中学時代に「KICK THE CAN CREW」や「RIP SLYME」に触れてラップに興味を持った。そして高校に入った頃から自分で書き始め、インターネット上でヒップホップの音源を投稿する掲示板を見つけたのが大きな転機となった。

 「そこにはトラック音源を作る人もいれば、そこにラップを乗せる人もいて。面白いなあと、自分も投稿するようになったんです」

 ラップをやるならクラブが定番。「当然やりたい気持ちはあったんです。でも、コネはないし、どうやって売り込めばいいのかも分からない。そして何より、クラブって怖そうでした」

 シャイなひきこもりがインターネットという思いも寄らない身近なツールでラッパーになり、メジャーデビューを果たすまでになったきっかけが「クラブって怖そう」という素直な思いだったのが面白い。彼と同じ気持ちで「ネットラップ」からヒップホップシーンに入ってくる若者は着実に増えているのだ。

 らっぷびとが注目されたのは07年9月。アニメの曲に自作のラップを乗せて動画投稿サイト「ニコニコ動画」にアップしたところ、関連動画が累計で100万ページビューを超えた。

 そして翌08年8月に自主製作したアルバム「RAP BEAT」はオリコンインディーズチャートで3位を獲得。松任谷由実(55)や宇多田ヒカル(26)らが所属するEMIミュージック・ジャパンが専属契約し、今月4日にシングル「All Day’All Night」でメジャーデビュー。3月11日には初アルバム「RAP MUSIC」を発売。既に全国のCD店などから2万枚近くの予約注文が寄せられている。

 オタク文化を象徴するアニメとラップを組み合わせたことが、ヒップホップ用語でいう新たな「マッシュアップ(異なる作品の融合)」になっていると同時に、元ひきこもりがギャング文化ともつながるヒップホップとマッシュアップしていること自体がユニーク。音楽界の新たな現象としてテレビなどの取材依頼が相次いでいる。

 この「ネットラップシーン」が急成長している理由は、年齢問わず誰でも参加できるという敷居の低さに加え、さまざまなカルチャーと融合しやすい高いエンターテインメント性にある。元イラストレーターのNOVOISKI、大学院生のill.bellなどレコード各社が注目しているアーティストが続々と出ており、自由な表現の幅において他の音楽ジャンルを圧倒している状況だ。

 かつて70年代に登場した「4畳半フォーク」は文字通りその世界を歌い上げた。21世紀に出現した“4畳半ラップ”は発信場所は狭くても、歌の世界観と広がりは無限である。

 ≪Perfume以来≫らっぷびとにイチ早く注目していたのが、昨年ブレークした女性3人組「Perfume」の火付け役といわれる複合型書店「ヴィレッジヴァンガード」(本社愛知県)。東京・下北沢店の金田謙太郎さんはPerfumeのデビュー時から店内で曲を流すなどプッシュした。「らっぷびとはPerfume以来の売れ方と言えます。メジャー契約以前から特設コーナーを作って昨年12月発売の自主制作盤は下北沢店だけで1週間で1000枚を売った。とにかく声そのものの説得力がハンパじゃない」とブレークを確信している。

[ 2009年02月22日 11:42 ]

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