Commons:2009.2.19 from田中良紹
「拉致問題」は日本の主権問題である。決してアメリカにお願いをする話ではない。アメリカにしても出来るのは同情だけだ。自国の問題でもない事で解決に乗り出す事は出来ない。だからヒラリーは国務長官として拉致家族とは面会しなかった。権力から離れた一人の母親として面会した。当然である。ところが日本人にはそれが分からない。アメリカが拉致問題を忘れていないと喜んでいる。
戦争でしか解決できなかった80年前の大恐慌よりさらに深刻だと言われる危機をどう乗り切るかで世界は丁々発止の駆け引きを繰り拡げている。国際協調は大事だが各国とも自国の利益を最優先にするのが現実だ。保護主義をけしからんと叫んでみても始まらない。保護主義とそれを乗り越える努力とが交錯するところに外交がある。アメリカと日本の利益も同一でない。そうした時にこちらから助けをお願いする外交センスが私には分からない。拉致問題はあくまでも日本が自らの主権で解決すべき問題である。拉致家族にはお気の毒だが、アメリカに助けを求めていく姿は、日本人としてとてもとても「ハ・ズ・カ・シ・イ」。
その夜のテレビを見ていたら、眉間にしわ寄せキャスターがまたまた愚かな事を口走った。危機なのだから早く国会で予算を通すべきだと主張した。民主主義も議会政治も分かっていない発言である。一体政府の作った予算が国民のためになる予算なのか。それをじっくり見極めずに予算を通すのは独裁国家の政治である。民主主義はそうではない。異なる立場の人間が共生をするための政治である。野党は政府の作る予算に徹底反対しなければ存在理由はない。与野党が激しく対立して初めて共生するための妥協が生まれる。
アメリカ議会を見れば一目瞭然である。オバマ政権は上下両院とも民主党が多数を占める強力政権だ。その気になれば景気対策法案を強行できる。一方野党共和党は徹底抗戦した。これも野党であれば当然である。対立を続けていくと法案成立に時間がかかる。オバマはどうしたか。共和党に譲歩して法案を修正した。だから議会で早期成立した。これが民主主義では当たり前の議会政治である。
アメリカと違って日本では与党が参議院で少数である。早く予算を成立させたければオバマ政権以上に譲歩しなければならない。それが世界の民主主義国の常識である。それなのに霞ヶ関が作った予算をそのまま通せと主張するのはどういうことか。「霞ヶ関独裁」を認めろと言っているようなものだ。そんな事を言う政治家やキャスターは、民主主義の「ミ」の字も知らない愚か者である。ところが愚か者に限って大きな顔をして「民主主義」とか「ジャーナリズム」とか言っている。こんな日本はひたすらひたすら「ハ・ズ・カ・シ・イ」。
4日前に乗ったタクシーの運転手がこう言った。「オバマって人は笑っていても、目が笑っていない。あれはただ者じゃないね。麻生さんなんかと全然違う。二人が並んだら差が歴然とするよ。オバマみたいな政治家が出てこない日本はもう駄目だね」。日本の庶民はメディアよりも政治家よりも数倍鋭い。ところが麻生総理は自ら望んでオバマと並びたい。一生懸命外務省が「お願い」をして24日にオバマ政権初の賓客としてワシントンに招かれる事になった。しかし今訪米をして日本に何の利益があるのか。これだけ支持率の低い政権を相手がまともに扱う筈がない。足下を見られて不利な条件を持ち出される可能性がある。それなのに自らの延命という「私」のために訪米する姿を想像すると今からとても「ハ・ズ・カ・シ・イ」。
「ハ・ズ・カ・シ・イ」(下)
オバマ政権の最大課題は北朝鮮でもアフガンでもテロとの戦いでもない。瀕死の経済をどう立て直すかだ。そのためには金が要る。どこから金を引き出すか。それが最大関心事である。だから国務長官は最初にアジアに来た。中国と日本の金が狙いである。外交は形を変えた戦争だから、自国の利益のためにはありとあらゆる手段を使う。表で笑顔を振りまきながら、裏では恐喝と騙しの連続である。外交では寸分たりとも弱みは見せられない。その時にこの国の外交当局は「拉致問題」でアメリカにお願いをする日程を組み入れた。「拉致問題」は日本の主権問題である。決してアメリカにお願いをする話ではない。アメリカにしても出来るのは同情だけだ。自国の問題でもない事で解決に乗り出す事は出来ない。だからヒラリーは国務長官として拉致家族とは面会しなかった。権力から離れた一人の母親として面会した。当然である。ところが日本人にはそれが分からない。アメリカが拉致問題を忘れていないと喜んでいる。
戦争でしか解決できなかった80年前の大恐慌よりさらに深刻だと言われる危機をどう乗り切るかで世界は丁々発止の駆け引きを繰り拡げている。国際協調は大事だが各国とも自国の利益を最優先にするのが現実だ。保護主義をけしからんと叫んでみても始まらない。保護主義とそれを乗り越える努力とが交錯するところに外交がある。アメリカと日本の利益も同一でない。そうした時にこちらから助けをお願いする外交センスが私には分からない。拉致問題はあくまでも日本が自らの主権で解決すべき問題である。拉致家族にはお気の毒だが、アメリカに助けを求めていく姿は、日本人としてとてもとても「ハ・ズ・カ・シ・イ」。
その夜のテレビを見ていたら、眉間にしわ寄せキャスターがまたまた愚かな事を口走った。危機なのだから早く国会で予算を通すべきだと主張した。民主主義も議会政治も分かっていない発言である。一体政府の作った予算が国民のためになる予算なのか。それをじっくり見極めずに予算を通すのは独裁国家の政治である。民主主義はそうではない。異なる立場の人間が共生をするための政治である。野党は政府の作る予算に徹底反対しなければ存在理由はない。与野党が激しく対立して初めて共生するための妥協が生まれる。
アメリカ議会を見れば一目瞭然である。オバマ政権は上下両院とも民主党が多数を占める強力政権だ。その気になれば景気対策法案を強行できる。一方野党共和党は徹底抗戦した。これも野党であれば当然である。対立を続けていくと法案成立に時間がかかる。オバマはどうしたか。共和党に譲歩して法案を修正した。だから議会で早期成立した。これが民主主義では当たり前の議会政治である。
アメリカと違って日本では与党が参議院で少数である。早く予算を成立させたければオバマ政権以上に譲歩しなければならない。それが世界の民主主義国の常識である。それなのに霞ヶ関が作った予算をそのまま通せと主張するのはどういうことか。「霞ヶ関独裁」を認めろと言っているようなものだ。そんな事を言う政治家やキャスターは、民主主義の「ミ」の字も知らない愚か者である。ところが愚か者に限って大きな顔をして「民主主義」とか「ジャーナリズム」とか言っている。こんな日本はひたすらひたすら「ハ・ズ・カ・シ・イ」。
4日前に乗ったタクシーの運転手がこう言った。「オバマって人は笑っていても、目が笑っていない。あれはただ者じゃないね。麻生さんなんかと全然違う。二人が並んだら差が歴然とするよ。オバマみたいな政治家が出てこない日本はもう駄目だね」。日本の庶民はメディアよりも政治家よりも数倍鋭い。ところが麻生総理は自ら望んでオバマと並びたい。一生懸命外務省が「お願い」をして24日にオバマ政権初の賓客としてワシントンに招かれる事になった。しかし今訪米をして日本に何の利益があるのか。これだけ支持率の低い政権を相手がまともに扱う筈がない。足下を見られて不利な条件を持ち出される可能性がある。それなのに自らの延命という「私」のために訪米する姿を想像すると今からとても「ハ・ズ・カ・シ・イ」。
田中良紹
(ジャーナリスト)
1945年宮城県仙台市生まれ。1969年慶應義塾大学経済学部卒業。同年(株)東京放送(TBS)入社。
ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。
「国会探検」のほかの記事を見る
今の「ニッポン」を見つめる最新ニュース (2月22日 18時5分更新)
2009年2月22日(日)
- 「議員でいること恥ずかしい」=中川氏の博物館での騒動−民主・鳩山氏 - 時事通信(18時5分)
- 中川前財務相、ヘロヘロ会見後にバチカンで“大暴れ”…博物館で美術品にタッチ、柵も越えた - スポーツ報知(8時00分)
- 朝青龍ヘロヘロ会見「ちょっと飲み過ぎました」…日馬富士昇進パーティー - スポーツ報知(8時00分)
-
ヘベレケ朝青龍 白鵬をギュ〜としてチュ〜
- スポーツニッポン(6時00分)
- <日米首脳会談>日米共同のアフガン政策づくりで合意へ - 毎日新聞(2時30分)
-
「嫌麻生」広がり、自民若手・中堅の「マグマ」噴出?
- 読売新聞(1時43分)
2009年2月21日(土)
- 中川前財務相、バチカンでも騒動=G7後、博物館で柵越え警報 - 時事通信(17時6分)
- 中川バチカンでも大トラ…進入禁止エリアにフラフラと - 夕刊フジ(17時00分)
- 麻生郵政民営化発言に「納得できない」79% 朝日新聞世論調査 - J-CAST(16時57分)
- あきれた中川さん、バチカン奇行…博物館でタッチ、警報鳴る - 読売新聞(14時38分)
<< 前の10件 - 次の10件 >>