中小企業の会社員が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ、旧政府管掌健康保険)の保険料率について、今秋から全国一律(8・2%、労使折半)を都道府県別に変える作業が難航している。地域別の保険料は06年の医療制度改革の柱の一つだが、格差をめぐって協会内部や与党から不満が噴出し、厚生労働省が意見集約をできずにいるためだ。
「住所や仕事場の違いで差がつくのはおかしい」(北海道)
「急激に下がる県があるのは歓迎すべき制度変更の果実だ」(長野)
5日開かれた協会けんぽの都道府県支部代表者会議。医療費を反映させると、寒さによる平均入院日数の長さなどから最も料率が高くなる北海道と、予防医療の充実で最低となる長野県などの意見が激しく対立し、議論はかみ合わなかった。
都道府県別の保険料率の導入は06年成立の医療制度改革関連法に盛り込まれた。医療費の安い県は料率を下げる一方、抑制できない県には「罰則」として負担増を迫り全体的に医療費を抑えるのが厚労省の狙いだった。
協会けんぽは昨秋、社会保険庁から分離して発足。スタートして間もないため、現在の保険料は全国一律。標準報酬月額(月収にほぼ相当)の8・2%を労使で折半して負担している。これに医療費のかかり具合を反映すると、年齢分布や所得差を調整しても、北海道は8・75%にアップする一方、長野県は7・68%に下がり、1・07ポイントの格差が生じる。月収20万円の人同士なら、本人負担分で1070円の差がつく。
関連法は5年間の激変緩和措置を盛り込んでおり、厚労省は4案を提示した。地域格差を0・17~0・46ポイントに緩和するもので、たとえば、増減幅を本来の5分の1にとどめる案では、北海道8・31%、長野8・10%となり、格差は0・21ポイントに圧縮される。月収20万円の人同士で210円の差となる。だが、増減幅の大きい支部は納得していない。
自民党内でも「なぜ差をつけるんだ」と、過去の議論を蒸し返す声が飛び出し、負担増の県には税金を投入し8・2%に抑える案まで出ている。厚労省は近く修正案を提示するが、「3月中に決めないと作業が間に合わない」と焦りを深めている。【吉田啓志】
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<激変緩和措置をしない場合の保険料率>
■高い5道県
(1)北海道 8.75%
(2)佐賀 8.68%
(3)徳島 8.61%
(4)福岡 8.58%
(5)香川 8.51%
■低い6県
(1)長野 7.68%
(2)静岡 7.88%
(3)埼玉 7.91%
(4)千葉、新潟、山梨 7.92%
※厚生労働省試算
毎日新聞 2009年2月22日 東京朝刊