原子力関連施設の事故などで被ばくした患者を高度な診療が可能な三次被ばく医療機関の広島大(広島市)に搬送する体制が、原子力関連施設が近くにある西日本の11府県のうち鳥取を含む9府県で整備されていないことが総務省に指摘された。そのうち初期診察や緊急診療を行うため自治体が選定する初期、二次被ばく医療機関が未定なのは、鳥取だけだった。【武内彩】
広島大を管轄する文部科学省は、総務省から改善勧告が出されたことを受け、「2010年度までに指定医療機関への搬送体制を整備する」とするが、各自治体内で初期、二次被ばく医療体制が整っていることが前提。文科省原子力安全課は「自治体によって温度差はあるが、早急に初期、二次機関を選定してもらいたい」としている。
国は、99年に茨城県東海村で起きた臨界事故の教訓から、事故発生時の対策や検査態勢の整備を進めてきた。国の防災基本計画は「地方公共団体は外来診療に対応する初期及び入院診療に対応する二次被ばく医療体制やネットワークを構築するように努める」としている。
島根原発を抱える島根県は、初期医療機関として松江赤十字病院など2カ所、二次医療機関に県立中央病院を選定。これらの医療機関で、より高度な診療が必要と判断されると広島大に搬送される。
鳥取県内には原子力関連施設はなく、隣接する岡山県鏡野町の日本原子力研究開発機構・人形峠環境技術センターがある。センターの半径500メートル以内に三朝町竹田地区の一部が含まれるが、人家はない。また島根原発から境港、米子両市とも10キロ以上離れており、危機意識は低い。
県医療政策課には、広島大から患者搬送マニュアルの素案が交付されているが、マニュアル策定が必要かどうかを含めて検討中という。初期、二次医療機関の選定についても検討中で具体的なめどは立っていないという。
毎日新聞 2009年2月22日 地方版