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山が消える? 山砂採取の議論 ヤマ場
山砂の採取をめぐる議論が、大きなヤマ場を迎えている。千葉県富津市の鬼泪山(きなだやま)国有林の山砂採取計画で、是非を判断する県の土石採取審議会が今月27日、開かれる。計画は、鬼泪山から良質の山砂約1億m³、東京ドーム80杯分を採取するというもので、山砂は生コンクリート用の骨材など建築資材として使われる。しかし、地場産業の振興を訴える業者と、環境の悪化などを心配し反対する地元住民らとの対立が日増しに激しくなっている。
現場の鬼泪山の隣には、約40年前、浅間山(せんげんやま)という山がそびえていたが、山砂約2億m³(東京ドームで160杯分)が約9年間に採取されて、山は姿を消し、今は約200haの空き地になっている。民有林の浅間山と異なり、鬼泪山は国有林とあって、反対する地元の住民らは「国民の財産を、なぜ業者のためだけに使うのか」と訴え、地下水源や漁業への悪影響を恐れている。
国有林からの山砂採取の是非を判断する審議会は、地元の山砂採取業の6社で組織する「きなだ国有林同業会」の請願を受けて開かれるものだが、請願を取り次いだ県議は「首都圏のコンクリート骨材の需要に、安定的にこたえるためにも採取したい。富津、君津、木更津、袖ヶ浦の4市で3000人を超す人が採取に従事している。家族まで入れれば人口32万人の地域で1万2千人から2万人弱が関わっていて、一つの大きな地場産業。採取が実現すれば、50年くらいは、この産業ができるし、民有の山が乱開発されるよりは、環境に対する負荷は小さい」と説明する。
千葉県での山砂採取は、高度経済成長期の1965年頃から始まり、山が削られ、京浜工業地帯やNW3$I{ET?4$J$I!"El5~OQ$N5分の1が、千葉の砂で埋め立てられ、一方で、千葉から運び出される山砂にかわって、大量の残土などが運び込まれてきた。こうした経緯も含め、千葉県君津市出身の元大学教授は「もういい加減にして欲しい。国民も今までのコンクリート文明が、自然を破壊してきていることを認識して欲しい」と訴える。
環境保全か、地域経済の発展か・・・審議会の答申を受けて最終判断する県知事は「審議会はまだ開かれていないし、結論がどういう風に出るか全くわからないので、まだお答えできない」と前置きしたうえで、「国有林というのは国民の財産だし県民の財産原則として守っていくべき所だと思っている。森林の重要性というのは環境の保全、緑を守るということもある。CO2の問題からも吸収源とし森は大事。よほどのことがない限り、国有林である場合にはできるだけ避けた方がいい」と話している。