きょうの夜からあす未明にかけて繰り広げられる岡山市・西大寺観音院の会陽といえば、一枚の写真を思い出す。瀬戸内市出身の写真家緑川洋一さんが撮影した。
両手を頭上に伸ばして押し合う裸衆、本堂の梁(はり)には何人もが張り付き、次々と飛び降りている。投下された宝木(しんぎ)を争奪する群像の躍動感を見事にとらえた。
作品「備前の裸祭」は、一九五三年の第一回二科賞(最高賞)を受賞し、会陽の名を広めた。緑川さんは後に「本当にもう、何か地獄の争奪戦のような迫力でした」と語っている。
会陽は宝木を求めて裸の男たちがもみ合う勇壮さが魅力だ。一方で、激しさから事故がつきまとう。死者が出たこともある。悲劇は防がなければならない。観光的な人気が高まり、多くの見物客でにぎわうようにもなった。危険を防止し、安全安心の会陽は時代の要請である。
すでに梁からの飛び降りや酒を飲んでの参加は禁止されている。さらに今年は深夜零時の宝木投下の約三十分前にもみ合いを一時中断し、体調の悪い人らに渦の外に出るよう促す措置がとられる。来年からは宝木の投下時間を二時間前倒しする。
今年は五百回目の節目の会陽だ。緑川さんのような写真は撮れないが、裸衆と観客が一体感を増せば、新しい感動写真が生まれるに違いない。