自民党内で「麻生降ろし」の動きが表面化し始めたことに、民主党が戸惑いをみせている。中川昭一前財務・金融担当相の辞任などで、麻生太郎首相を土俵際に追い込んだものの、自民党総裁選が前倒しで実施され、新首相が誕生すれば支持率などで息を吹き返すのではないかと懸念しているためだ。政府・与党に対する追及も今一つで、他の野党から「弱腰」との批判が噴出している。
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民主党の輿石東参院議員会長は19日の記者会見で、自民党内で首相退陣を求める声が出始めたことについて、「こういう政権にかじ取りを委ねていいのか。一日も早く国民の審判を受けてもらいたい」と述べ、早期に衆院解散・総選挙を実施するべきだと強調。菅直人代表代行も「自民党の政権担当能力は完全に欠落してきた」と述べた。
民主党には、中川氏の辞任や郵政民営化をめぐる首相の見直し発言など政府側の敵失が相次ぎ、「こちらから仕掛けなくても、首相が勝手につまずいてくれる」(若手)との声が出ている。求心力低下で窮地に立たされた首相が、平成21年度予算案の成立後に「解散カード」を切らざるを得ない状況に追い込むことが民主党にとって「最高のシナリオ」(同)だ。
小沢一郎代表も「いたずらに審議を引き延ばすつもりはない。予算が成立した後の4月に選挙だ」とあおり続けている。
その一方で、首相が自民党内の「反麻生勢力」の圧力に抗しきれず退陣を余儀なくされ、新政権が発足すれば、世論の風向きが変わるとの懸念もある。
民主党幹部は「私たちがやるべきことは首相を守ることだ。いたぶるけど辞めさせないことが大事だ」と本音を漏らす。
19日午前の衆院予算委員会では、中川氏の任命責任について首相を攻め立てる一方で、首相に対する問責決議案の参院提出に尻込みしているのは、こうした事情が背景にある。
他の野党との足並みも微妙なズレが生じており、社民党の又市征治副党首と国民新党の亀井久興幹事長らは同日の会談で「自民党の自壊を待てば衆院選につながるという見通しは甘い」との認識で一致。政府・与党が平成21年度予算案の修正協議に応じない場合、問責決議案を提出するよう迫る考えだ。ただ、民主党の山岡賢次国対委員長は「ただちに問責を出すとか、いつやるとかは考えていない」と慎重姿勢を崩していない。
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