劇場版「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」 あらすじ

チャプター1 衛星タイタン - 敵機侵入

西暦2009年2月、地球ははるか50万年もの昔から闘争を繰りかえしてきた「男=ゼントラーディ」と「女=メルトランディ」の二大勢力による大規模な宇宙戦争に巻きこまれた。

地球統合軍宇宙艦隊所属SDF−1(Super Dimension Fortress-1 / 超時空要塞)マクロスは、フォールド(超時空航行)の失敗によって跳ばされた冥王星軌道から、ゼントラーディ軍の追撃をかわしつつ通常航行によって地球への帰還をめざしていた。マクロス艦内には、フォールドに巻きこまれてマクロスとともに長距離転移してきた避難民、約5万6千人が生活をいとなむ市街地が建設されている。
地球から遠く太陽系の末端まで跳ばされたフォールド事故からかぞえて5ヶ月を経過した地球帰還の途中、土星の衛星タイタン付近から物語ははじまる。

戦争下にあっても活気にあふれたマクロス市街地では、南アタリア島でひらかれたマクロス進宙式でのイベントから誕生したアイドル歌手リン・ミンメイのはじめてのコンサートがおこなわれていた。
しかしタイタンでゼントラーディ軍の攻撃をうけ、マクロスが要塞型から強攻型へ変形(トランス・フォーメーション)したためコンサートは中断を余儀なくされる。
戦闘に乗じてマクロス艦内にゼントラーディ軍のヌージャデル・ガー部隊3機が侵入。ゼントラーディ兵士たちは、市街地で地球人の男と女が共存しているさまを見て驚愕する。「男」と「女」に分裂して戦うことしか知らなかったかれらにとって、それは恐怖を感じさせるほどに信じがたい光景だった。

新兵の一条輝は、同僚のマクシミリアン・ジーナス(マックス)、柿崎速雄とともにロイ・フォッカー少佐ひきいる量産型可変戦闘機VF−1バルキリー・スカル小隊に配属され、タイタンにおける戦闘で初陣をかざる。
マクロス艦内への敵機侵入の情報を聞いた輝は、マクロスの主任航空管制官で上官の早瀬未沙の命令にさからって単身市街地に入り、ミンメイを捕獲しようとしていた敵機を撃破。さらに重力制御システムの損傷により重力コントロールがきかなくなった市街地を墜落してゆくミンメイを救出するものの、ミンメイとともに機体ごとエンジン・ブロックに飛びこんで閉じこめられてしまう。

ゼントラーディ軍の追撃艦隊は地球人との接触をもてあまし、混乱していた。これまでの戦闘で捕獲した資料から、マクロスが敵対するメルトランディ軍ではないこと、マクロス艦内にはゼントラーディ人の約7分の1の身体サイズしかもたない人間(マイクローン)が存在していることなどが確認された。しかし奇妙な音声信号(のちにミンメイの歌ごえだとあきらかになる)を聴いた兵士たちが戦闘不能に陥るなどということは、これまでのメルトランディ軍との戦闘経験ではありえないことだった。

さらにタイタンでの戦闘でおくりこんだ侵入部隊が入手した男女共存の証拠は、ゼントラーディ軍第425基幹艦隊(ボドル基幹艦隊)所属アドクラス艦隊司令ブリタイ7018と記録参謀エキセドル4970を、侵入した兵士たち同様におどろかせ、恐怖させた。エキセドル4970は、ゼントラーディ軍に古くから伝わる戦闘マニュアルの記述「マイクローンには手を出すな。触れたる者は滅びる」をひきあいに出して警告を発する。

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チャプター2 漂流 - デート - 土星の虹

マクロスのエンジン・ブロックに閉じこめられた輝とミンメイは、人工重力の不調から一緒に落下してきた食材をはじめとするさまざまな物資を利用して、発見されるまでの3日間、ともに漂流生活をおくった。
輝にとってミンメイは、あこがれのスーパー・アイドル。一方、アイドル業の過密スケジュールによる疲労から、歌うことの意味にも疑問をいだきはじめていたミンメイにとって、輝と過ごした3日間は、つかの間のやすらぎを感じた幸福な時間となった。
漂流生活3日め、ミンメイは輝から、ある共演男優との恋愛ゴシップについて訊ねられる。ドラマのラブ・シーンなどはたんなるビジネスであり、「あんなの演技でできんのよ」といって笑ったミンメイは気まぐれをおこして輝を誘い、キスをかわす。ところが、ちょうどそのときエンジン・ブロックを閉鎖していた防護シャッターが開放され、ふたりのキスの光景は芸能記者たちの格好の餌食となってしまう。

アイドルであることに疲れ、さらには漂流生活以来、輝との関係について無責任な報道を繰りかえすマスコミにも辟易したミンメイは、ふたたび輝を呼びだし、人目を避けてデートする。輝はミンメイを励ますため土星の虹を見せてやろうと思いつき、訓練用VF−1D複座式バルキリーを無許可で持ちだして、ミンメイを連れて宇宙飛行に出かける。

ところが輝とミンメイの乗った機体は、ゼントラーディ軍ボドル基幹艦隊司令長官ボドルザーが命じたマイクローン捕獲作戦にとっては好都合のターゲットだった。輝とミンメイを連れもどすためにやってきた未沙と、ミンメイの実兄でマネージャーをつとめるリン・カイフンを乗せたシャトルも一条機とともに捕らえられ、救援のため緊急発進したフォッカーは単機で善戦したものの、物量で圧倒するゼントラーディ軍の前に、最後はなすすべがなかった。

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チャプター3 捕虜 - 離散

捕虜となった輝、ミンメイ、未沙、フォッカー、カイフンの5名は、眼の前にあらわれたブリタイ7018とエキセドル4970の巨体を見て驚きをかくせなかった。さらにブリタイ7018が発する質問は「男と女がなぜ一緒にいるのか?」や、「男と女はなぜ戦わないか?」など、地球人にとっては奇妙に思える事柄ばかりだった。

尋問のなかで「キス」という新語に興味をいだいたブリタイ7018は、ミンメイを捕らえて誰かキスというものをしてみろとせまる。カイフンが役目をひきうけ、ミンメイとキスしてみせると、ブリタイ7018とエキセドル4970は激しいショックをうけ、驚愕のあまり身動きができないほどだった。

ミンメイとカイフンは特別なサンプルとして、輝以下3名とは隔離されてしまった。
そんなおりメルトランディ軍のミリア639ひきいる突撃部隊がノプティ・バガニス(ブリタイ艦)に攻撃を仕掛けてくる。ブリタイ艦内の混乱に乗じて自由の身になった輝、未沙、フォッカーは脱出を試みるが、ゼントラーディ軍の兵士カムジン03350に急襲されたフォッカーはカムジン03350を道連れに、愛機とともに壮絶な爆死をとげる。

輝と未沙はミンメイ、カイフンの救出まであと一歩というところまでせまったものの、戦線離脱をはかったブリタイ艦のフォールドに巻きこまれて別空間にはじき跳ばされてしまう。

ミンメイとカイフンはボドル基幹艦隊の中枢部まで連れさられた。身を寄せあうふたりの様子、ミンメイの口ずさむ歌に衝撃をうけたボドルザーは「プロトカルチャー」、すなわち「文化をもつマイクローン」なる言葉を発する。そして過去に捕獲した「文化の断片」(メモリー・プレート)を取りだしてみせ、ミンメイとカイフンに解読させようと試みた。

メモリー・プレートにはある歌(「愛・おぼえていますか」)の旋律のみが記録されていた。ボドルザーはメロディに歌詞をつけ、メルトランディ軍にたいする音波兵器として使用することで戦争における優位性を確保できると判断。戦略変更に大きく動きだした。

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チャプター4 遺跡の街 - メモリー・プレート

一方、ブリタイ艦のフォールドにはじき跳ばされた輝と未沙は、クレーターだらけの荒涼とした惑星にデフォールドする。しかしすぐさま、地球統合軍太平洋艦隊所属の攻撃空母プロメテウスが無惨な姿をさらしているのを発見し、この不毛な惑星が地球であることを知る。アラスカの地球統合軍総司令部はじめ主要都市を調査したふたりだったが、生存者を確認することはできなかった。ゼントラーディ軍の大爆撃をうけた地球は、マクロスの帰還を待たずにすでに文字どおり全滅していたのだ。

みずからの軽率な行動からフォッカーを巻きこんで戦死させ、ミンメイは拉致された上、救出すらはたせなかった輝はやけになり、ことあるごとに任務、任務と口にする未沙とは衝突を繰りかえす。

しかし1ヶ月におよぶ地球の調査活動のなかで、おたがいを知りあうことで輝と未沙の関係はすこしずつ変化していった。輝は口やかましく、職務のことしか考えていない非情な上官と思っていた未沙が、じつは人間らしい弱さをあわせもったひとりの女性であることに気づき、未沙もまた、無神経で反抗的な部下にすぎなかった輝にこまやかなやさしさがあることを知る。マクロスがもどってこなければ、地球で生きのこった者はふたりだけという過酷な状況下で、輝と未沙はしだいに共感をふかめ惹かれあってゆく。

海上を飛行中の輝と未沙は、長く海中にあったと思える、地球人の手によるものではない遺跡の一部を発見する。内部の管理コンピュータの情報から、遺跡はかつて異星人(プロトカルチャー)の末裔が乗っていた宇宙移民船(アルティラ)であることがわかる。

遺跡の管理コンピュータから得た情報は、異星人の言語に多少の知識をもっていた未沙をつうじて輝に語られた。
50万年前、宇宙にはプロトカルチャーと呼ばれる一大文明が繁栄していた。そこでは遺伝子工学が発達し、男は男だけで、女は女だけで子孫を残せるようになったとき、プロトカルチャー人はふたつの性に分裂して戦争をはじめた。そのとき製造されたのが、戦うことのみを目的とする巨人戦闘種族、ゼントラーディ人とメルトランディ人だった。
巨人たちの闘争が拡大し、創造主であるプロトカルチャー人の生存すらおびやかされるようになったとき、戦乱を避け、もういちど男と女がともに暮らせる世界をもとめて逃げのびてきたプロトカルチャー人が地球に飛来し、移住をはじめるとともに現住生物の遺伝子を操作して地球人の祖先をつくった。
しかし2万年前、ゼントラーディ軍とメルトランディ軍の戦闘が太陽系にまでおよんだため移民たちは宇宙移民船を海中に沈め、一時的に地球を離れたが、結局のところもどってくることはできず巨人たちに滅ぼされてしまった。

遺跡の街を探索中に未沙は、プロトカルチャー人の文字(「愛・おぼえていますか」の歌詞)がきざまれたメモリー・プレートを発見する。

宇宙移民船につくられたなんの変哲もない住居と日用品の数かずは、太古の昔からかわらないごくあたりまえの生活、人間の普遍的な日常のいとなみを示していた。それを見てマクロスと仲間への郷愁をつのらせる未沙に輝はやさしくこたえ、ふたりはくちづけをかわす。

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チャプター5 帰還 - 決意

マクロスはゼントラーディ軍の追撃をかわしてついに地球への帰還をはたし、未沙が発したフォールド通信の痕跡を追って、プロトカルチャーの遺跡の街に到着した。
輝と未沙は1ヶ月ぶりにマクロスに生還する。

しかしすぐに、「文化の断片」の奪取をもくろむメルトランディ軍の攻撃にあう。
フォッカー亡きあとバルキリー・スカル小隊をひきいていたマックスはミリア639と激しくわたりあい、ミリア艦内まで追撃してこれを撃破する。傷ついて横たわるミリア639の美しさに心うたれるマックス。以後マックスはマイクローン装置によってみずからを巨人化させ、ミリア639と行動をともにする(ミリア639の部隊はメルトランディ軍から離反し、最終決戦ではマクロス側に加勢した)。

マクロスを追ってきたボドル基幹艦隊は、メルトランディ軍を屈服させるための方便として和平交渉をもとめてきた。ミンメイとカイフンは捕虜になって以来、1ヶ月ぶりにマクロスにもどってくる。
和平交渉成立の公式発表の席上でミンメイは、サプライズを演出するために呼びだされた輝と涙の再会をはたす。迷わず輝の胸のなかに飛びこんだミンメイだったが、輝の視線のさきには、すでに自分ではなく未沙がいることを知る。

遺跡の街でひろったメモリー・プレートにきざまれていた文字を解読していた未沙は、それがミンメイの持ちかえった、ゼントラーディ軍の「文化の断片」と呼ばれる旋律の歌詞であることに気づく。輝に確かめてもらうために、部屋にいそぐ未沙。

ところがちょうどそのころ、輝はミンメイの訪問をうけていた。ミンメイは輝と未沙の関係を察しつつ、輝に思いを打ちあける。輝は未沙にたいする自分の気持ちに迷いがないことをミンメイに告げようとするが、おり悪く部屋に入ってきた未沙が見たのは、ミンメイが輝をうしろから抱きしめている姿だった。
驚きとくやしさをこらえて未沙は「どういうこと…?」と釈明をもとめる。輝は未沙の誤解をとこうとあわてるが、輝の動揺ぶりにショックをうけたミンメイは部屋を飛びだしてしまう。

未沙は輝をうしないたくないという真意をかくしながらも、「はやく追いかければいいじゃない!」といって輝を突きはなす。しかし輝は「いつまでもそばにいてもらいたいのはきみだ」と未沙への告白をはたし、ふたりはかたく抱きあう。

そのときマクロス艦内に、第一次非常警報が鳴りわたる。
プロトカルチャーの遺跡を奪うためメルトランディ軍ラプラミズ基幹艦隊が、地球をはさんでゼントラーディ軍に対峙した。プロトカルチャーの歌(「愛・おぼえていますか」)にはいまだ歌詞がついておらず、くわえてミンメイが行方不明との情報を聞いたボドルザーは、マクロスをふくめメルトランディ軍の殲滅を指示。和平はあっという間に破られた。

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チャプター6 最終決戦 - めざめ

ゼントラーディ軍の第一波攻撃によって、遺跡の街はあとかたもなく消滅する。デフォールド直後でまだ戦闘態勢の整っていないメルトランディ軍の先手を制したボドルザーは、巨大なゴルグガンツ砲を発射してメルトランディ軍の艦隊司令ラプラミズを撃沈する。

ゼントラーディ軍とメルトランディ軍が激しく戦っているなか、輝はマクロス市街地のなかをミンメイの姿をさがして走っていた。
土星へ飛びだした日、輝とともに過ごした展望台にミンメイはいた。輝は未沙のつくった歌詞カードをさしだしながら、ミンメイにプロトカルチャーの歌を歌ってほしいと頼む。はじめミンメイは拒絶し、失意の反動から「あなたとわたし以外、みんな死んじゃえばいいのに!」と身勝手な言葉を口にして輝に頬を打たれる。みずからも苦しみながらミンメイを打った輝の言葉を聞きながら、ミンメイはすべての人のために歌を歌うというみずからの使命をさとる。

マクロスは、ミンメイの歌う「愛・おぼえていますか」を全戦闘宙域に発信させながら、ボドルザーとの決戦にのぞんだ(リン・ミンメイ作戦)。歌を聴いた異星の兵士たちは驚いて浮き足だち、一時的に戦闘不能に陥る。

「愛・おぼえていますか」を耳にしながら、どこかで聴いたことのある不思議な感覚をおぼえて慄然としたブリタイ7018に、エキセドル4970は、50万年のときを越えて遺伝子提供者であるプロトカルチャー人の文化の記憶が呼びさまされているのだと分析する。
ブリタイ7018は自分自身に呼びさまされた文化(人の心)に打たれ開眼し、マクロス側に造反することを決意。ふたたび文化をとりもどそうと語るブリタイ7018の呼びかけに多くのゼントラーディ軍、メルトランディ軍の兵士たちが同調し、一丸となってボドル旗艦に侵攻してゆく。

マクロスは船体ごとボドル旗艦に突っこみ(マクロス・アタック)、ボドルザーのいる中枢部ちかくまで到達する。輝は中枢部破壊の特殊任務をうけ、単身バルキリーを駆って突撃し、ボドルザーの顔面に全弾を射出してついにボドルザーをうち倒す。全戦域に勝利の歓声がわきあがった(第一次星間大戦の終結)。

戦いがすんで、ミンメイはマクロス・ブリッジ前の特設ステージ上から歌詞カードを高くかかげ、未沙に無言の感謝をおくる。未沙は笑顔でこたえた。

静かな笑みをうかべながら、ミンメイは歌のカウントをとりつづけていた。真の歌手としてめざめたミンメイは、これ以後、大スターの道をひとり歩んでゆく。(完)

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