第19話「バースト・ポイント」

セリフとト書き

[ オープニング ]

ナレーター: フォッカーが戦死した。その衝撃はクローディアと周囲の人びとを、そして負傷のために戦闘に参加できずにいた一条輝の胸をも、するどく差しつらぬいた。

[ 強攻型マクロスが、都市上空を低空飛行で移動している ]
軍幹部A: グローバル艦長、市街地上空の低空飛行は、非常時以外は禁止されているはずだ。ただちに高度をとって、洋上へ出たまえ。
グローバル: いまがその非常時です。5万6千人もの民間人をかかえていては、マクロスは本来の機能を発揮できません。民間人を地上に降ろす許可を願います。
軍幹部B: 乗組員は誰ひとりとして地上に降りてはならない。これは総司令部の決定だ。
軍幹部A: グローバルくん、きみは決定にさからうとでもいうのかね?
グローバル: そうは申しません! ただ、あいにく本艦の重力制御システムは完全ではなく、いつ故障するとも…。
軍幹部A: なんだと!? もしマクロスが墜落したらどんなことになるかぐらい、わかっとるだろうに…。
グローバル: 住民の上陸許可を願います!
軍幹部A: それはできん! 考えなおすんだ、グローバル。
[ グローバル艦長、通信機の受話器をおく ]
ヴァネッサ: こんな脅迫じみたことをして、平気なんですか!?
クローディア: マクロスは統合軍のシンボル。そのマクロスの艦長が反逆を起こした、なんてことになれば軍の信用は丸つぶれ。
未沙: 総司令部としても、ことを荒だてるわけにはいかない。そうですね、艦長。
グローバル: そういうことだ。それにもし処罰の対象になったとしても、全責任はわたしがとる。
未沙: 総司令部が、決定をかえてくれるでしょうか?
グローバル: おそらくかえんだろうなあ。
ブリッジ: ええ!?
シャミー: それじゃ、なんで…?
グローバル: たとえ総司令部が許可しなくても、いまの交信を傍受したどこかの自治政府が受けいれを認めてくれるかもしれんからな。
未沙: 受けいれさきがあるといいですね。
グローバル: ああ。
クローディア: ほんとうに。…さてと、受けいれさきが見つかるまでに、ちょっとコーヒーでも飲んでくるわ。ケーキはなんにしようかなあ。
[ クローディア、ブリッジを出てゆく ]
キム: ケーキだって。そうとう無理してるわね。
シャミー: そうねえ。あたしなんか好きな人が死んじゃったら、すぐに食欲がなくなっちゃう…。

[ マクロス艦内のラウンジ。ミンメイの歌う「シルバームーン・レッドムーン」がながれている。クローディアのテーブルからほど近い窓ぎわに、輝の姿もある。輝とクローディアによるフォッカーの回想。クローディアは泣いている。はじめは温かかったコーヒーはとうに冷めている。ラウンジに未沙が入ってくる。未沙、クローディアを見つける ]
未沙: あ…。
[ 未沙、ふと眼をやったさきにいた輝に気づく ]
未沙: あ。
[ 輝も未沙に気づく ]
未沙: ケガのほうは、もういいの?
輝: ええ。それに、あのぐらいのケガでいつまでも寝こんでたんじゃ、先輩に…。
[ 未沙、フォッカーのことを思う ]
輝: そういえば、民間人を降ろす作戦は?
未沙: 受けいれ地があれば、いつでも実行するわ。いま歌ってるの、あなたの恋人さんでしょ? 彼女は降りるの?
輝: いえ、ミンメイは残るっていってました。叔父さん、叔母さんや、従兄のカイフンもいっしょに。
[ 輝、カイフンを思いだしてすこし不機嫌になる ]
未沙: [ それには気づかず ]そう、それはよかったわね!
輝: ん、まあね。
未沙: [ 独白 ]あの人も残る。
輝: まあ、地上に降りたからって安全なわけじゃないし、それにマクロス全体をカバーする新型全方位バリアも開発できたんでしょ。
未沙: ええ、確かにピンポイント・バリアよりは安心できるけど、持続時間はそんなに長くはないわ。
輝: 結局、ゼントラーディが本気を出せば、みんなやられちまうってことか。
未沙: 不思議ね、いつかは負けるとわかってるのに、こうして戦いつづけているなんてね…。

[ ミンメイ、本番を終えて楽屋にもどってくる。カイフンが本を読みながら待っている ]
ミンメイ: [ ため息 ]はあ〜。
カイフン: お疲れさま。
ミンメイ: ほんと。なんか疲れちゃった。
カイフン: どうした、ミンメイ? 顔色が悪いぞ。
ミンメイ: 平気よ、兄さん。ちょっと休めば…。ああ…!
[ ミンメイ、気をうしなって倒れる。カイフンがささえて ]
カイフン: ミンメイ! しっかりしろ。ミンメイ。ミンメイ?

[ マクロス・ブリッジ ]
シャミー: 艦長、北米オンタリオ自治区から暗号電文です。
グローバル: オンタリオ自治区から? で、なんといってきた。
シャミー: 解読します。マクロス住民の受けいれを許可する。当地へ向かわれたし。[ 喜んで ]艦長!
グローバル: やったなあ。
ブリッジ: [ 口ぐちに安堵のため息 ]ああ。
グローバル: クローディアくん、ただちに進路をオンタリオ自治区に向けてくれ。
クローディア: イエッサー。進路変更、1208。目標、オンタリオ自治区。全艦移動開始。
[ マクロス、方向転換する ]

[ カムジン艦ブリッジ ]
カムジン: ふざけるな! どうしてマクロスを攻撃しちゃなんねえなんていうんだ!
ラプ・ラミズ: 私とて、上層部の考えはわからん。しかし命令は絶対だ。スパイ作戦が完了するまでは、静観してもらうほかはない。
カムジン: 冗談じゃない。マクロスは母星に帰還してるんだ。いまがチャンスじゃねえか。母星ともどもこなごなに、ふっとばしてやるぜい!
[ カムジン、一方的に通信を切る ]
ラプ・ラミズ: カムジン! カムジン、応答せよ!
[ うしろからミリアが近づく ]
ラプ・ラミズ: ミリア、おまえにまた、カムジンをとめてもらわないといけなくなりそうだ。
ミリア: それが…。
ラプ・ラミズ: なにか。
ミリア: ラプ・ラミズ司令、私をマイクローン・スパイに任命してください。
ラプ・ラミズ: バ、バカな! おまえほどのパイロットが、なぜわざわざマイクローンなどに。ミリア!
ミリア: 私は、マイクローンになります!
ラプ・ラミズ: [ 驚く ]ああ。

[ ミリア、マイクローン装置に入っている ]
ミリア: [ 独白 ]幾百、幾千にもわたる監察軍との戦いに、いちどとして負けたことのないわたしが、たかがマイクローンごときに負けた…。
[ ミリア、マックスとの戦闘を回想する ]
ミリア: [ 独白 ]あの機体、あのパイロットに会ってみたい。

[ プロメテウス内バルキリー格納庫 ]
マックス: いたいた。
[ マックスのあとに柿崎がつづく ]
マックス: 隊長!
柿崎: 隊長!
輝: マックス、柿崎。どうしてここに?
マックス: 早瀬大尉に聞いたら、ここだっていわれまして。
柿崎: この機体、フォッカー少佐の「スカル1」ですよね、隊長?
輝: ああ。今日から先輩のかわりに、俺が乗る。いちども撃墜されたことがないって、いつも自慢してたのに、機体だけ残していっちまうなんてなあ。俺なんか、なんども撃ちおとされたのに。
マックス: ところで隊長、聞きましたか? もうすぐ民間人を降ろすって話。
輝: それじゃ、決まったのか!
マックス: ええ。なんでもオンタリオ自治区が受けいれを申しでてくれて、朝には民間人にも公表するようです。
輝: そうか!
柿崎: ですから隊長、街がにぎやかなうちにパーッと、遊びにいきませんか?
マックス: どうです、隊長。たまには気晴らしもしないと。
輝: そうだな。今夜は俺がおごるよ。
柿崎: さすが隊長! そうと決まれば、さっそく行きましょう。いいとこいいとこ。
マックス: そう、いいとこいいとこ。
輝: ああ。

[ カムジン艦。グラージに乗りこむカムジン ]
カムジン: 俺たちがマクロスに接近して、ECMをかける。そのあいだに艦隊を降ろせ。
オイグル: けどよう、大気中で大型艦は不利ですぜ。
カムジン: なあに、噂じゃマイクローンの連中は自分たちの惑星を大事にするらしい。地表近くに降りれば、こっちのモンよ。
オイグル: なるほど〜。しかしまた、命令違反になりますなあ。
カムジン: ふっふふふ。命令違反が恐くて、カムジン一家がつとまるかってんだ!
[ カムジン、部隊をひきいてマクロスに向かう ]

[ マクロス・ブリッジ ]
ヴァネッサ: 未確認飛行物体多数、大気圏に突入。本艦に向かっております!
グローバル: なんだと!?
未沙: もうすぐオンタリオ自治区に着くのに。
クローディア: まったく…!
グローバル: ここでやられるわけにはいかんな。早瀬くん、全パイロットに発進命令を!
未沙: 了解。

[ マクロス市街地のステーキ店内 ]
店員A: ミディアムでサーロイン特大のお客さま。
[ 店員、ぶ厚いステーキを柿崎の前に置く ]
柿崎: 来たきた! う〜、うまそう!
マックス: 柿崎くん、ほんとうにそれぜんぶ食べるの?
柿崎: 食えなかったら包んでもらうさ! はっははは…。
未沙: [ 艦内放送 ]バルキリー隊、ドリンク少尉、注文の品がとどいている。至急もどるよう。繰りかえす。バルキリー隊、ドリンク少尉、注文の品がとどいている。至急もどるよう。
マックス: この放送は!
輝: 全機発進だ。柿崎、行くぞ!
柿崎: あ〜あ、俺のステーキが…。
[ 柿崎、ステーキをひと切れだけ食べて席を立つ ]

[ 輝、バルキリー「ロイ・フォッカー・スペシャル」に乗りこむ ]
輝: [ 独白 ]フォッカー少佐、俺、先輩のバルキリーに乗せていただきます。先輩のぶんまで働きます。
[ 輝、発進準備を整える ]
輝: 先輩。…スカル小隊1番機、発進します。
未沙: 了解。
[ 輝、発進 ]
輝: こちらスカル・リーダー、発進終了。
クローディア: スカル・リーダー?
未沙: ええ、今日から一条中尉がフォッカー少佐の機体に乗るんですって。
クローディア: そう、あの坊やが…。
[ クローディア、前方のバルキリー隊を見つめる ]

[ アイキャッチ ]

輝: スカル・リーダーより、2番機、3番機へ。戦闘中はくれぐれも油断するな。死んじまったらおしまいだからな。
柿崎: 了解了解。
マックス: わかってます。

[ カムジン部隊 ]
カムジン: 野郎ども、電波妨害出力最大! 派手にやれ!
[ バルキリー隊とカムジン隊との交戦。輝、敵空戦ポッド3機を背後に引きつけて ]
輝: かかったな!
[ 輝、ガウォークへの変形レバーをさげる。一条機、ガウォーク型で急速反転。敵機3機を撃墜する ]
柿崎: さっすが隊長。これで少佐もうかばれますよ。うわ〜!!
[ 柿崎、横から至近距離にあらわれた敵機にねらわれる。マックス機がこれを撃墜 ]
マックス: 油断するなっていわれたばかりだろう!
柿崎: すまんすまん。

[ カムジン艦隊 ]
ゼントラーディ兵士A: 電波妨害レベル108、いつでも行けます。
オイグル: よ〜し。各艦、地上へ向けて降下せよ。
[ カムジン艦隊、降下 ]

[ マクロス・ブリッジ ]
ヴァネッサ: はっ、へんです! 長距離レーダーの反応がにぶっています。
グローバル: ECMか。新手が来るな。新型バリア・システム、スタンバイ。10分以内に準備させろ。
クローディア: しかし艦長、バリアをはれば、こちらの武器が撃てなくなりますが。
グローバル: ようやく市民の受けいれさきが見つかったのだ。いまは市民を守るのが第一だ。
クローディア: イエッサー。
未沙: バルキリー隊各機は、敵第二波に注意するよう。
クローディア: バリア・システム、スタンバイ。

[ 戦闘空域を避け、地表付近からクアドラン・ロー1機がマクロスに接近してゆく。手にはマイクローン・サイズのミリアが入ったカプセルを持っている ]
ゼントラーディ兵士(女)B: ミリア空師長、ほんとうにあのマイクローンの船に行かれるのですか?
ミリア: ああ。
ゼントラーディ兵士(女)B: ラプ・ラミズ司令は、かなり気を落とされていたようですが。
ミリア: 確かにな。カムジンのやつらが暴れても、とめようともしない。
ゼントラーディ兵士(女)B: よろしいのですか?
ミリア: さあな、私にはわからぬ。

カムジン: 「みな殺し」よりマクドミラへ。そっちはどうだ?
オイグル: こちらマクドミラ。作戦どおり地上ちかくに来てますぜ。
カムジン: ようし、全艦進撃開始! ただし、俺がもどるまで撃つんじゃねえぞ!
オイグル: オーライ!
[ カムジン艦隊、進撃開始 ]

[ スカル小隊、山間から姿をあらわしたカムジン艦隊を発見する ]
輝: ん? これは、敵の大型戦艦。いつの間に!

[ マクロス・ブリッジ ]
未沙: 戦艦ですって!
グローバル: バリア急速展開。
クローディア: バリア・システム、急速展開。
乗組員A: バリア・システム、急速展開。バリア・エネルギー上昇。
クローディア: 全方位バリア、作動。
[ マクロス全艦が、緑色の球体につつまれる ]

[ カムジン艦ブリッジ ]
オイグル: 敵艦周囲に、異常なエネルギー反応が…。
カムジン: かまわん、撃てっ!
[ カムジン艦隊、砲撃 ]
ゼントラーディ兵士C: 全弾命中!
カムジン: やったか!
[ 爆発のなかからマクロスが無傷であらわれる ]
カムジン: なんだと!?

[ マクロス・ブリッジ ]
クローディア: バリア展開、成功。
グローバル: うむ!

[ スカル小隊 ]
柿崎: すげえや、あれだけの攻撃をはねかえしたぜ。
輝: これであきらめてくれればいいけどな。

[ カムジン艦ブリッジ ]
ゼントラーディ兵士D: エネルギー吸収率95、反射率3.3。
オイグル: あの球体が、こちらの攻撃を防いでいるようだが、どうしやす?
カムジン: ふん、決まってるだろう。撃ちまくれ!
[ カムジン艦隊の砲撃がつづく ]

[ マクロス・ブリッジ ]
ヴァネッサ: 敵艦隊、イエロー・ゾーンに侵入。なおも接近中。
グローバル: こんどばかりは手加減なしか。
シャミー: 統合軍総司令部に救援を頼まないんですか?
未沙: 無駄よ。総司令部に迎撃する気があれば、とっくにやってるわ。
キム: 市民の受けいれ要求で、無理をしたからでしょうか、艦長?
グローバル: それはあるまい。おそらく大型戦艦相手に、下手に手だしをすれば地上に大被害が出るだろうからな。
乗組員A: バリア・コントロールよりブリッジへ。バリア・システム不安定です!
グローバル: なんだと!
クローディア: 艦長!

[ スカル小隊 ]
未沙: こんどこそ敵は、本気かもしれないわ。バリアが破られないうちに、すこしでも戦艦をたたいて!
輝: やつらが本気なら、勝ちめはないかもしれませんよ。
未沙: 一条中尉! フォッカー少佐なら、戦闘中にそんな弱音は吐かなかったわよ。
輝: [ 力なく ] 了解。マックス、柿崎、聞いてのとおりだ。ポイントAR−1181の戦艦をたたく、いいな!
マックス: いいも悪いも、マクロスがやられたらおしまいでしょ。
柿崎: そうですよ、隊長!
輝: ようし、ふたりとも死なないていどにがんばれよ! [ バイザーをおろす ]つづけ!
[ スカル小隊、敵艦甲板にとりついて砲門を攻撃 ]

[ カムジン艦ブリッジ ]
オイグル: 敵艦もそろそろ限界ですな。
カムジン: ふっふふふ。これで俺の勝ちだな。

[ マクロス・ブリッジ ]
クローディア: バリア・ジェネレータ、4番、7番出力低下。
グローバル: サブ・システムに切りかえろ!
クローディア: イエッサー。
キム: フィールド安定回路にトラブル発生。
シャミー: 第7コンバータ、臨界点突破。
未沙: バルキリー・ウィンザー中隊全滅。
キム: 非常用員は修復作業に向かってください。
ヴァネッサ: 敵艦隊、レッド・ゾーンに侵入。なおも攻撃続行中!
[ カムジン艦隊の砲撃がつづく ]

[ マクロス・バリア・コントロール室 ]
乗組員A: バリア・システム異常発生! 各作業員は緊急待避、緊急待避!
[ ブリッジの照明が消える ]
未沙: はっ!
クローディア: はっ!
グローバル: あっ!
キム: ああ!
シャミー: ああ!
[ 管制モニタがすべてレッドになる ]
シャミー: このままでは爆発します!
未沙: 全バルキリー隊に告ぐ! 至急遠方に待避せよ。繰りかえす、至急遠方に待避せよ!
輝: 待避だって!?
未沙: バリアが爆発するわ。あなたたちだけでも逃げて!
輝: それじゃマクロスは!?
[ バリアのエネルギーが膨張しはじめる ]
未沙: 逃げて…!!
[ スカル小隊、バトロイドからファイターに変形し、待避行動に移る。膨張したエネルギー波がカムジン艦隊とオンタリオ自治区を飲みこんでゆく ]

[ カムジン艦ブリッジ ]
カムジン: ええい、上昇だ、上昇しろ!
[ カムジン艦のみが上昇して難をのがれる ]

[ スカル小隊 ]
輝: 柿崎、遅れるな、柿崎!
柿崎: ダメです、隊長、間にあいません!
[ 柿崎機、エネルギー波に飲まれて分解しはじめる ]
柿崎: ぐわあああ…!!
輝: 柿崎!
[ 胸の前で十字を切るマックス ]

[ オンタリオ自治区に巨大なクレーターが出現。中心部にマクロスがただよっている。マクロス・ブリッジの照明が消えている ]
キム: 各ブロックは損害状況を知らせてください。
シャミー: 救護班はバリア・コントロール・ルームへ。
ヴァネッサ: 敵、残存部隊はないようです。そのかわり、地上は直径50キロ以上にわたって壊滅状態です。
グローバル: 中心にいたマクロスだけが助かるとは…。
シャミー: 艦長、オンタリオ自治区から緊急電文です。
グローバル: 内容は、見るまでもないだろう…。

[ 帰艦途中の輝とマックス ]
未沙: バリアがささえていたエネルギーがいちどに爆発して、地上が…。オンタリオ自治区には民間人の受けいれも拒否されたわ。
輝: こちらも柿崎がやられました…。
未沙: ああ、そう…。だけどそれでもマクロスは、マクロスの人たちだけは生きのびたわ。

[ マクロス市街地の病院 ]
記者A: ミンメイの様態はどうなんです?
記者B: 再起できるんですか?
レポーターA: カイフンさん、従兄としてまた映画の共演者として、ひと言コメントをお願いします。
カイフン: わたしは、とても疑問に思っています。
記者C: はあ?
カイフン: これまでの戦いで多くの尊い命をうしない、いままた地上に大被害が出たとの噂も伝えられています。
記者D: それがミンメイの入院となにか関係があるんですか?
カイフン: いいえ、ありません。
[ 未沙とクローディアが市街地を歩いていて、街頭テレビに映るカイフンのインタビューに気づく ]
クローディア: 報道管制に芸能ニュースが!
未沙: カイフンさん。
カイフン: 不幸な出来事がつづいているこのときに、たかが過労で倒れた芸能タレントを追いまわしている、あなたがたの気持ちがわたしにはわかりません。
[ 街頭テレビを見る人びとがざわつく ]
カイフン: 軍はすぐに戦いをやめるよう、なんらかの処置を講じられないものなんでしょうか。
[ 「青い風」3人組、街頭テレビを見ている ]
ワレラ: あいつ、戦争をやめろっていってる。
ロリー: 戦争をやめろっていうことは、生きる目的を否定する恐ろしい考えなのに。
コンダ: [ 街を見まわしながら ]だけど、なんとなくわかるような気も、するな。
ロリー: ああ。
カイフン: 戦いをやめるべき策を早急に講じてほしいと思います。戦いはなにももたらしません。戦いのもたらすもの、それは破壊だけです。一刻もはやく、この無意味な戦いから身をひくべきです。
クローディア: こっちは命がけでやってんのに…!
未沙: どんなにやめたくても、やめられないことだってあるのにね。
カイフン: …真の平和は永遠にやってこないでしょう。

[ 輝とマックス、パイロットの控室で沈黙している ]
乗組員B(女): 一条中尉、3番にお電話です。
[ 輝、受話器をとる ]
輝: もしもし。
ミンメイ: あはっ、輝? やっとつかまったわ。
輝: ミンメイ。
ミンメイ: あたしね、倒れちゃったの、ちょっとした過労でね。ただいま中央病院で療養中。このごろいそがしくてね。こんなときにしか休めないわ。あなた、もし暇だったらこっちへ来ない? カイフン兄さんったら、まだもどってこないのよ。
[ 輝、沈黙している ]
ミンメイ: やあだ、お見舞いなんかいらないんだから。ちょっとだけ顔見せて。ねえ、どうして黙ってるの? あなたがケガしたときはちゃんと行ってあげたじゃない。
[ 輝、受話器をおく ]
ミンメイ: なによ、輝ったら。ヘンなの!
[ ミンメイ、受話器をおく ]
ミンメイ: ふ〜う、[ 雑誌をながめて ]うふっ、うふふふ…。

[ 次回予告 ]

ナレーター: ブリタイがもどってきた。3人のゼントラーディ・スパイは、マクロスを脱出。帰るさきは、ブリタイのひきいてきた戦艦1千隻以上を擁する大艦隊である。そんなときマクロスは、宇宙への出撃命令をうけた。
次回、「超時空要塞マクロス」、「パラダイス・ロスト」。

[ エンディング ]

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登場する人びと(登場回数)

一条輝(19)
リン・ミンメイ(19)
早瀬未沙(19)

ブルーノ・J.グローバル(17)
クローディア・ラサール(17)
ロイ・フォッカー(18) - 回想シーンのみ
マクシミリアン・ジーナス(マックス)(11)
柿崎速雄(12)
ヴァネッサ・レイアード(18)
キム・キャビロフ(16)
シャミー・ミリオム(17)

リン・カイフン(5)

ラプ・ラミズ(4)
カムジン・クラヴシェラ(7)
オイグル(6)
ミリア・ファリーナ(4)
ワレラ・ナンテス(11)
ロリー・ドセル(11)
コンダ・ブロムコ(11)

店員A - マクロス市街地のステーキ店
記者A
記者B
記者C
記者D
レポーターA
軍幹部A - 地球統合軍総司令部
軍幹部B - 地球統合軍総司令部
乗組員A - マクロス・バリア・コントロール室
乗組員B(女) - マクロス艦内放送
ゼントラーディ兵士A - カムジン艦
ゼントラーディ兵士B(女) - ラプ・ラミズ艦
ゼントラーディ兵士C - カムジン艦
ゼントラーディ兵士D - カムジン艦

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スタッフ

脚本 … 松崎健一
絵コンテ … 黒河影次
演出 … 秋山勝次
作画監督 … 平野俊弘
原画 … 平野俊弘 垣野内成美 今渡雄一郎 小林明美
動画作監 … 藤高栄光 宮崎葉月
動画 … 手塚由紀 的場敦 アニメ・トロトロ スタープロ

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ノート

柿崎戦死。スカル小隊のなかで唯一エネルギー波に巻きこまれて死亡したのは、カムジン艦隊の戦艦上でバトロイドからファイターへ変形するのが、ほかのふたりにくらべてわずかに遅れたためだった。

ピンポイント・バリアを改良した「全方位バリア」初出。

輝がフォッカーの機体をうけ継ぎ、バーミリオン小隊はスカル小隊に改称された。

未沙は全方位バリア暴発のとき、死を覚悟する。

柿崎の戦死に打ちのめされていた輝は、過労で倒れたミンメイが病室からかけてきた電話を黙って一方的に切る。輝としては、ミンメイにたいするはじめての否定的な行動といえる。

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