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野良猫 捕獲か共存か 自治会、割れる対応

2009年02月19日

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10年近く、1人で猫の不妊・去勢をしながら餌やりを続ける女性(83)。「人の身勝手で捨てられた。かわいそう」。えさ代は月10万円近くになるという

 住民同士が裁判で争うなど、野良猫の餌やりをめぐるトラブルが絶えない。立川市でも、1匹残らず「捕獲」するのが最善と市に対応を迫る自治会があれば、一方で住民が世話して「共存」する自治会もある。こうした現状を踏まえ、市は新年度から野良猫に関するトラブル解決の支援に乗り出す。(須藤龍也)

 多摩川河川敷に接する立川市南部の柴崎町。住民の青木誠さん(67)は07年12月、河川敷で餌やりをしていた女性に注意しようと袖を引っ張ったところ、逆に暴行容疑で警察に訴えられ、取り調べを受けた。「こんな悔しい思いは生涯忘れられない」

 この地域では、野良猫が庭を荒らし、道ばたにフンが転がるなど被害が絶えないという。河川敷という場所がら、散歩ついでに餌やりをする人も少なくない。地元自治会「柴五会」は今年、野良猫を捕獲し、餌やり禁止を求める約600人の署名を数回に分け市に提出した。加藤富博会長は「猫アレルギーで病院に通う住民もいる。無責任に餌やりをする人たちと共存はあり得ない」。

 同市北部、栄町の自治会は対照的に野良猫と「共存」の道を選んだ。昨年3月、住民有志が「栄町猫対策委員会」を発足。約500メートルの遊歩道の生け垣に住みついている40匹以上の猫に不妊・去勢手術を施し、寿命まで世話する。俗に言う「地域猫」活動だ。

 野良猫に関する苦情や相談会を14日に開くなど、啓発活動も熱心だ。ただ、獣医師の好意で相場の半額以下とはいえ、1匹5千〜1万円かかる手術費用はカンパが頼り。発足1年で100万円を超え、資金調達も限界に来ている。

 代表の宮本充さん(50)は「もはや個人のレベルで解決できる問題ではない。市の重大な課題といってもいい」。

 市はこうした声を受け、栄町猫対策委員会のような団体を支援する「地域猫活動推進事業」に新年度から取り組む。19日発表される09年度当初予算案に約80万円が盛り込まれる予定だ。

 清水庄平市長は昨年、朝日新聞の取材に「手術費用の助成やトラブル解決に市が仲立ちするなど、包括的な支援を考えたい」としていた。

 野良猫については、三鷹市に住む将棋のプロ棋士が、猫への餌やりをめぐって住民から損害賠償請求訴訟を起こされるなど住民同士のトラブルになるケースが増えている。一方で、荒川区が罰金を科して餌やりを禁止する条例を4月に施行するなど行政の動きも出てきた。

 解決策はあるのだろうか。

 「捕獲も共存も、野良猫をなくしたいという本来の趣旨は一緒なんですけどね」

 こう語るのは、都動物愛護相談センター多摩支所(日野市)の小沢公男獣医師だ。不妊・去勢をした野良猫が増え、次々寿命を迎えれば個体数は自然に減る。とはいえ、目の前に野良猫がいる現実が耐えられない人には、受け入れがたい話といえる。

 小沢獣医師は、互いに歩み寄れる環境づくりのために次の三つを提案する。猫好きには(1)トイレや餌場を分散し、猫を1カ所に集めない(2)餌やり後の掃除の際、街のごみ掃除も一緒にする、猫嫌いには(3)「フンを憎んで猫を憎まず」の気持ちで――。

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