【ローマ藤原章生】ローマで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、ろれつが回らない状態で記者会見に出席し、辞任に追い込まれた中川昭一前財務・金融担当相が、会見直後に訪れたバチカン博物館で陳列品の石像に触れるなどマナーの欠ける行いをしていたことが、同行者らの証言でわかった。中川氏は博物館でも政府代表とは言い難い姿をさらしていた。
今月14日午後4時(日本時間15日午前0時)すぎ、ローマ中心街のホテルで、眠り込みそうな表情で会見を終えた中川氏は、その足で博物館に向かった。イタリアを去る間際の2時間の「視察」で、当初から予定に組み込まれていた。
財務省職員を伴った中川氏を現地の大使らが案内する形で、一行10人は博物館職員と共に館内を回った。午後4時の閉館時刻を過ぎていたため、一般客はいなかったという。
その際、中川氏は館内を好きに歩き回った。触ることを禁じられている石像を2回ほど触り、一度は警報のブザーが鳴った。
疲れていたようだが、酒臭くはなく、酔っている様子はなかったという。同行した上野景文駐バチカン大使は「天皇陛下が(礼儀正しく)視察するような形でなかった。美術が好きで触ってみたかったようだが、周囲が振り回されたり、騒ぎになるようなことはなかった」と話している。
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■ことば
ローマ市内にあるバチカン市国が誇る世界屈指の美術館。歴代の法王が集めてきたコレクションが収蔵されている。ミケランジェロの壁画「最後の審判」や「楽園追放」などの天井画があるシスティーナ礼拝堂など、見学コースは全長7キロ、総面積は約4万2000平方メートルに及ぶ。
毎日新聞 2009年2月21日 東京夕刊