相馬市新沼の「公立相馬総合病院」で、昨年11月から休診していた産婦人科に、県外から医師2人が着任することになった。3月2日から同科の診療を再開する。県内では産科医不足が深刻化しており、県医療看護課は「一度休診した産婦人科が再開できたのは、ここ数年聞いたことがない」と驚いている。【関雄輔】
着任するのは、ともにいわき市出身で県立医大卒の、坂本陽吉医師(62)と木村憲三医師(59)。坂本医師は東京都の地域周産期母子医療センターなどを経て、静岡県伊豆市の民間病院に勤務。木村医師は婦人がん検診の専門家で、大阪府堺市内の民間病院からの転勤となる。2人とも県内に移住した。
相馬総合病院は相馬市と新地町が運営し、産婦人科の外来患者は年間約3600人(07年度)。相双地区唯一の新生児集中治療室(NICU)を備え、男性医師1人が勤務していたが、昨年10月末で退職していた。
病院側は当初、県立医大や東北大医学部に医師派遣を要請したが決まらず、県外で後任を探していた。熊佳伸院長が同窓生の坂本医師を勧誘したところ、快諾を得た。坂本医師が「産科はチーム医療が大事」と木村医師を迎え、2人の勤務が決まった。
相馬市役所で会見した坂本医師は「産科は形を変えた救急医療。2人で力を合わせて診療にあたりたい」と語り、木村医師は「年をとってふるさとに帰りたい気持ちもあった。微力だが地域医療に力を尽くしたい」と抱負を述べた。
県によると、昨年1年間で産婦人科を休診した病院は、相馬総合病院を含め3病院あるが、他の2病院(県立南会津病院、坂下厚生総合病院)は再開のめどが立っていない。県は「県の『ドクターバンク』もまだあっせん例がなく、医師確保は難航している。2人同時に確保できたのは極めて珍しい」と話した。
毎日新聞 2009年2月21日 地方版