日本経済新聞社の社員株主制度を巡る訴訟で、株式譲渡ルールは有効という判断が最高裁判決で示された。報道の自由を守るため日刊新聞法に基づく現行のルールが必要だという日経の主張が認められた。
1、2審に続く司法府の一貫した判断を受けて、私たちは言論報道機関としての社会的使命を改めて自覚し、社の理念どおり、中正公平な報道に徹していきたい。
日経は外部からの介入を防ぎ報道の中立性を守るため、株主を役員、社員、一部OBなどの事業関係者に限定している。株式の売買は日本経済新聞共栄会を通じ、譲渡する時も買い取る時も1株100円とする。
日経の元社員から持ち株を100円を超える価格で直接譲り受けた別の元社員が、自分が株主であることの確認を求めた案件などに関して、この譲渡ルールの正当性が争われた。
最高裁判決は、日経が日刊新聞法1条に基づいて株式の保有資格を限定している事実などを指摘し、その合理性を認めた。そのうえで、譲渡した元社員は「将来の譲渡価格が取得価格を下回ることによる損失を被るおそれもない半面、およそ将来の譲渡益を期待しうる状況にもなかった」ことを株式購入時に認識していたと認定。従業員などが株式取得を強制されていないことや社が配当を続けている事実も踏まえ株式譲渡ルールは有効だとした。
新聞事業の環境は厳しくなっている。インターネットの普及や景気悪化による広告収入の減少、若者の活字離れなどが原因だ。海外ではメディアの買収も増えた。この環境変化に対応して日経は経営改革を断行し、自由な報道の裏付けとなる健全な事業基盤の維持に努めている。
こうしたなかで海外を含む外部の資本が入り込み報道を著しくゆがめるようでは困る。特に日経は経済情報が生命線だ。企業の大株主がいるために、その企業の公正な批判をできないといった事態を避けなければならない。日経の譲渡ルールの今日的な意味合いは増しており、その正当性が認められたのを歓迎したい。
今回の判決を機に、民主主義と市場経済の擁護・発展のため、読者の期待にこたえて力を尽くす決意である。