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2009年2月21日

◎県の新年度予算案 内需促す布石が評価のかぎ

 石川、富山県が発表した新年度当初予算案を評価する重要なかぎは、内需拡大を促す布 石を的確に打てたかである。日銀金沢支店は北陸の景気について「大幅に悪化」と基調判断を引き下げ、急降下する厳しい現実を認めた。国会審議中の政府の新年度予算案も内需拡大を柱にしているが、県にはその執行の一端を担うと同時に、地域経済の実態に即した独自のてこ入れ策がいる。

 景気後退期では好況期以上に財政需要が高まるのは論を待たない。当初議会でも予算案 をただ追認するだけでなく、不況に歯止めをかける手立てが適切かどうか、個々の利害を超えて本来のチェック機能を果たしてほしい。

 石川、富山県の当初予算案は急速な景気悪化と、それに伴い大幅な税収減が見込まれる なかで、知恵と工夫がまさに試される編成作業となった。製造業を中心に生産調整が加速し、失業者が日増しに増加する局面では予算編成が守勢を強いられるのもやむを得まい。

 中小企業向け制度融資の大幅拡充などに加え、それぞれ四千人規模の大がかりな雇用対 策を打ち出したが、企業に雇用維持を頼り切れなくなっている現状では行政がその受け皿を担うのは当然である。問題は手厚く盛り込まれた再就職支援策がどこまで求職者のニーズと合致するかである。

 戦後最長を記録した景気も外需依存であるがゆえに、輸出が不振に陥れば風船がしぼむ ように成長が縮む日本経済の構造的欠陥が浮き彫りになった。こうした構図は北陸経済にも当てはまり、産業構造の転換や新たな成長分野の育成は県に課せられた大きな宿題といえる。長い目でみれば、それが雇用基盤の安定化にも資するはずである。

 石川県では次世代産業育成として「炭素繊維」「環境」「バイオ・アグリ」の三分野を 重点支援するが、地域経済の内需という視点も忘れず、景気を下支えする分野を見定めたい。富山県は不況期でも比較的好調な医薬品分野などをさらに強くし、産業のすそ野を広げていく必要があろう。実感の伴う景気回復の糸口を見つけるには、行政の先見性や大胆な発想転換も求められている。

◎円安下の株安 政治停滞が「日本売り」に

 東証株価指数(TOPIX)が二十日、バブル経済崩壊後の安値を更新し、一九八四年 一月五日以来、二十五年ぶりの安値水準に落ち込んだ。東京外国為替市場でドル買い、円売りが進み、一ドル=九四円台の円安に振れるなかでの株安である。ニューヨーク株式市場のダウ工業株三十種平均が六年四カ月ぶりの安値を付けた影響もあるとはいえ、日本の景気指標の悪化や政治の停滞に嫌気を差した投資家などが日本株を売り、リスク資金の逃避先を円からドルにシフトさせているからだろう。これ以上の予算審議の遅れは「日本売り」を加速しかねない。

 ニューヨーク株式市場は米ビッグスリー(米自動車大手三社)の追加融資問題や金融シ ステム不安から金融株が軟調で、ダウ平均を二〇〇二年十月以来の安値水準に押し下げた。従来ならこんな局面では円が買われ、円の独歩高になってもおかしくないはずだが、「円安下の日本株安」という新たな状況が生まれた。東京株式市場の日経平均株価が七五〇〇円の節目を割り込んだのは、昨年十月二十七日以来のことだ。円安でも輸出関連株に買いが入らない危機的な状況である。

 これはオバマ政権が七十二兆円の新たな景気刺激策を成立させるなどして着々と成果を 挙げる一方、日本では財務相の辞任で麻生政権が痛手を受け、予算審議に支障が出るなど不透明感がさらに増していることが嫌気されたからだろう。

 加えて、昨年十−十二月期の国内総生産(GDP)速報値が年率で12・7%と急落す るなど、日本の実体経済の悪化が著しいことも円売り、日本株売りにつながったと考えてよいのではないか。政治の迷走が日本経済の足カセとなっているのは間違いない。

 国会では二次補正予算が成立したものの、関連法案はまだ成立しておらず、〇九年度予 算案とその関連法案は衆院で審議中である。一刻も早く予算を成立させ、追加の景気対策を考えなくてはならない時期である。各国が景気対策に必死になっているときに、日本だけがカヤの外でよいわけがない。


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