倉敷新聞「常に未来の公園めざせ 怠りなく経営努力」
倉敷新聞1996年8月25日付は「開園まであと11カ月 倉敷チボリ公園 >完<」の記事を掲載しています。紹介します。
デンマーク・チボリ公園は、テンマーク国王クリスチャン八世の時代の一八四三年、今から百六十三年前に、カール・ステンセンが国王の命により創設したヨーロッパ屈指の公園て、デンマークの首都コペンバーゲン市に同年八月十五日、開園した。カール・ステンセンは、当時「チボリが完成することはない。チボリは常に未来の公園だ」と言ったと伝えられている。百六十三年の歴史があるが、時代に即応してハードもソフトも変遷しており、まさに芭蕉の俳諾理念の「不易流行」である。
倉敷チボリ公園も本家のノウハウを導入して、その理念を継承、歴史を刻み始めるわけだが、岡山県主導の公共色の強い第三セクターで運営となると、その時代、時代の政治の風向きで運営方針が風見鶏のように変化する可能性はいなめない。最も危険なのは、入園者が皮算用を下回った時、参加自治体のお荷物になり、現在の公共企業の、倉敷市でいえば、国民宿舎のように一般会計から補填しなけれはならなくなり、累積赤字が増え続けるようだと、経常出費のかさむ、エンターテイメントをリストラ、質が落ちると入園者はますます減少するという悪循環が懸念される。企業組織とはいえ、自治体が大株主の場合、往々にして苦しい時の自治体頼みに陥り易く、経営努力より、そちらに比重を置いた運営になりがちなのが、最も懸念されるところ。
岡山市制百周年記念事業として岡山チボリ公園を計画したときは、年間四百五十万入から五百九十五万人の入園者数を見込んでいたが、倉敷チボリ公園は年間二百万人を基準にしての運営計画は、堅実といえるが、本家のデンマークチボリ公園のように、デンマークだけでなく、広くヨーロッパ諸国からの入園者があるのと、いささか趣きが違う。日本には、近年テーマパークが雨後のタケノコのように増え、目新しさに欠けてきた。それに日本人は新しがり屋の習癖があって、すぐ飛びつくが、すぐ飽きて話題にものぼらなくなる。四国のレオマワールドにしても高梁のワンダーランドにしても、その傾向が経営をひっ迫している。
公共性、公益性を重んじると、入園者ニーズとはうらはらな施設にしなければならない面もあって民間営業のように抜本的な手も打てない場合も生じてくるだろう。ともかく、走り出したわけだから、県民、市民の重荷にならないように育てなければ、二一世紀、二二世紀へと未来へつなげない。これまで議論してきたことを教訓にして倉敷チボリ公園にどどまらず、全国に世界に認知される公園になることを願う。(おわり)