麻生内閣の支持率が急落した。共同通信社が十七、十八両日に実施した全国緊急電話世論調査で、今月七、八両日の前回調査に比べて4・7ポイントも下がり13・4%にまでダウンした。逆に不支持率は76・6%で、前回より5・7ポイントの急増だった。
調査は、中川昭一前財務相の辞任を受けて行われた。辞任自体に関しては84・1%が「当然だ」と答えた。醜態を世界にさらした中川氏への批判の強さがあらためて浮き彫りになった。
内閣の不支持理由は「首相に指導力がない」28・4%、「首相が信頼できない」23・6%などで、麻生太郎首相の資質が厳しく問われる結果となった。自民・公明それぞれの支持層の約55%が不支持と回答するなど、与党支持層の「麻生離れ」も鮮明になった。
また、望ましい衆院解散・総選挙の時期は「今すぐ」と「二〇〇九年度予算成立後の四月ごろ」を合わせて、「四月まで」が70・8%に達した。まさに麻生政権は土俵際に追い込まれた状態といえよう。
本来なら自民党は〇九年度予算の成立に向け、党内が一致結束して当たらなければならないはずだ。しかし、麻生首相の郵政民営化見直し発言を、小泉純一郎元首相が痛烈に批判したことで党内に衝撃が走り、首相の求心力の一段の低下を招いた。
さらに中川前財務相の辞任劇が追い打ちをかけた。国会審議で最大の焦点になっている予算を担当し、景気対策の要でもある大臣が途中で辞めるという異常事態である。しかも首相の盟友だ。政権へのダメージは計り知れない。外からだけでなく、内からも「麻生おろし」の声が公然と語られるようになってきた。政局の混迷は避けられない情勢だ。
麻生首相は〇九年度予算成立後にも追加経済対策を発表し、ロンドンでの金融サミット(四月二日)に出席する意向という。衆院解散・総選挙は七月の東京都議選後に先送りするとの見方が強いようだ。これに対し、政権奪取を狙う民主党が国会運営で与党に協力する可能性は、これまでの経緯からみても、とても望めない。
政治が対立や混沌(こんとん)に終始している間にも、国内景気の落ち込みは一段と深刻さを増している。経済対策はいっそうの迅速さが求められる。ここは国民の支持を得た政権に期待するしかないだろう。麻生首相は予算を通過させたら、速やかに衆院解散・総選挙に踏み切り、国民に信を問うべきだ。
世界的な不況の中、春闘のリード役とされる大手自動車メーカーと電機メーカーの各労組が賃上げの要求書を経営側に提出し、約一カ月間にわたる二〇〇九年春闘の労使交渉がスタートした。
三月期決算で赤字に転落見通しのトヨタ自動車の労組は、賃金改善分として前年より二千五百円増の四千円を求めたが、経営側は景気悪化を強調し、「到底受け入れがたい」として四年ぶりの「ベアゼロ」の方針を表明した。逆風は自動車産業だけでなく他産業にも及びそうだ。
米国発の金融危機で、わが国の景気は急速に悪化し、企業は存立を危うくする厳しい状況に陥っている。不況の影響で雇用問題は深刻化する一方だ。派遣従業員や期間従業員など非正規労働者の解雇や契約解除などが大きな社会問題になった。リストラの波はさらに正社員にまで押し寄せている。
経営側は昨年決めた春闘の交渉指針で、雇用確保についての表現を「最優先」から「努力する」に後退させた。賃上げも強く否定している。今春闘で、三菱自動車のようにベア要求を断念した組合も出ているのは、賃上げよりも雇用確保を選んだ結果だ。経営側も苦しい環境にあるが配慮すべきだろう。
連合は物価上昇による目減りを取り戻すため、八年ぶりにベースアップを掲げた。「賃上げこそ最大の景気対策」と主張し「雇用も賃上げも」と要求している。輸出が落ち込んでいる現状では、賃上げによる個人消費の拡大など内需によってしか景気を浮揚させる手はなかろう。景気拡大期にも労働者の所得は押さえ込まれ消費に回らなかったことも忘れてはなるまい。
例年以上に厳しい交渉だが、労使の間に横たわる大きな溝を解消する努力を求めたい。
(2009年2月20日掲載)