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更新:7月10日 11:00インターネット:最新ニュース

「FIFA公式サイトが韓国サポーター締め出し」の裏側

 韓国のサッカーファンが6月24日以降、国際サッカー連盟(FIFA)のオフィシャルサイト「FIFA.com」から締め出されている。サッカーワールドカップ(W杯)で決勝トーナメント進出をかけたスイス戦、2―0で敗退した韓国のサポーターは「誤審で負けた」と大騒ぎ。「500万人が抗議すれば再試合になる」とのうわさがネット上を駆け巡り、サポーターがFIFAのサイトに殺到したからだ。

■不満だらけの敗北

韓国からFIFAのサイトへアクセスすると

「Access Denied You don't have permission to access "http;//www.fifa.com/"on this server.」

というメッセージだけが登場し、サイトを利用できなくなっている(29日時点)。

FIFAの公式サイト

 この問題の発端は韓国時間で24日の韓国対スイス戦直後から始まった。24日午前4時からの試合なのに、前日の昼ごろからソウル市庁前広場、サンアムワールドカップ競技場、全国各地の運動場や公園には100万人もの人が応援のために集まった。

 筆者も14万人が集まったソウル市庁前広場にいた一人だ。高校生や大学生のグループはもちろん、赤ちゃんを連れた家族やスカーフを巻いたアラブ系の女性まで、韓国で今年最大のヒット商品といわれる「レッドデビルの光る角がついたカチューシャ」を頭につけ、真っ赤な衣装に身を包んだ。夜通し中央ステージに登場する人気歌手のライブを観ながら踊ったり、応援練習をしたり、「こんなに騒いで、果たして午前4時から応援できるだろうか」とへとへとに体力を消耗しきったころに、いよいよ試合開始となった。

 各国の新聞でも掲載されるお馴染みの大型国旗が登場し、「デ〜ハンミグック」を数千回は叫んだ。

 試合では選手同士がぶつかるたびになぜか韓国のファウル。スイス選手の2度のハンドも審判は無視するなどスイスの肩を持つような判定が続いた。極めつけが疑惑のゴール。副審はオフサイドと判定したのに主審はスイスのゴールを認め、副審のオフサイド旗が揚がるのを見てプレーを止めてしまった韓国は結局2―0で負けた。韓国の選手も国民も悔し涙を流した。

■メールで広がった抗議運動の輪

 問題はここから。試合終了後間もなく、ソウル市庁前広場では携帯のショートメッセージで「試合終了後24時間以内にFIFAへ500万人が抗議すると再試合になるそうだ」との噂が広がり始めた。「早くこの情報を広めなくては!」と、謎のショートメッセージは瞬時に拡散し、ブログやポータルサイト、コミュニティーサイトを巻き込んで数時間で400万通もの抗議メールがFIFAへ殺到することになった。

 FIFAのサイトのあらゆる掲示板は、再試合を要請する数千件の書き込みでいっぱいになった。うろたえたFIFAは一時的な回避手段として韓国のIPアドレスからFIFA.comにはアクセスできないようにネットを遮断してしまった。だが一部のサポーターは「FIFAが韓国を無視した」とさらに興奮し、第三国のIP経由でFIFAに抗議をし続けている。

 試合終了後、市庁前では高血圧で20代の青年が死亡する事故もあった。警察には「スイス大使館を爆破してやる」「審判を殺してやる」との脅迫電話がひっきりなしにかかってきた。FIFAだけではなく駐韓スイス大使館、スイス観光庁のサイトも抗議の書き込みやメールが後を絶たないという。

 韓国のサッカー協会は「FIFAに500万人が抗議すると再試合可能などという噂は全く根拠がないし、再試合などあり得ない。去年9月のワールドカップ予選、バーレーンとアラブ首長国連邦(UAE)の試合で、主審がペナルティーキック規定を明白に間違い、再試合となった事例はあるが、今回とは状況が違う」と抗議を中断するよう呼びかけている。

■韓国サポーターの「ネティケット」は改善されるか

駐車場の巨大スクリーンに向かって何千人ものサポーターが声援を送った〔著作権:AP.2006〕

  この数日間、多くのネティズンが「負けたのは事実だからもう止めよう」「国際的な恥、みっともない」と、興奮したサポーターがFIFAにアクセスするのを阻止しようとした。だが多くのサポーターが「負けるはずがない」と思い込んでいただけに、「再試合でもう一度選手らにチャンスを与えたい」と1人2人で始めた抗議メールは、いつの間にか組織的行動につながり、抗議メールは400万通にも達してしまった。

 スイス人であるFIFAのブラッター会長は29日、「アジアは少なくとも1チームはベスト16に入り込むことができたはず。例えば韓国はもう少しのところまで来ていた。アジアのサッカーのためには良いことではなく残念だ。しかしこれは事故だったと思う」と韓国を意識したコメントを述べた。

 さらに、「相手選手の服を引っ張ったのがある時は見逃され、ある時は反則となる。背後からのタックルを警告せず試合を続行したこともあった」「ワールドカップが終わったら、FIFAが誤審問題の改善議論を先導して行っていくつもり」と、判定に一部問題があったことを認めるような発言もした。

 イギリスのマンチェスターユナイテッドで活躍する韓国代表のパク・チソン選手は「韓国サポーターはサッカーが好きなのではなく勝つのが好きなだけ」と苦しい表情で話したことがある。韓国の国内リーグ(Kリーグ)には全く関心がないのに、ワールドカップとなると全国民が「精神力で勝て!」と奇跡を望むのはいかがなものか。

 よく言われることだが、誤審も試合の一部だ。今回の騒動も、敗退を認めない「屈折した愛国心」が異常な執着を生み出した結果ではないだろうか。ネット上の意見が一般市民の世論と考えられがちだが、集団のパワーを悪用するなら幼稚な「サイバー暴力」といっていい。

 韓国のシンクタンクは「韓国チームの敗退によって最も損をしたのはスポンサー企業。ワールドカップマーケティングの失敗で16兆ウォンもの経済効果が消えた」と指摘する。経済効果も大切だが、サッカーをスポーツとして楽しめない限り、韓国のサッカーもネティズンのネチケットも向上しないかもしれない。

-筆者紹介-

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

JIBC会長・IT評論家・Webプロデューサー

略歴

 1974年韓国ソウル生まれ。日本で高校まで過ごし、韓国へ。梨花女子大学を卒

業後、韓国大手企業の日本担当部署に務める。現在、韓国のIT企業の海外進出サポート、Webサイト企画から構築までを指揮するプロデューサーを務める。また、韓国で唯一、日本とのインターネットビジネス交流を図る非営利団体JIBC(http://www.kjibc.org)の会長、韓国政府機関、公社のWebサイト海外プロモーション顧問として、海外向け韓国市場調査などのリサーチを行うJNJネットワークのシニアコンサルタントも務める。日韓で雑誌や日刊紙、TV、ラジオなどでIT評論家としても活躍中。

 著書として『韓国インターネットの技を盗め』(アスキー出版)、韓国で話題を巻き起こした『日本インターネットの収益モデルを脱がせ!』(ドナン出版)がある。

メール・アドレス<kjibc@kjibc.org

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