【ソウル草野和彦】韓国を訪問したクリントン米国務長官は20日午前、ソウルの外交通商省で柳明桓(ユミョンファン)外交通商相と会談した。北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射予告ともとれる発言をするなど緊張が高まる中で、米韓は北朝鮮の核保有を容認せず、6カ国協議を通じて北朝鮮の核廃棄を推進していくことを再確認した。
クリントン長官は会談後の記者会見で、北朝鮮に対し「弾道ミサイル発射に関連したすべての行動と、6カ国協議に影響を及ぼすすべての挑発行動を中断すべきだ」と促した。さらに「韓国との対話を拒否しながら、米国と関係改善を期待するのは難しい」と述べた。
クリントン長官はミサイル問題を含む「すべての懸念材料」について6カ国協議で話し合う用意があることを指摘。ただ最も早急な対応が必要なものとして、北朝鮮の寧辺(ニョンビョン)核施設の無能力化と、核計画申告の検証枠組みを挙げた。
また、オバマ政権の北朝鮮問題担当の特別代表(特使)として、スティーブン・ボスワース元駐韓大使を任命したことを正式に発表した。
クリントン長官は前日、金正日(キムジョンイル)総書記の後継体制を巡り、北朝鮮が「より挑発的な態度を取る可能性がある」と懸念を表明。この発言が北朝鮮を刺激することは心配しないとする一方で、この日は「我々は現在の北朝鮮政府と交渉し、6カ国協議に関与させる必要がある」と述べた。
柳外交通商相は日本同様、米国のアフガニスタン戦略の見直しに積極的に参加する意向を伝えた。両外相は懸案の米韓自由貿易協定(FTA)の批准問題、国際的な金融経済危機への対応などでも意見交換した。
会見後、クリントン長官は李明博(イミョンバク)大統領と食事をしながら会談。李大統領は「南北関係が難しい時に訪問してくれた」と謝意を表明。オバマ大統領との首脳会談を4月のロンドンでのG20(金融サミット)開催時に開くことで合意した。クリントン長官は「オバマ大統領は李大統領と会うことを楽しみにしている」と語った。
長官は20日夜、最後の訪問地の北京に入る。
毎日新聞 2009年2月20日 東京夕刊