
20日ギリに滑り込み連続更新。
解説記事の公開期間は20日までということでしたが
さすがに30分の生存時間はどうかと思うので、今月いっぱいまでに延長します。
書店から掲載誌はなくなってると思うので
明日あたりネームをアップして、ついでの洗いざらいをやってしまおうと思います。
次号がでたから雑誌はもう処分しちゃったよ、という方はそれを参考に記事を読んでいただければ。
ドラゴンエイジPure誌掲載の読みきり作品「シンデレラシューズ」の全頁解説第15回です。
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これ以上ないほどに、果てしなくネタばれなので
必ず本編を読んだあとで読みすすめてください。
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■p66,67(p213,214)
再びマザーグースを歌い、雄雄しい表情で行進するアマリ。
以前の時の憧れの眼差しで空を見上げるのではなく
靴を土塗れにしながら自分の歩む先を見据えています。
前段では親子の絆を断つように見えた光が、ここでは暗雲を追い払い、アマリの門出を祝福する光に感じられるようにしました。
アマリの成長をうかがわせる重要なシーンなので、
初期ネームからページ増量で気合を入れて描いてます。
■p68(p215)
一度は見失ったお互いの”半身”が再び巡り合うシーン。
それを見送るように一人窓際に立つ父親。
父親は自分の家からアマリを追い出す訳ですが、鉄格子が嵌められた窓は牢獄のようにも見えます。
社会規範という要塞に立てこもる権威者の姿であり、
かつての”半身”に置いてけぼりにされた孤独な人間の姿でもあります。
■p69(p216)
自由を手にしたアマリ。
背景に飛行船を描くか迷ったんですが、開放感を出すのに空にしました。
どんだけ高いとこにあるんだよって話ですが、ここは雰囲気優先で。
つーか、飛行船を描く時間がなかったのが正直なところです。
到着表示の看板には、サンダーバード6号のパロディで
SpaceShip R101というのを入れようと思ってましたが、やっぱり時間がなかった…。
しかし、元ネタの元ネタが墜落した飛行船(R101)がというのも
縁起が悪いので入れなくてよかったかもですね。
新世界への期待ということで
テロップの靴べらの意匠はオリーブの若枝をくわえた鳩を描いてもらいました。
聖書の方舟のあれです。
■p70(p217)
空に手をかざすアマリ。
同様の構図は前にも出ましたが、ここでは障壁となる窓ガラスはなく
今にも飛行船に手が届きそうな感じにしてあります。
「宇宙中をまわってね!」
最初は「太陽系中をまわってね!」でしたが
重い展開のあとなので、より胸のすくフレーズにスケールアップ修正。
■p71(p218)
アマリに影響され共に歩むことに決めるロレンゾ。
重大な決断のために、今後二人でさまざまな社会的な圧力と戦うことになるので
けして明るいばかりの見通しではないと知っているのですが、
少なくとも自分に誠実になれたということが、ロレンゾの心からわだかまりを消し去っています。
■p72,73(p219,220)
屈託のない「大好きよ」の言葉に、自分はまだ王子様ではないことを改めて思い起こすロレンゾ。
この見開き背景は最初クロイドン宇宙港だったんですが
王子様を求めて旅立つやんちゃなもう一人のシンデレラを見送るのは、やはり時計塔がいいだろうということで。
…とか尤もらしいことを書いといて実はこの見開きページ、締め切りデッド日前日まで真っ白でございました…。
まともな方法では到底間に合わない状態で、ビッグベンの写真加工をベースにしようと思いついたのは怪我の功名というかなんというか。
結構こういうギリギリでの思い付きが功を奏すことは多いです。
■p74(p221)
最後で再びメインモチーフである靴を持ち出したところで、物語は終わります。
標準的な終わり方を考えると、俺たちの戦いはこれからだ的な二人のシーンでいいわけですが
ここは少しだけひねることにしました。
結構迷ったのですが、印象的なところでぶつッと切るのは
より余韻を持たせることができる手法だと思いこの形に。
この物語には、重く非常にデリケートな問題を含んでいますが
最後は希望のある気持ちのいい読後感になるようにこだわりました。
作品に不備や思慮不足などの欠点は沢山あると思いますが
登場人物たちから少しだけ元気が貰えたという読者がおられたら
僕ら送り手の目標は完遂で、これに勝る喜びはありません。
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