がんのホスピス・人権教育の場に/退所者　市の協力を要望

　【名護】「ハンセン病問題基本法」の四月施行を前に「愛楽園将来構想フォーラム」（主催・同実行委員会、沖縄愛楽園自治会）が十五日、名護市民会館で開催され、約七百人が詰め掛けた。元患者や市民らによるシンポジウムでは、がんのホスピス、人権教育の場としての活用などが提案され、地域住民が一体となって愛楽園を利活用していくことを確認した。若者による差別偏見を考える演劇も上演された。

　シンポジウムは、フリーライターの山城紀子さんの司会で進行。今回、公の場で初めて名前を明かした同園退所者の平良仁雄さんは「私たちに対する社会の偏見差別はまだ残っているが、熱い思いで私たちを支えてくれる人々も大勢いる」と話し「名護市ももっと力を注いでいただき、責任を持って愛楽園の将来を考えてほしい」と要望。愛楽園自治会の金城雅春会長は「基本法は成立したが、ただ待っているだけでは何も変わらない。みんなでこの法律を生かしていこう」と呼び掛けた。

　北部地区医師会の上地博之副会長は「愛楽園は北部の数少ない医療機関で自然豊かな場所にある。がんの終末期を過ごすホスピスとして活用できないか」と提案した。

　名護市の宮城秀樹健康福祉部長は「ハンセン病の資料館づくり、児童・生徒の人権教育の場としての活用など、市の方針としてどのように位置づけていけるかを考えたい」と述べた。

　名護市在住の芥川賞作家の目取真俊さんは「親のちょっとした一言で、子どもの意識は変わる。学校や行政が教える前にまず、家族で向き合ってほしい」と話した。

　シンポジウムの後に上演されたＨＩＶ感染者とハンセン病元患者の触れ合いから、差別や偏見を考える演劇「光りの扉を開けて」には地元の中高大学生十七人も参加。子どもたちのひた向きな演技に、会場では目頭を押さえながらうなずく人たちの姿もみられた。

　島袋恵さん（４２）＝名護市、主婦＝は「いろいろ考えさせられた。これからも継続的に開催してほしい」と話した。