モチーフの話1

一昨日は約2週間お世話になる場所の設営&引越し。
おきなまろさんと5mの距離で仕事をすることになります。
明日からは教務補助さんが全員集まるから約100名の大所帯に。
とうとうムサビ入試も始まっちゃうんだな・・・。


先日のエントリーに書いたとおり、去年まで入試のモチーフ発注&準備担当をやってました。
この話の続きを。


八百屋さんに行って、「パプリカ赤と青と黄色をそれぞれ2400個とカボチャを1000個お願いします。あ、ブロッコリーは2500個とリンゴは富士を500個、紅玉を300個ね」と発注し、納品されたら一個一個傷んでないか確認し、各教室ごとに準備する・・という仕事です。
必ずしもサンプルはなく、出題者が「こんな感じのもの」と適当に書いた絵を見せられて、それをイメージして探してくるのも仕事。

去年は日本画の試験で金魚が出たから、熱帯魚屋さんで金魚を買って、「金魚の餌やり&水交換」もしばらくやりました。
自画像が出題された年は、A3サイズの鏡を2000枚近く磨きました。
「何これ?ベストキッドの修行?『入試とみせかけて、これは手羽を強力にするための修行なのじゃ!』と油絵の斉藤先生みたいな人から言われたりするの?」と思いながら。
美大でしかありえない仕事ですよ(笑)

面白い仕事ではあるんだけど、これが大変で。
モチーフ業務の格言。

「ありそうなものはない」


出題者から「どこのスーパーでも売ってるでしょ。アレでいいんです。普通ので」と言われるんだけど、大抵見つからないのね。
自分も「確かにどっかのスーパーで見たことがあるなあ」と思って探しに行くんだけどそれがなかなか見つからない。
探すとない(笑)
あったとしても、そのお店じゃムサビ入試で使う量を確保できないことも多く、日本中のストックをかき集めたりもしました。

また、タライや麦藁帽子が季節物だと知ってました?
いつでも店頭に並んでるように見えるけど、これは夏の季節品で入試の時期だと在庫が全然ないのね。
なので新潟県の製造元にお願いして、タライを特注したことも。
カナダライが200個ぐらい必要で、途中経過を聞くために工場に電話したら、「職人がガンガン打ち付けております」と言われたっけ。

工デの試験で「木の枝を4本ずつ受験生に配布」ってモチーフがあって、四国の会社に電話して枝を受験生分切ってもらったりね。4000本ぐらい?
全然エコじゃないよね(笑)



逆に、サンプルを取り寄せて、先生から品物のGOサインが出て発注手続きをしようとしたら、日本には在庫が50個ぐらいしかないことが判明・・ってことも。
普段一気に50個も出て行くことはないわけで、当然といえば当然なんだけど。
工場のある中国から輸入してると間に合わないから、泣く泣くモチーフを変更した・・なんてことも何回かありました。

強引な技だと、モチーフが「緑色の椅子(スツール)」で、数はそろうんだけど同じ色がそろわない。
なので別業者に全部塗装をしてもらった・・・なんてこともやりましたな(笑)




今だから書ける失敗談もあります。

数年前、デ情の試験でそれぞれの受験生の机の上に水の入った水槽を置きました。
水槽の中に手を入れて、それを描きなさい」という出題。
でも、見積もり取ったら水槽って結構な金額がするのね。
先生からアドバイスをもらって、アクリル業者にお願いして水槽を特注したのよ。
予備入れて約800個。
実際にありものの水槽を買うよりもそっちの方が安くついたんです。

で、いよいよ試験前日。
教室の机の上に水槽を置いて、水を入れたら・・・水漏れしちゃって(苦笑)

業者さんには「水を入れて使います」と伝えてたんだけど、水槽用に作ったものじゃないからね。
もうね。テンヤワンヤ。
あっちの教室で水漏れ、こっちで水漏れ。
セッティング時に1割ぐらい水漏れで交換したかな?
情報を伝達してる間にどんどん話がでかくなって、入試本部にあがった時には「全部の水槽が水漏れしてて、ジャージャー水が出てる」な話になってて、「明日の入試は成立するか?」と検討されてましたっけ。
事件は会議室で起きてるんじゃない」のいい例です(笑)

その晩は学校に泊まって夜中に水漏れしてないか教室を巡回して、それ以上水漏れが発生してないことを確認して、試験に突入。
無事に試験は終わりました。
あの試験の裏にはそんな出来事が起きてたんです。。


「アクリル業者に作ってもらったら?わざわざ高い水槽を買う必要なんかないよ」とアドバイスした先生が「特注するから水漏れなんかするんだよ!」と言っててね。
あの試験はいろんなものを学びました。人間の怖さも。
信じていいのは自分だけなんだなと。
誰かは言いません。
その先生の名前は墓場まで持ち込んでやります(笑)


受験生の皆さんへ。
事前情報としていろんな人に話を聞くのはいいことだけど、最後に信じられるのは自分だけです。
もし失敗しても自分で判断したことならあきらめがつくでしょ?

予備校講師の情報は「参考」にしてもいいけど、信じない方がいいです。
タマビと勘違いしてて、「ムサビはパネルいらない」「保護者の控室がある」と平気で言い切る人がいますから。
もちろん、ネットや友達の情報もアテにしすぎないこと。

もし、その情報を信じたいのなら、終わった後に「ま、仕方ないか」と思えそうな範囲でね。





さて。モチーフの話はまだまだ続きます。

投稿者:ichiro : 2009年02月12日 05:14

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