「あのぉ…、被害者のお母さんは、こう言ってるんですよ。『犯人のあそこをちょん切ってやりたいくらいだ』って…」
弁護人が言いにくそうにこう述べると、男性被告(24)は明らかに動揺した様子で、左右に体を揺らし始めた。傍聴席に座っていた被告の妻は下を向き、目をぎゅっと閉じた。
東京都荒川区の公園で、女児(10)の下半身を撮影しようと、カメラ付きの携帯電話をスカート内に差し入れたとして、迷惑防止条例違反の罪に問われた男性被告の初公判が18日、東京地裁で開かれた。
検察側の冒頭陳述などによると、介護士の被告は昨年12月10日、公衆トイレで用を足そうと立ち寄った公園で、入り口付近に立っていた女児のスカートをめくり、持っていた携帯電話で下半身を動画撮影したという。
被告は以前から、小学生や幼い女児に性的興味を持っており、ロリータものの雑誌やビデオで性的欲求を満たしていた。だが、物足りなさを感じた被告は昨年9月、公園で遊んでいる女児のスカート内に携帯電話を差し入れ、写真を撮るようになったという。被告は同月、妊娠9カ月を迎えた妻と入籍していた。
罪状認否で被告は、「間違いないです」と罪を認めた。
昨年10月に長男を出産したばかりの妻が、証言台に立った。夫の事件と育児が重なったためか、妻の表情は疲れの色が濃かった。
弁護人「被告人のどこにひかれて結婚したんですか?」
妻「優しくて、思いやりがあって…」
弁護人「最初に事件のことを聞いたときは、どういう気持ちでしたか?」
妻「とても信じられませんでした…」
弁護人「どうしてこういう事件を起こしたと思いますか?」
妻「子供に手がかかって、私が夫のことをかまってあげられなかった…」
泣き崩れる妻の横で、被告はずっとうつむいたままだった。妻に申し訳なくて、顔を上げられなかったのだろうか。
続いて始まった被告人質問は、犯行理由と被告の性的嗜好(しこう)に質問が集中した。
弁護人「奥さんが傍聴席で、どんな気持ちで裁判を見つめているか分かりますか?」
被告「…。分かっている、つもりです」
弁護人「そもそも公園には、何をしに行ったの?」
被告「トイレに行きたくなって…。それからたばこを吸って、携帯電話でメールチェックをしようと…」
弁護人「なぜこういう事件を起こしたの?」
被告「昨年10月に子供が生まれて…。性的ストレスや、仕事のストレスがたまっていました」
弁護人「もんもんとした状態だった?」
被告「はい」
弁護人「奥さんが泣きながら『かまってあげられなかった私が悪い』と言っていますが、今回のことで、奥さんが悪いところある?」
被告「ないです」
弁護人「あのぉ…、被害者のお母さんは、こうとまで言ってるんですよ。『犯人のあそこをちょん切ってやりたいくらいだ』って…」
弁護人の発言に、法廷内は静まりかえった。冒頭陳述で、検察官が読み上げなかった被害者の母親の供述調書の内容は、とても衝撃的だった。
被告「…。そのようなことを言うのは当然です…」
続く検察官の追及は、厳しかった。それまでよどみなく質問に答えていた被告が、答えに窮する場面もあった。
検察官「家から職場まで、どれくらいかかりますか?」
被告「歩いて10分くらいです」
検察官「歩いて10分しかかからないのに、家までトイレを我慢できなかったんですか?」
被告「はい…」
検察官「今回の事件以上のいたずらをしたことは?」
被告「ないです」
検察官「自分の性的嗜好、自覚してますか?」
被告「はい…」
検察官「いつからこういう性的興味を持つようになったの?」
被告「20歳くらいから…」
検察官「幼い女の子のスカートの中、パンツの中を見たいんですか?」
被告「はい…」
検察官「家でロリータものの雑誌やDVD、携帯サイトを見てましたね?」
被告「はい…」
検察官「でも、それでは物足りなくなって、自分で撮影したということですか?」
被告「…。はい、そうです…」
今回と類似した事件の裁判を傍聴していると、「妻の妊娠中に、性的欲求が満たされず、犯行に走ってしまった」と“主張”する被告が多い。
また、証人として出廷した妻が、「夫をかまってあげられなかった自分が悪かった」と涙を流す場面にもよく出くわす。
もし実際に、夫をかまってあげられず、性的欲求を満たしてあげられなかったとしても、妻は自分を責めるべきなのだろうか。被告は、生まれてくる子供のことで、頭がいっぱいになっている妻に、責任転嫁しているだけではないのか。閉廷後、割り切れない思いがしばらく続いた。
検察官は、懲役4カ月を求刑。判決は25日に言い渡される。(徐暎喜)
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