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伊賀の点滴死亡:谷本整形、院内感染 被害者、書類送検は「当然だ」 /三重

 ◇点滴「作り置き」黙認

 伊賀市の診療所「谷本整形」の院内感染問題で、県警は19日、谷本広道院長(58)を業務上過失致死傷容疑で津地検に書類送検した。事件発覚から約8カ月が経過しての書類送検に被害者らから「当然だ」などの声が上がった。一方、同市上野車坂町の診療所はこの日、午後から休診でひっそり。午後6時45分ごろ、谷本院長は車で戻ったが集まった報道陣の問いかけに対し、無言のままだった。

 県警によると、谷本院長はこれまで否定していた院内での点滴薬の「作り置き」が日常的に行われていたことを認め、それを黙認していたことが判明。管理責任を問う形で院長1人を書類送検した。

 容疑は作り置きのほか、点滴薬の消毒に汚染された綿を使うなどずさんな衛生管理の結果、08年6月9日に点滴を受けた同市の市川満智子さん(当時73歳)をセラチア菌による感染症で死亡させ、当時65~81歳の男女に敗血症などを発症させた疑い。

 点滴にかかわった看護師らには衛生管理の責任を問うことは難しく、立件を見送った。

 県警によると感染した35人のうち9日に点滴を受けた市川さんを含む患者9人から検出されたセラチア菌と、点滴残液から検出された菌のDNAが一致、院内感染が裏付けられた。医療関係者の鑑定も経て、診療行為と市川さんの死亡との因果関係を立証できると判断した。

 点滴を受けて入院した同市在住の女性はこの日、「遺族や被害者である私たちの気持ちを考えると、何らかの処罰を受けるのは当然。書類送検を機に、谷本院長だけでなく、地域医療も良くなってほしい」と話した。また、院長をよく知っているという同市上野赤坂町の男性(73)は「親切な医師で、患者に慕われていた」といい、「死者を出す大きな事件を起こしたのだから、(書類送検は)当然だろう。患者がさらに減るのではないか」と話した。

 事件は昨年6月10日に発覚。その後、県の診療自粛要請を受け、診療所は休診していたが、再発防止計画の提出などを経て同11月6日に診療を再開していた。【渕脇直樹、金森崇之、岡大介】

 ◇遺族の篤さん、不信感をあらわ

 県警が谷本広道院長を業務上過失致死傷容疑で書類送検したことについて、亡くなった市川満智子さん(当時73歳)の夫、篤さん(78)はこの日、伊賀市島ケ原の自宅で「書類送検されようが、妻が帰って来るわけではない。思い出すだけで悲しい」と涙ぐんだ。

 昨年11月の同診療所の再開後、谷本院長からは何の連絡もないと言い、篤さんは「それまで会いに来ていたのはジェスチャーだったのか。たった半年で診療を再開するのもおかしい」と不信感をあらわにした。【伝田賢史】

〔伊賀版〕

毎日新聞 2009年2月20日 地方版

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